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26 異界の品

 レクスの家は、町の住宅街から少し離れた所にある一軒家。

 周りに他の家などもあまりなく、立地的に利便性が今一つということで安く売りだされていたが、他人と関わりたくないレクスにとってはむしろ好都合だったため、購入資金がたまり次第即購入したもの。


 そして本日この家に、寮の門限を過ぎて帰れなくなったアナが泊まりにやって来た。


「お…おじゃま…します……」


 やはり相手がレクスとはいえ、一人で男の家に泊まるというのが初めてなアナは、相当緊張している様子である。

 そしてレクスのほうも、この状況はシオンが計画した何らかの罠ではないかと警戒しまくっているため、ろくに口も開かない。


「……………」

「……………」


 こうして二人が家に入ってから、二人とも何も話さず何も行動を起こさないという少々気まずい状態がしばらく続いたが、そんな折にアナはこの家の中で妙なものを見つけた。


「あ…あの…」

「何だ?」

「あれ何ですか?レクスさん」


 アナが指さしてそう尋ねたあれとは、少々厚みのある二つの円盤をくっつけてそれに糸を巻き付けたものである。


「これか…。これは異界の品だ」


 アナが所有している異界の書と同じように、異世界からこの世界にやって来たアイテムは本以外にも色々と存在する。

 そしてこのアイテムも、そんな異界の品のうちの一つ。


「使い方は多分……こんな感じだ」


 レクスは糸の先の輪っか状の部分を指にはめると、そのくっつけられた二つの円盤を手に持って下へと勢いよく振り下ろした。

 するとその円盤は糸から垂らされた状態で勢いよく回転し続けている。

 つまりヨーヨーである。


「わぁ、何だか面白いものですね。……で、これ何に使うものなんですか?」

「わからん。これで回ることまでは分かったが、これが何の役に立つのかまでは現状不明だ。最初は敵にぶつけるものかと思ったんだが、武器にするには強度も糸の長さも物足りないからな」

「これ、ダンジョンで見つけてきたんですか?」


 異界の品は基本的にダンジョン内で見つかる。

 だがなぜこれらのアイテムがダンジョン内で見つかることがあるのかまでは、今のところまだ何もわかっていない。


「俺はダンジョンには潜らん。ソロで行くのはリスクがでかいからな」

「じゃあ、このアイテムはどこで手に入れたんですか?」

「骨董屋で買える。この手のアイテムはたいていそういう所に持ち込まれるからな。そして用途のよく分からんアイテムは銀貨一枚程度で買えるから、買ったほうが手っ取り早い」


 レクスの趣味は用途のよく分からない異界の品を集めて、それが何のための品なのかを検証することである。


「この辺に置いてあるのは大体全部異界の品だ」

「じゃ…じゃあ、このマス目の書かれた板と、よくわからない文字が書かれた五角形のものは何ですか?」

「多分、戦術を練るための道具だと思う」


 将棋盤である。


「この、ものすごく細かい文字らしきものが書かれたきれいな絵のカードは何ですか?」

「占いの道具ではないかと考えている」


 トレーディングカードゲームである。


「じゃあこっちの、ぐにゃぐにゃした金属が二つ絡まっているものは?」

「それはさすがに俺にも全くわからん」


 知恵の輪である。


「異界の品って、異界の書以外にも色々あるんですね」


 そしてアナは他にどんな異界の品があるのかと色々物色してみて、その中からあるものを見つけてしまった。


「えっ? こ…これは、えっ?えっ?ええっ?」

「どうした?アナ。そんなにも驚いて」

「レ…レレ…レクスさんっ、これっ、白いゴーレムですっ!」


 アナは白いゴーレムが描かれた箱を見つけてしまった。

 そしてこんなものを見つけてしまったことにより、アナは相当テンションが上がっている様子。


「これか。ずいぶん前に骨董屋で見つけたんだが、あのゴーレムだったのか」

「レクスさん、レクスさん、レクスさん! この箱、開けてもいいですかっ?」

「まあ、構わないが…」


 そしてアナが白いゴーレムの描かれた箱を開けてみると、そこに入っていたのは大量の小さな部品であった。


「これ…は?」

「一緒に紙が一枚入っているだろ」

「はい」

「おそらくその図の通りに組み立てることで、そのゴーレムの像が完成するんだと思う」


 つまりプラモデルである。


「白い…ゴーレムの…像……」


 アナは完成した白いゴーレムの像を想像してうっとりしている。

 そして…


「レクスさん、これ作らないんですかっ?」

「作ろうにも、そのための道具がない」

「道具…ですか?」

「ああ。これ、部品が枠につながっているだろ」

「そうですね」

「まずは部品をここから切り取らなきゃならないわけだが、ずいぶんと細かく繊細な部品のようだから、ナイフとかで切ったら壊しそうだ」

「つまりこれを切り取るための専用の道具が、異世界には存在するということですね」

「ああ」


 その部品を切り取るための道具がこの場になくて、この白いゴーレムの像を組み立てられないことにアナはがっかりしている模様。


「これを切り取るための道具、いったいどんなものでどこにあるんでしょうか」

「それらしきものなら骨董屋で見かけたが」

「本当ですか?レクスさん!」

「ああ」

「じゃあ行きましょう、その骨董屋さんに!」

「でもなぁ…」

「行きましょう!」

「……わかった」


 正直レクスはあまり乗り気ではない様子だが、アナはとにかく行きたくてしょうがないといった感じなので、明日二人でその骨董屋に行くこととなった。

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