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その1
「ねぇ、何がしたいの?」
私の上にのし掛かっている彼に問う。
「わからない」
彼は表情を変えずに答えた 。それでも、その場を動こうとはしない。
「なら、こういうことをしても平気?」
私は床につけていた腕を彼へと伸ばし、その肩を抱く。
「………」
今度は、彼はなにも答えず、しかし、その場を動こうとしない。
私と彼の時間が止まる。
「わかったわ、なら…」
最後まで伝えず、顔を彼へと近づけ、唇を重ねる。
彼が目を閉じた。それを見て、私も目を閉じ、彼の体温を感じとる。
「大丈夫よ」
唇を離し、彼を見つめる。
「愛してるわ」
彼は何も言わずに、ただ、私を抱きしめる。
もう二度と離さないと私に伝えるように。