泥棒
二人はさっさとアゲーオを出ることにしました。
ブラブラと商店街を歩いていました。
しかし、後ろから秋兎の買い物品を奪われたのです。
「泥棒ーー!!返せーー!!」
「あ、くそっ!!」
二人とも泥棒を捕まえに追いかけます。
しかし、子どもと大人の差は始めから決まっています。
二人は泥棒を捕まえることはできず、どんどん距離は離れていくばかりでした。
泥棒がある路地裏に入りました。
二人も少し遅れて入った瞬間。
ギャンッ!!
大きな動物の悲鳴が響き渡ります。
「「!!??」」
二人は驚き声も出せませんでした。
目の前には泥棒ではなく、狼が血まみれになって倒れていたのです。
壁や地面は飛び散った血や今も狼から流れ出る血で赤黒く染められ、血なまぐさい臭いが漂っています。
暗さと周りの所為か二人は異世界に入ってしまったような感覚を感じました。
そしてその奥には、青年が佇んでいました。
青年の左手には血液が滴る剣が握られ、右手には袋を持っていました。
二人は硬直していました。
「おい、コレお前たちのか?」
青年は袋を持ち上げます。
秋兎は頷くことしかできませんでした。
その瞬間狼は立ち上がると、血を滴りながら一瞬に目の前から消えました。
青年は近寄ってきました。
「はい」
「ありがとうございます」
秋兎はすかさず受け取ります。
青年は剣を一払いで血を全て飛ばすと、すぐに鞘に収めました。
二人は硬直が抜け、地面に座り込んでしまいました。
今頃襲ってきた吐き気や恐怖心に何とか耐えます。
「あの、泥棒はどこに行ったんですか?」
恵は勇気を振り絞って恐る恐る青年に問いかけます。
「先ほどの狼が居ただろう。そいつが泥棒だ」