24 大鬼退治
オーガの指を一本切り落とし、このまま他の指も切り落としていこうと考えているレクス。
だがしかし…
「ちょっと、指切り落としちゃってどうするんですかっ! そんなんじゃ見世物として価値が下がっちゃいますよぉっ!」
ここで支配人からの苦情が入った。
「契約内容は腕と脚を切り落とさないことであって、指は関係ないだろ。それに体の一部が欠損していたほうが不気味さもあって拍がつくだろうし、指の五本や十本くらい気にするな」
「十本って、全部なくなっちゃってるじゃないですかっ! それだけは絶対にだめですからっ!」
「じゃあ五本、半分までは許せ。それくらいは削らんと、俺もこれ以上は踏み込めん」
「わ…わかりました……」
こうして支配人がしぶしぶ指五本を許可すると、レクスは再びオーガの拳による攻撃をかわしながら、その指を切り落としていった。
レクスが狙ったのは両の手の親指と人差し指。
レクスにとって最も避けなければならないのは、オーガの巨大な手につかまれることなので、これら四本の指を切り落とすことは最優先である。
そして右手三本、左手二本の計五本指を失ったオーガは、その痛みからか拳を繰り出すスピードが少し遅くなってきている。
するとその弱体化を確認したレクスは攻撃の際にもう少しだけ前に踏み込み、今度はオーガの手の甲を撫でるように光の剣を当てた。
「ウガァァァァァッ!」
右手の甲を光の剣で焼かれて悲鳴を上げるオーガ。
そしてその次に繰り出された左の拳に対しても、レクスは同様に光の剣で焼いていった。
「ウガッ…ガッ……」
これでさらにオーガの手の痛みは増し、オーガの攻撃はさらに遅くなっていく。
するとレクスはオーガの攻撃をかわした後もっと大きく前へと踏み込み、そのたびに光の剣で、オーガの腕を切り落とさない程度に斬りつけていく。
それを繰り返した結果、太くたくましかったオーガの腕は、焼けただれたズタボロの腕へと変貌していた。
オーガは腕に感じる痛みと、自分の腕をこんな状態にした人間に対する恐怖からか、もはや攻撃を繰り出す気力すら失っている。
「ガ……」
「もうそろそろいいか」
ここでレクスは、ついにオーガのもとへと間合いを詰めるために動き出した。
たとえ相手の腕がボロボロでこれ以上攻撃を繰り出せそうになくとも、決して正面から突っ込むような危険な行為はせず、大きく弧を描きながら敵の背後へと回り込んでいく。
そしてそこでオーガの脚を一本、切り落とさない程度に斬りつけた。
「グガァァァッ!」
脚に大きなダメージを負ったオーガは、体勢を崩してふらつきだす。
するとそこでレクスはもう一本の脚も同様に斬りつけた。
「ガッ…グガッ…」
「まあ、これで終わりだろう」
レクスがそう口にした直後、オーガは仰向けに倒れて動かなくなった。
「すごいです、レクスさん! オーガ相手でも圧勝じゃないですか。やっぱり白いゴーレムの光の剣は無敵ですよね。ねっ、ねっ!」
レクスの戦いぶりを見てアナは大いにはしゃいでいる…が、その隣で闘技場の支配人はなんとも微妙な表情をしていた。
「これで依頼は終わったぞ…と…」
「何してくれてるんですかぁっ! そんなに脚深く斬っちゃったら、もう立てないかもしれないじゃないですかっ! どうするんですかぁっ!」
「這ってるオーガも見世物としては面白いと思うが」
「そんなんじゃだめです! オーガは倒せそうにないほどに強く恐ろしくないと、見世物としての価値が下がっちゃいますからっ!」
だがその倒せそうにないほどという支配人の言葉を聞いて、レクスは少し疑問に思うところがあった。
「人間と魔物で戦わせる場合、人間側に勝ち目のない組み合わせはアウトなんじゃなかったか?」
今の闘技場はあくまで戦いを見せる場所であって、殺しを見せる場所ではない…ということになっている。
そのため闘技者が絶対に勝てないような強い魔物と戦わせることは、闘技者の虐殺を見世物にすることとなるので、法的に禁止されている。
もちろん明確な基準はないため、守られていない場合も多いが。
「今の闘技場に、オーガに勝てそうな闘技者なんているのか?」
闘技場は基本一対一。
それでオーガ相手に勝てる者などそうそういない。
レクスは光の剣の圧倒的な攻撃力のおかげで勝てたが、普通は実力のある冒険者でもオーガを相手にするときは必ずパーティーを組んで戦うもの。
「まさか、オーガで虐殺ショーをやる気だったんじゃ…」
「ギクっ!」
どうやらそれは図星だったようである。
「そ…そこはほら、お強いレクスさんを闘技者として迎え入れるとか…」
「やるわけねえだろ」
「うぐっ…」
「まあ、ちょうどよかったじゃないか。それなりの強さの闘技者でも、ちょうどいい感じで相手できそうな這いつくばるオーガになって」
「そ…そうですね…」
「じゃあ脚の件は文句言うなよ。ちゃんと金貨五十枚払えよ」
「は…はい……」
こうしてレクスは支配人の文句をねじ伏せて、臨時報酬の金貨五十枚を手に入れることとなった。




