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巨人と月  作者: 朝茶漬け
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ある日鬼天が空を見上げるとお空がそっと教えてくれたお話。

二話完結です。

昔むかし、あるところに巨人が住んでいました。

巨人は大きく、強かったので何でも持っていました。

たくさんの家来とたくさんのお宝とたくさんの馬。

そのうち、世界で一番速く巨人よりも速いモーレラレッヒは巨人の愛馬でした。

彼は大きな大きなお城に住んで、毎日お腹いっぱいごちそうを食べていました。

そして巨人の自慢は自由に動かせる長い長い鳶色の髪でした。敵はみんなその髪に捕まってしまうのです。それを見た巨人はいつも大きく口を開けて

「はっはっはっ!」

と笑うのでした。

巨人は何でも持っていたのです。


しかしある日、巨人がごちそうを食べて満足していると小さな声が聞こえてきたのです。

「太陽さん太陽さん、私はあと数日で満月なんですよ。」

「そうかい。君の姿を見るのが楽しみだね。」

巨人が空を見上げると、沈みかけた太陽が昇り始めた月に微笑みかけていました。その静かな会話に巨人はすっかり嫉妬してしまいました。

「俺の手に入らない物はない!」

巨人は愛馬のモーレラレッヒにひらりと飛び乗ると角笛を吹きながら駆け回りました。

家来はみんな慌てて集まります。角笛は集合の合図なのです。

「どうなさいました。」

家臣の一人、ヒューデラッタが聞きます。

巨人はモーレラレッヒに跨がりながら宣言します。

「月を手に入れるのだ!」

みんなはびっくりぎょうてん。口々に巨人を止めますが聞く耳を持ちません。とうとう巨人と家来は月を捕まえに出かけました。

巨人たちは月の出てくる高い高い山、ヲレヲージュ山を目指し長い道を進みます。しかしヲレヲージュ山は遠く、

巨人たちは外で眠らなくてはなりませんでした。巨人はその日の夕食を食べようとしてびっくり。

いつもよりもずいぶん少なかったのです。

「おい、夕食が少ないぞ。」

1人の家来は頭をぺこぺこさせながら謝ります。

「申し訳ありません。旅の途中ですのでいつもと同じというわけには…」

巨人は怒ってその家来を叩きました。巨人の力は強かったので家来はばったり倒れて動かなくなってしまいました。

巨人は他の家来の分を横取りして食べてしまいました。

家来たちは夕食が無くなってしまいがっかりしました。

みんなの分を食べてお腹いっぱいになった巨人は大きな天幕に分厚い布を何枚もひいて寝転がりました。

家来たちはその豪華な天幕から響く地響きのようないびきのせいで、耳をふさがなくてはなりませんでした。


旅は何日も続きました。旅の食料はすぐに少なくなってしまい、巨人と家来は食料を探しに狩りに行かなくてはならなくなりました。

しかしほとんどは巨人のお腹に入ってしまうので、家来たちはいつもお腹が空いていました。夜は巨人のいびきがうるさいので家来たちは眠れなくなる者が増えていきました。

それでもいつも巨人のお腹がいっぱいになるわけではなく、食料が十分でないときは巨人は不機嫌になって家来たちを殴ったり叩いたりしました。家来たちは次に痛い目に遭うのは自分ではないかと怯え始めました。

それを見ていたモーレラレッヒは涙を流して悲しみました。しかしモーレラレッヒには何も出来ませんでした。


それでも巨人たちは進み続けました。

険しい山を越え、広い野原を越え、速い流れの河を渡り…さすがの巨人も少し疲れてきた頃、ヲレヲージュ山に巨人たちは到着したのでした。

草木一本生えないここはたまに通る旅人を狼が狙うだけで荒涼としています。


巨人はその高い高い山を見上げると雄叫びを上げました。

ここまでたどり着いたのです。巨人は家来を急かしてヲレヲージュ山を登り始めました。家来は朦朧としながらも巨人の命令に従います。

山は険しく巨人も簡単には登れません。家来の半分は力尽きて山の途中で動けなくなってしまいました。巨人たちは山の中腹で一泊しました。

巨人はもうすぐ月が手にはいる、そう思うとわくわくして眠れません。

そして次の日、巨人たちは間もなく月が出るという時に頂上にたどり着きました。

「もうすぐ…もうすぐ手に入る。」

月が逃げたときのためにモーレラレッヒに乗ったまま巨人はそっと空を見上げました。

そして…とうとう月が出ました。今日の月は満月です。巨人はさっと右手を伸ばし

「あっ…!」

月を握りました。月はびっくりして凍りつきます。

ビシビシビシッ

その冷たさに巨人の手は固まり、巨人の全身も動かなくなります。自慢の髪も凍りつき霜が降りたように真っ白になってしまいます。巨人はそれを耐えます。しかしモーレラレッヒにまでその凍結が届いた途端、

モーレラレッヒはびっくりしていななきながら、立ち上がります。

巨人はモーレラレッヒから落ちてしまいます。


その途端、


「ぎゃあああっ!」「逃げろぉ!!」「わああぁぁっ!」

家来達が散り散りに逃げ出してしまいました。巨人は腰を打ち、ぐぅっと息を呑みます。

「ま…待て…」

止めようと髪を動かそうとします。…しかし。凍りついた髪は上手く動かなかったのでした。


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