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贖罪の魔女と憐れみの眷属  作者: 畳駆
プロローグ
3/36

2

数十年前に異界と現世が交わったのを、魔女が調停した後、人間は魔術を扱うようになった。

 魔術それ自体は古来より人々の間に存在はしていたが、魔女が人間に与えたものは、それまでのものとは少々質が異なっていた。

 魔女が人間に与えた力、それは世界を発展させるためのものではなく、世界を平坦にするためのものだったのだ。

 具体的に言えば、時折、〝隔絶の被膜〟を越えて不完全な形でこちらの世界へとやってくる異界側の住人、俗に不成者ならずものと呼ばれる存在を排除するための力だったのだ。

 だが、その本質はやはり世界を変えるための力であった。ゆえに、その力は、しばしば持つ者を狂わせた。

 身の丈以上の力を有してしまったが故に、必要以上の辛苦を自ら背負い込んだり、または私利私欲を満たすための手段として悪用する者たちが後を絶たなかった。

 なので、魔女たちの長である、元・〈傲慢の魔女〉こと〈奉仕の魔女〉は、人間の扱う魔術に一定のルールを制定し、それを世界の理として組み込んだ。

 そのルールが記載され、世界の理となっている一冊の書物、それが〈グリモワール〉だ。

 人間は、〈グリモワール〉に名前が記載されなければ、魔術を発動させることが出来ない。

 故に、魔術を扱う〈魔術師〉となるためには、世界魔術師連盟による承認が不可欠となる。〈魔術師〉として認定されるためには、一定以上の訓練と才能が必要というわけだ。

 だが、魔術師連盟による認定の基準も完全なものではない。正式に〈魔術師〉として登録された者の中に異端者が紛れ込んでいたり、あるいは承認を受けた後に道を踏み外していく者がいる。

 それら異端の者たちを総称して〈魔導士〉という。

 〈魔導士〉として連盟本部から烙印を押された者は、〈グリモワール〉から除名され、魔術を扱う資格を失う。

 だが、ルールの裏をかき、〈グリモワール〉から除名もされず、世界の理すら利用して存在し続けている〈魔導士〉がいる。

 そいつらが、俺の敵だった。

 魔術の力で世界の秩序を乱す〈魔導士〉たちは、魔女から忌み嫌われている。

 なので、魔女に従う〈眷属〉である俺は、彼女たちに代わり、〈魔導士〉たちを排除するための仕事をしていた。

 そして、今日の仕事を終えた俺は、魔女に今日の仕事を報告しに、魔女の家へと向かっていた。

 そこは、街の北西に位置する丘陵部に設けられた住宅街にあった。

 昼下がりならば、開いた家の窓の隙間から、優雅なピアノの旋律でも聞こえてきそうな穏やかな住宅街だが、深夜の今は皆が寝静まり、そんな穏やかさは不気味な静けさへと変わっている。

 俺はその丘陵部の、傾斜のキツい階段や坂を通り、頂上まで登りきる。すると、そこに一軒、近代的な西洋建築の小さな家が建っていた。

 街の開発の時代と共に建てられ、発展の終わりと共に忘れ去られたかのようなその家こそが、俺の主人である〈憐憫の魔女〉その人の家だった。

 普段は人避けの結界が家の周囲に張り巡らされており、〈魔術師〉であってもごく僅かな者が意識して凝視することでしか気付けないであろうその家には、ランプの茫洋とした明かりが灯っていた。

 俺はその家の玄関の前に立ち、偽手である左手でノックする。

 すると、家の玄関の扉がひとりでに開く。その現象に慣れきっている俺は、今更驚きもせず、勝手に魔女の邸宅へと上がり込んだ。

「あら、今日は意外と遅かったのね」

 居間に上がると、魔女は、カーテンを閉め切った部屋の中、灯火の下でペンを握ったまま、羊皮紙の置かれた机とにらみ合っていた。

 自ら目を縫い付け、見えなくしているというのに、どうやって本など執筆しているのか。この光景を見ている人間の俺には、いつも珍妙な光景にしか見えない。

 まあ、魔女に人間の常識が通用するはずもないのだが。

「もうちょっとで第2章が書き終わるから、ちょっと待っててちょうだい」

 言われた通り、俺はリビングのソファに寝そべり、大人しく魔女が本を書き終える姿を観察する。

 露出度を高めにアレンジした魔女装束に身を包んだ、その豊満な肉体と、シャープな輪郭に縁どられた整った面立ちのその姿は、一見するとただの美しい女性だ。

 しかし彼女は魔女だ。なので、やはり普通の人間とは異なる部分を持っていた。そして、それこそが彼女を人間と峻別し、ただの美女として人の目に映ることを拒否させていた。    

彼女の普通の人間とは異なる部分。それは目だった。〈憐憫の魔女〉は、自らの瞼を己の手で縫い付け、瞳に光が入らないようにしていた。

魔女たちは、七日間で世界の調停を終えた後、自分たちの呼称を〝大罪の魔女〟から〝贖罪の魔女〟へと改めた。

 その際に、人間と共存するため、自らの力を抑制したとする証として、身体の一部を差し出したという。

 それが彼女――〈憐憫の魔女〉の場合、自らの瞳だった。

 彼女は瞼を縫い付け、その瞳を使えなくすることを〝贖罪〟とすることで、この世界での活動を認められていた。そして、それこそを魔女の証であるとして、人々に提示していた。

