27 二人は起きられない
昨日、寮に帰れなかったアナはレクスの家に泊まった。
そして朝アナが目を覚ますと、アナの目の前にはレクスが寝ていて、アナの頭はレクスの腕の上…つまり腕枕状態になっていた。
なぜこんな状態になっていたのか。
それは昨晩の出来事。
「ふわぁ…。明日、白いゴーレム…の…作るの、楽しみ…です…。んみゅ……」
「だったらさっさとそこで寝とけ」
「ふぁいぃ……」
ここはレクスが一人で住んでいる家なためベッドは一つしかなく、誰か来客が来ることも全く想定していないため、予備の布団も置いていない。
だが他の人間ならまだしも、アナを硬い床の上で寝かせるのはどうかと思ったレクスは、一つしかないベッドにアナを寝かせて、自分はどこか他で寝ようと考えた。
しかし…
「レクスさぁん、どこ…行くんですかぁ? ちゃーんと、ベッドで…寝ないと、だめ…でふよぉ……」
アナは骨董屋に白いゴーレムの像を作るための道具を見に行くのが楽しみすぎることと、もうかなり眠たくて思考能力が低下していることにより、自分の隣でレクスを寝かせることに何の抵抗もなくなっていた。
そしてレクスも、普段ならこういう状況では絶対にハニートラップを警戒するものだが、本日はオーガとの戦いで肉体的にも精神的にも疲弊していたこともあって、さっさと休みたいという欲求から、アナの言葉にそのまま応じてしまった。
「そう…だな……」
「そう…ですよぉ…。明日の…ためにも、ゆっくり…休ま…ないとぉ……」
「ああ……」
「おやすみ…なさい……。すぅ……」
「……………」
こうして二人は同じベッドの上で眠りについた。
まあ同じベッドの上で眠っても、端と端で離れて寝れば何も問題ない…と、このとき二人は思っていたのだろう。
だが眠たくて思考能力の落ちている二人は何もわかっていない。
このベッドは普段レクスが一人で使っているものであって、二人で離れて寝られるほど広くもなく、そして眠りについた後の体の動きなんてどうなるか分かったもんじゃないということを。
そして二人が就寝中に色々と寝返りを打った結果、朝目が覚めたとき、アナはレクスの腕に腕枕状態となっていたというわけである。
「っ!」
アナは昨晩の時点では全く予想もしていなかったこの状況に、結構なパニック状態である。
そしていつまでもこんな状態でいてはいけないから、一刻も早く起き上がらなければ…と思いつつも、あまりにもドキドキしすぎた結果、体がこわばってしまい、全く起き上がることが出来ない。
こうして全然体を動かせないアナがただひたすらドキドキし続けている状況の中、レクスは何も知らずすやすやと眠り続けている……わけではなかった。
実はレクスは腕にかかるアナの頭の重みでとっくに目が覚めていた。
だがレクスは決して目を開かず、ずっと眠ったふりを続けている。
なぜレクスは起きないのか?
それは、こんな状況になってしまっていることに対し、自分は何も知らぬ存ぜぬで通しきるためである。
今レクスが最も恐れていることは、今のこの状況をシオンに知られてしまい、弱みを握られること。
いやシオンだけではない、ベルもシオンとグルになっている可能性が高いため、ベルに知られるのも危険。
この二人のどちらかに今のこの状況のことを知られてしまったら、これをネタに何を言われるか分かったもんじゃない…とレクスは恐れていた。
だがもし仮にアナの口からこのことがシオンに伝わってしまい、その件でシオンが何か言ってきたとしても、自分がその間ずっと眠っていて何も知らなかったのであれば、何のことだ?…とでも言って白を切ることが出来る。
だからこそレクスは起きるわけにはいかない。
アナが先に目覚めて自分の腕の上からどいてくれるまでは、自分はこのまま眠り続けて、全て知らぬ存ぜぬで通しきるしかない。
これこそが最もリスクの低い選択…とレクスは考えていた。
……だがしかし、レクスがいくら待てどもアナが起き上がる気配はない。
なぜならアナは、起きようにもドキドキしすぎて体が動かないからである。
そして目を閉じているレクスには、アナはもう起きていて体が動かせないだけ…ということも分からない。
体を動かせないアナと、眠ったふりを続けなければならないレクス。
先に動くのは一体どちらなのか?
そしてそろそろレクスの腕がしびれてきていた。




