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8 魔法学校へ

 本日よりいよいよ光の剣の魔法開発に取り掛かるということで、待ち合わせをしていたレクスとアナ。


「レクスさーん、こっちです!」


 先に来て待っていたアナのもとにレクスがやって来る。


「時間ぴったりですね」

「ああ」

「わたしは楽しみすぎて早く目が覚めたので、三時間前に来ちゃいました」

「それは時間の無駄だろう」

「えへへ…。ところでレクスさん、今回の依頼の件ですけど、ちゃんとギルドで正式な依頼として契約しなくていいんですか?」

「別にいい。今回は報酬の分手を貸すだけだからな」


 レクスはアナに作ってもらった閃光の魔法の術式の対価として、今回光の剣の魔法開発に手を貸すこととなっている。


「いちいちギルドを通してたら報酬が何であれ手数料は取られるし、今回は不要だ」

「ちなみにレクスさん、術式の対価の分って、具体的にはどれくらいですか? 時間とか…」

「……俺の気分次第」


 レクスはその辺あまり細かくは考えていなかったようである。


「つまり、光の剣の魅力をレクスさんに理解してもらえれば、いつまででも協力してくれるということですね」


 そしてレクスの言葉はアナに都合よく解釈された。


「勝手に決めるな。完成する見込みがないものに、いつまでも付き合う気はない」

「わ…わかりました。出来るだけ早く完成させられるよう、がんばります」

「そうしてくれ。……ところで」

「何ですか?レクスさん」

「それは何だ?」

「それ?」


 どうやらレクスはアナの服装を気にしている様子である。

 そのことに気づいたアナは、今自分が来ている服が何なのかを答えた。


「これは魔法学校の制服です」

「そんなことは知っている。俺が聞きたいのはそういうことではなくて…」

「わたしは魔法学校魔法研究科の一年生です」

「だからそうじゃなくて…」


 レクスはこの制服が魔法学校のものであることは元々知っているし、アナくらいの年齢で魔法研究者を目指しているのなら、魔法学校の生徒である可能性が高いことも容易に想像がつく。

 故にレクスが本当に聞きたかったのは…


「なぜ今そんなものを着ているのかを聞きたいんだが」

「それは、これから学校に行くからですよ」

「は? 今日は光の剣の開発を…」

「はい、だから学校でやるんです。校外でばかり研究していると、わたし、出席日数足りなくなっちゃいますし」


 そのアナの言葉を聞いて、レクスはものすごく嫌そうな顔をした。


「大丈夫ですよ、レクスさん。魔法研究の協力者は申請すれば校内に入れますし、レクスさんの申請はちゃんとしてありますから問題ありません」

「いや、そういう問題ではなくて…」

「どういう問題ですか?」

「……………」


 結局レクスはアナの質問に対して嫌そうな態度を見せるだけで、何も答えることはなかった。




 そしてレクスが何も答えないので、アナはレクスが嫌がっているのを薄々感じつつも、ひとまず魔法学校へとやって来た。


「レクスさん、大丈夫…ですか?」

「あ…ああ……」


 一応肯定の返事はしたものの、レクスの表情が随分と欝な感じに見えたため、このまま校内に入っていいものかと戸惑うアナであったが、入らないと本日は欠席扱いとなってしまうので、アナはレクスの言葉を信じて校内へと入ることにした。


「じゃあ行きましょう、レクスさん」

「……………」


 暗い表情のままで何の返事もしないものの、一応校内へと足は踏み入れたレクス。

 そんなレクスのことを、本当にこのままで大丈夫なのかと心配するアナであったが、二人で校内を歩いているうちに、次第にレクスの様子は普段通りに戻っていった。


 これでアナもほっと一安心…と思ったところで、突然レクスがアナのほうへと体を寄せてきた。

 自分の体が、アナの体にぴったりと密着するほどに。


「っ! レ…レクスさん?」


 これは何事かと思ってレクスの顔を見るアナ。

 するとレクスの表情が、この魔法学校にやって来たばかりのときのような暗い表情に戻って、そして思いっきりうつむいていた。


 だが顔がそんな状態であるにもかかわらず、体はどんどんアナのほうにくっついてくるため、アナはレクスが一体何を考えているのかが分からず、ちょっとしたパニックに陥る。


「あ…あのっ、レクスさん、今日はいったいどうしたので…」


 しかしこの直後、アナはレクスの様子がおかしかったわけを知ることとなる。


「……ん? お前、もしかしてレクスか? そうだよなあ、レクスだよなぁ、レクス」


 レクスたちの前方から歩いてきた二人組の男のうちの一人が、すれ違いざまに突然レクスの顔を覗き込んで声をかけてきた。

 そして…


「ちっ……」


 ものすごく嫌そうに舌打ちをするレクス。

 これでアナは察した。

 レクスの様子がなんだか暗かったのは、この人に会いたくなかったからであって、そして自分のほうに体を寄せてきていたのは、少しでもこの人から離れて気づかれないようにするためだったと。


「久しぶりだなあ、レクス。覚えているか、このオレ様のことを」

「知らん」

「はあっ? オレ様だぞ、オレ様! 魔導師科光属性クラスの首席であるこのカーマ様を覚えていないとは言わせんぞ!」

「覚えてない」


 このカーマという男はレクスのことを知っている様子だが、レクスのほうはカーマのことなど本当に知らない様子。

 そこで、ふとあることを疑問に思ったアナはレクスに尋ねた。


「本当に知らない人なんですか?レクスさん」

「こんなやつ全く知らん」

「っ!」


 全く知らんという言葉にひどくショックを受けるカーマ。

 そしてアナは続けて尋ねる。


「じゃあ、どうしてこっちに…」

「魔導師科五年の制服が見えたから」


 この言葉でアナは察した。

 レクスは魔導師科の五年生と何かあって接触を避けたかったものの、この人個人の顔や名前に関しては本当に何も覚えていなかったのだということを。

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