 ゆえに、彼女の栗色の長い前髪の下にある、縫い付けられた目がある限り、人は〈憐憫の魔女〉を人間とは認識できない。彼女のことを魔女として識別するのだった。

「はい、もう今日の分はお終い。続きはまた明日書く。書きます」

 だが、彼女から溢れ出てくる強大な魔力は、魔力を持たぬ人間にも感知できるだろうし、それだけで、決して気を許してはならない存在だということはわかるだろう。

 現に、目が見えなくとも何故か健常な人間と同じように生活しているのだから、それだけでも十分におかしいことぐらい、誰にでもわかる。

「それじゃあ、ささぎくん。今日の報告をお願い」

 促され、俺は睥睨坂の屋敷の前で戦った、くたびれた会社員風の〈魔導士〉のことについて魔女に報告する。

「そう……一人で屋敷に直接乗り込もうとするなんて、そうとう焦ってるみたいね」

「最近は毎回こんなんばっかりだ。ウンザリする」

「それで、あなたがこの活動を始めてから、今夜の出来事に至るまでに、どこか変わったところを感じなかったかしら?」

「例えば?」

「〝彼女〟から感知できる魔力の違い、とか」

 魔女はにんまりと口端を吊り上げて笑う。目が隠れているため、異様に不気味だった。

「さあな。あいつはもともと才能の塊みたいな奴だし、〈傲慢〉属性の魔術を扱えるだけでも、常人とは違うだろ」

「だけど、いつもより違うところがあったでしょ?」

 思わせぶりな口調で魔女は問う。こいつ、知ってて聞いてやがるな。

「そうだな。今日会った時は、どっか禍々しかったっつーか、威圧感に磨きがかかってたな」

 咲哉と遠くから軽く向かい合っただけで、俺は危うく平伏してしまうところだった。

 俺はそれを彼女のカリスマ性が増しただけだとばかり思っていたが、目の前の魔女のにやけ面を見る限り、どうも違うらしい。

「もしかして、〝発芽〟の時期が近い……とか?」

「正解。近々、彼女は魔女として覚醒するわ」

 俺は息を呑んだ。魔女の言うことが本当なら、これから咲哉を中心にこの街は戦場となるだろう。

「活発になるのは〈魔導士〉たちだけではないわ。〈不成者〉たちも、被膜の向こうからわんさかやってくるでしょうね」

 魔女は愉しげに笑うが、俺は全然笑えない。

「それは、どれくらいの期間なんだ?」

「そうね……彼女はまだ〝発芽〟していないし、それまでにはもうちょっとかかりそうだ

からあと三か月はこの街も無事でしょう。でも、そこから先、最も危険な〝発芽〟から、〝開花〟の時期はざっと半年といったところかしらね」

 俺は頭を抱える。なんてこった。俺の平穏で安穏としたこの生活は、後三か月で終わるってのか。グッバイ青春、さよなら人生。短かったけどいろいろ楽しかったぜ。

「そこで前向きに問題を解決しようとしないのが、あなたのダメなところよね。まあ、そこが気に入ったから〈眷属〉にしたのだけれど」

「……俺に一体何が出来るっていうんだ?」

「あるわよー色々と。例えば、彼女の盾になるとか」

「死ぬという宿命は変えられないのか……」

 どの道、この期に及んで俺が出来ることなんて限られている。

「この件については、今私たちも対策を考えているところだから、そう悲観することもないわよ。私たちとしても作り上げた世界をみすみす壊させるわけにはいかないもの」

 まるで玩具か何かのように、魔女は「世界」という言葉を口にする。

「それに、ㇽシフもタダで彼女に〈傲慢〉属性の魔術を教えたわけではないでしょうし、何か策は用意してあるのでしょう」

 〝ㇽシフ〟とは、魔女たちの長である〈奉仕の魔女〉のことだ。魔女にも一応名前があるが、同じ魔女以外がその名前を呼んではならないことになっている。

「だから、あなたにはこれから今まで以上に睥睨坂さんを狙う〈魔導士〉を排除してもらう仕事をしてもらうことになるわ」

「結局命をかけろってことかよ」

「期待してるわね」

 魔女は俺に微笑みかける。気の抜けた男なら向けられて素直に嬉しい表情なのだろうが、今の俺には悪魔が笑っているようにしか見えない。

「それじゃあ、偽手のメンテナンスするから、服を脱いでちょうだい」

 そう言いつつ、美人だが裏がありまくりのこの女は、強引に俺の着ている物を剥いで、偽手のメンテナンスを開始した。


