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25 本日は帰れません

 オーガとの戦いを終えて町へと戻ったレクスは、アナと共に冒険者ギルドへと向かった。

 オーク討伐クエストの報告のためである。


 だがレクスたちが冒険者ギルドへとやって来ると、受付嬢をはじめとするギルド職員たちが皆やたらと忙しそうにしていた。


「ずいぶんとあわただしい感じですけど、何かあったんでしょうか?」

「さあな」


 しかしこんなギルドの状況など別にどうでもいいといった感じのレクスは、さっさとクエスト達成の報告を済ませるべく、ベルのいる受付カウンターへと向かった。


「あっ、レクスさん」

「オークの討伐終わったぞ」

「はい、討伐報酬の金貨二枚ですね。……どうぞ」


 レクスがオーク討伐の証明である牙一組を差し出すと、忙しそうにしていたベルは手短なやり取りで済ませて報酬の金貨二枚を差し出してきた。

 そこで、このギルドの状況がちょっと気になったアナは、どうしてこんなことになっているのかをベルに尋ねてみることにした。


「あの、ベルさん、皆さん忙しそうですけど、何かあったんですか?」

「えっとね、今日は町の周辺で魔物を見たって報告が次から次へと来たせいで、色々とやらなきゃいけないことがたくさんあって…。サハギンとかローパーみたいな、本来この辺りにはいない魔物の報告まであるし……」


 その本来この辺りにはいない魔物という言葉を聞いて、アナとレクスはあることが頭に思い浮かんだ。


「もしかして、オーガ以外も逃げちゃってたんですかね?」

「まあ、他にも運んでたのなら、その可能性は高いだろうな。あんなのが暴れたら、他もまとめて解き放たれるだろうし」


 するとそんな二人の会話に、ベルは思いっきり食いついてきた。


「オーガって何のことですか? 二人とも、その話のことについて詳しく教えてくれませんか」


 そんなわけで、レクスとアナは闘技場の支配人が運ぼうとしていたオーガが逃げ出したこと。

 そしてそのオーガをレクスが倒して捕らえたことベルに話した。


「なるほど、そういうことですか。確かにそれなら闘技場はかなり怪しいですね。あとでギルドのほうから問い詰めてみることにしましょう。もし本当にそうなら、魔物の討伐にかかった費用とかも出してもらわないと困りますし」


 そのベルの言葉に、近くにいたギルド職員全員がうなずいていた。

 どうやら皆、この忙しすぎる状況にかなりいら立っているらしい。


「ところでレクスさん、今日はまだたくさん討伐クエストが残っているんですけど、もしよろしければこの後もう一回…」

「断る。オーガと戦ってきた直後にもう一回とか、さすがにしんどすぎる」

「そんなぁっ…」

「大体もう日も落ちてきてるだろ。夜間の戦闘は魔物より人間のほうが不利になりやすい…」


 そう、レクスはオーク討伐クエストの後にかなり時間をかけてオーガと戦っていたため、もうすでに外は結構暗くなってきていた。

 すると、先ほどの日も落ちてきている…というレクスの言葉で、アナはあることを思い出す。


「あっ!」

「どうかしたの?アナちゃん」

「寮の門限……」


 今日のアナは光の剣が完成したことやレクスの戦いぶりでテンションが上がってて、すっかり寮の門限のことは忘れていたが、もうとっくにその時刻は過ぎていた。


「ど…どうしましょう。寮長さんに怒られちゃいます」


 だがそんなアナにベルから朗報が。


「アナちゃん、そのことなんだけど、ちょっと前にシオンちゃんが来て伝言を頼まれてたの」

「シオンさんが?」

「ええ。門限に間に合わないようでしたら、わたくしが寮長さんにうまく言っておきますから…って」


 そのシオンの計らいにとても感謝したアナは、安心して寮へと帰ろうとした…が…


「では、わたしは寮に帰りますね」

「待って、アナちゃん。シオンちゃんはこうも言っていたわ。中途半端な時間に帰ってこられると、寮長さんへの言い訳に矛盾が生じてしまいますので、門限までに戻れないようでしたら、今日は外で泊まってきてください…って」

「そう…ですか。じゃあ今日は帰らないほうがいいかもですね。シオンさんにも迷惑かけちゃうかもしれないですし」


 そんなわけでアナは、この辺りで今日泊まれる場所がないかをベルに尋ねてみることにした。


「ベルさん、近くでちょうどいい宿屋さんってあったりしますか?」

「ないことはないけど、この辺の宿って荒っぽいお客さんも多いみたいだし、女の子一人で泊まるのは避けたほうがいいかも」


 周りに冒険者が大勢いるので伏せたが、この辺の宿にいる荒っぽい客とは主に冒険者のことである。


「というわけでレクスさん、アナちゃんのことよろしくね」

「は?」

「アナちゃん一人で宿に泊まらせるよりは、レクスさんの家のほうが安全でしょ」

「普通は男の家に泊まらせるほうが危険だと考えるんじゃないのか?」

「じゃあレクスさんはアナちゃんに手を出すつもりなんですか?」

「何の罠だ」


 レクスはこの状況を、シオンとベルが手を組んで仕掛けたハニートラップではないかと警戒している。


「ほらアナちゃん、レクスさんはこういう人だから割と安全よ」

「えっ? ええっ?」


 だがベルはレクスがハニートラップを警戒しまくる人間だと分かっていても、そんなことは知らないアナは思いっきり戸惑っている様子。


「というわけで、アナちゃんのことよろしくお願いしますね、レクスさん」

「いや、泊めるならお前の所でいいだろ、ベル」

「私は今日忙しすぎて、当分帰れそうにないんですよ。レクスさんもクエスト受けてくれなかったですから」

「ぐっ……」


 ベルは先ほどレクスがクエストを断ったのを理由に、アナのことを断りづらい状況を作り出した。

 こうして本日魔法学校の寮に戻れないアナは、レクスの家に泊まることとなったのであった。


「よ…よろしく…お願いします、レクスさん…」

「勝手にしろ……」

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