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海に映えたる二人は一人

作者: abakamu

君が好きだって言う

ありきたりな言葉を

私は胸に閉じ込めて

おけるはずだったのに



立ち上がる雲続く青空

波に揺れるヨットは帆を畳む

海に行こって誘ってくれた

君の笑顔が脳裏を離れない


見慣れてた競泳水着じゃない

見慣れない君の水着姿

たったそれだけの事なのに

こんなにドキドキするなんて


ねえ

君は誰が好きなの?

好きな娘がいるのに

私と一緒にいて大丈夫なの?

全てに分け隔てない愛情を注ぐ君に惚れる娘は沢山いるというのに

海でいちゃつくカップルを見て

胸を締め付けるのは私が悪いの?

ねえ答えてよ

君の心に私の言葉は届かないのだから―


君が好きだって言う

ありきたりな言葉を

私は胸に閉じ込めて

おけるはずだったのに


近くに感じる君の肌は

私をこうもドキドキさせて

近くに感じる君の胸は

私をこうも吸い寄せる


私の頭と体が

私の心を押さえ込む

あなたは私に

何をして欲しいの?



立ち上がる私は空を見る

波に揺れるは入道雲

海に入ろうと差し出された手

君の顔を見ることはできない


見慣れてた君の顔じゃない

君じゃない君の顔

何も変わってないはずなのに

こんなにドキドキするなんて


ねえ

君を盗っていいの?

その娘より先に

私が君を盗っちゃうよ?

世間が男が狼と言うんだったら女は男を騙す狐よ

無防備な君を我慢できないのは

どこまでも私が悪いんじゃない

ねえ答えてよ

君の心に私の言葉は届かないのだから―


君が好きだって言う

ありきたりな言葉は

私の胸に閉じ込めて

おけなくなってしまったよ


近くに感じる君の手は

私をこうもドキドキさせて

近くに感じる君の目は

私をこうも吸い寄せる


私の心が私の頭と体を押さえ込もうとする

あなたは私に

何をして欲しいの?



私は君を見つめてて

君は誰かを見つめてて

誰かは私を見つめられずに

私も誰かを見つめられずに


君の黒い瞳の中に

私の姿がないのなら

私は君に抱きついて

ずっと離さなくなるだろう


君の黒い瞳の中に

私の姿があるのなら

私は君に抱きついて

離れられなくなるだろう



君が好きだって言う

ありきたりな言葉を

私は胸に閉じ込めて

おけるはずだったのに


近くに感じる君の全てに

私は頭を抑圧し

近くに感じる君の背中に

私は勢いよく抱きつく


私はもう止まれない

磁石にすいつく鉄のように

私の体は君の体に

抱きついてもう離れない





塩辛い水は海水に溶けて

跡形もなく消え去った


二年前の私は何を思ってこれを書いたのだろうか……

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