 〈憐憫の偽手〉。それは、憐憫の魔女の〈眷属〉のみに使用が許された、〈魔装〉の一つだ。

 〈魔装〉とは魔女の魔法によって造られた義肢のことで、各魔女たちに己の〈眷属〉として認められた者のみに、それは貸し出される。

 〈魔装〉は、魔術ではなく、魔女の使用する魔法を、人間でも使用可能とするもので、借りた人間は、リスクもあるが〈魔装〉の力で魔法を発動することが出来る。

 〈憐憫の偽手〉もちゃんと〈魔装〉の一つであり、身に着けている俺も、しっかりと魔法を使うことが出来た。

 だが、魔法が使えると言ってもそれほど便利なものではない。〈魔装〉の装着方法は、義手や義足とほとんど同じだ。違うところと言えば、魔法が使えることと、神経と繋がっているため、自分の意志で動かせることくらいだ。

 つまり、使えるのは身体の一部が欠損した人間であり、魔女と〈眷属〉の契約を結んだ者だけなのだ。

 そしてそれが使える俺は、当然、身体の一部が欠損していた。

 今現在〈憐憫の偽手〉を代用品としている左腕を失ったのは、一年前。不成者と〈魔術師〉の戦いに巻き込まれた際、味方の魔術師のミスによって、敵の攻撃を直に受けてしまったことによる。

 見習いでありながらも魔術師であった俺は、そうなることはあらかじめ覚悟していた。なので、特段ショックだったというわけでも無く、むしろ〈魔術師〉としての誉れであるとさえ感じていた。

 しかし、その後突き付けられた現実によって、俺は一気に絶望へと突き落とされた。

 片腕を失ったことにとって、魔術師連盟から〈グリモワール〉への名前の記載を拒否されたのだ。

 もちろん、抗議はした。だが、あたりまえのように聞き入れてはもらえず、それどころか『片腕を失った者を戦場に送り込むことは、連盟への不信を招く』と言いくるめられてしまった。

 それにより幼い頃からの目標を失い、生ける屍として日々を過ごしていた俺は、あの忌々しき〈憐憫の魔女〉と出会う。

 奴は、出会ったばかりの俺に、いきなり〈眷属〉になるかどうかの話を持ちかけた。

 それはあの魔女なりの憐憫だった。彼女は、片腕を失い、生きる目標を失っていた俺のことを憐れんでいた。

 だが俺は、その憐れみが人間が人間に向ける物とは違う、高位の存在が下位の存在に対して向ける物であるということを知っていた。

 魔女は人間ではない。魔法が使えるので、人間より上位の存在なのだろう。故に、魔女が人間に対して向ける感情というのが、見下ろしの意思を含むものであることは、誰もがわかりきっている事実だった。なので魔女に対して嫌悪感を覚えなかった。

 だが、何故、俺にだけ〈眷属〉になれと持ちかけたのか。それだけが不可解だった。魔女が人間全体に憐れみを向けているというのなら、俺だけを〈眷属〉として選ぶのには、何か特別な理由があるはずだった。

 俺はしばらくどう返答すればいいのか思い悩んだ。俺が特別な才能のある、選ばれた人間なのではないかと思いもした。

 しかし、魔女の答えはむしろその逆だった。選ばれた理由は、俺が周囲の人間より秀でた素質があったからではなく、むしろ特別弱い魂の持ち主であるからだった。

 要は、俺は他の人間よりさらにどうしようもない魂の持ち主だったのだ。だから、魔女は特別な憐れみを俺に向けたのだった。

 だけど、そんな事実を知ってしまったというのに、俺は魔女の〈眷属〉になることを了承した。

 理由は簡単。魔女から言われた通り、俺がどうしようもない人間だったから。何かに縋らないと生きていけない弱い人間だったからだ。

 そうして、弱い存在の俺は、魔女と契約を結び、彼女に縋ることで弱者のみが扱える魔法の力を得た。

 そしてその魔法というのは、つまるところ願いを叶える力のことだ。〈憐憫の偽手〉は、俺が祈れば願いをなんでも叶えてくれる。

 もちろん、タダでとはいかない。願いを叶えるためには、相応の代償を偽手の所有者である俺が支払わなければならないのだ。

 それは俺の持つ魔力、及び身体と、俺という〝概念〟から支払われる。簡単に言ってしまえば、大きすぎる願いは、それだけ俺の存在を使うということ。つまり、使えば使うだけ、俺自身の過去や未来、俺が選び取るはずだった可能性なんてものが失われていく、というわけだ。

 好き放題魔法を使いまくったり、ありえないほど大きな願い(世界平和とか)を魔法によって叶えようとすれば、俺は消えて無くなるし、俺が完全に消滅したところで、俺一人分の願いしか叶わないので、結局は意味がない。

 そして俺が代償として支払った俺の〝概念〟が、叶った願いに置き換わると、支払った分だけ俺には〝空白〟が生まれる。

 ソイツが厄介な代物で、その空白は、俺の心に嫉妬を生み出す。無くなったものを俺は直接感じ取ることを出来ないが、無意識下では感じ取っているらしい。その無くなったものこそが〝空白〟だ。

 そして自分のものが無くなっただけ、無くなった〝何か〟を持っている誰かを俺は妬まずにはいられなくなる。

 それが魔法を使うことの代償だった。

 魔法を使えば使うだけ、俺は嫉妬の炎に焼かれて消えていくのだ。

 なので、魔法は使用者にとってそれだけ危険な代物である、と言えた。

そんな危険な〈魔装〉なんて代物に頼らなければ、俺は真っ当に生きることが出来ない。故に俺は弱い存在なのでした。


「終わったわよ」

 偽手の調整を終えた魔女が、俺の背中を強く叩いた。

 俺は調整の終った偽手を軽く動かしてみて、どこにも異常がないことを確認する。

「やはりあなたにこそ、この偽手は相応しいわね。魂の規格がピッタリだもの」

 要は、それだけ俺がどうしようもないと言いたいのだろう。

「俺の他に〈眷属〉はいないのか?」

「いたわよ。過去にね」

「そいつらはどうしたんだ?」

「皆死んだわよ。私が〈眷属〉として選ぶ基準は、まず弱者であることだから、すぐに壊れちゃうのよね」

 だからすぐに代えを用意しなくちゃならないから大変なの、と言って魔女はクスクスと笑う。あの、それ俺にとっては笑えない話なんですが……。

「それならどうして強者を〈眷属〉にしない? そっちの方が結果的に長持ちするんだろ?」

「難しい質問ね。つまりあなたは、弱者に〈魔装〉を着けて戦わせるのは非合理だって言いたいのよね? 戦わせるのならば、強者の方が適任なのに、なぜわざわざ弱者を戦わせるのかって、そう言いたいのよね」

 魔女は俺の胸の裡など完全に見透かしていた。俺は、自分の浅はかな考えを指摘されているようで気分が悪くなる。

「そうだよ。弱者を無理やり補強して戦わせるより、そっちのほうがいくらかマシだろ?」

「あなたの言っていることは実に正しいわ。戦わせるなら、弱者よりも強者の方が向いている。何も、わざわざ壊れやすい玩具で遊ぶことはないものね」

 また玩具呼ばわり。やはり魔女は冗談ではなく人間のことを玩具程度にしか思っていないのだろう。

「でも、時にはガラスの玩具で遊んでみるのも一興だとは思わない? プラスチックや超合金でできた人形よりも、透き通ったガラスの人形の方が、壊れやすくとも美しい。だからこそ、遊んでみたくなる。そう言うものじゃないかしら?」

「つまり、弱者を戦わせる方がロマンがあるって言いたいのか?」

「そういうことね。でも、ただ弱いだけじゃダメ。そこには美しさと憧れがないといけないのよ」

「弱いだけなら、俺よりももっとひどい人間はいくらでもいる。だけど、その中でも俺を選んだのは、それがあるからってことか?」

「ええ、そうよ。ただ弱いだけなら、老人や子供、あなたよりも重度の欠損や障害を持った人間なんていくらでもいるし、そっちだって構わない。だけど、あなたには、魂に透き通るような美しさを持っていた。だから〈眷属〉にしたのよ」

 美しい。魔女から発せられたその言葉に、俺は少しだけ嬉しくなりそうになった。だが、騙されてはいけない。こいつら魔女の倫理観や美意識は、人間とは違うのだ。鵜呑みにするものではない。

「あなたの魂は、麗らかな処女のように、とても清らかなものなのよ。だからこそ、とても傷つきやすく、汚れやすい。それで遊ぶのは、私にとっての憧れなのよ」

 うふふ、と〈憐憫の魔女〉は繊細な手つきで俺の頬を撫でる。

「だから、あなたにはまだまだ働いてもらうつもりよ。そう、壊れるまでね」

 魔女は、無邪気な艶笑を浮かべて、指先で俺の輪郭を撫でた。

 俺は玩具扱いされているにもかかわらず、この魔女に縋らなければならない自分に嫌気がさしてくる。

「そう言うことだから、明日もよろしく頼むわね、冴木捧クン」

 艶めかしい人外は、そう言って俺の額を小突くと、自分の机へと戻った。

 俺はソファから立ち上がり、魔女の棲家から立ち退いた。


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