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23 契約は書面にて

 金貨五十枚でオーガの捕獲を請け負ったレクスは抱きかかえていたアナを下すと、つい先ほど蹴り飛ばした闘技場の支配人のもとへと向かった。


「本当にあれをどうにかすれば金貨五十枚がもらえるんだな?」

「は…はい、もちろん」

「とりあえず、殺さずに動けなくすればいいんだな。条件はそれだけだな?」

「ま…まさか、手足を切り落とす気じゃないでしょうね。それは困りますよ! 手足が無くなっちゃったら、見世物として使えないじゃないですか!」

「じゃあ、手足さえつながっていればいいんだな? それ以上は譲歩せんぞ」

「ま…まあ……」


 こうしてひとまずレクスと支配人との間で捕獲依頼の契約内容が取り決められた。

 その間にもオーガはどんどんとこちらへ迫っているわけだが。


「じゃあ、すぐに契約書を作成しろ」

「契約書って、もうすぐそこまでオーガ迫ってきてるんですよ!」

「俺は口約束など信用しない。早くしろ」

「早くしろ…などと言われましても、今は書くものなんて…」

「ペンと紙ならわたしが持ってます」


 アナはいついかなる時でもレクスの魔法の記録を書き記せるよう、紙とペンは常備している。

 支配人はその紙とペンを受け取り、急いで契約書を作成したわけだが、まだこれで終わりというわけではない。


「契約書、内容はこれでいいですか?」

「……まあ、問題はないな。じゃあ指出せ」

「えっ?」


 レクスは剣を鞘から抜いた。


「いきなり何ですか?その剣。それに指って…」

「血判、押せ」

「何もそこまでやらなくても…」

「後でしらばっくれられたら困るからな。押せ」

「わ…わかりましたよ! 押せばいいんですね、押せば!」


 こうしてついに契約書は完成し、なかなか人を信用しないレクスもこれで一安心なようである。

 だがそのときにはもうすでに、オーガは目の前までやってきていた。


「ウガァァァッ…」

「こうして見るとさすがにでかいな」


 ただの剣を鞘へとしまい、そして光の剣の魔法を発動させて構えるレクス。

 そんなレクスのことを後ろで見ているアナは、光の剣がオーガに通用しないとは思っていないものの、目の前の敵はレクスが戦闘を避けようとした相手ということで心配している。


「レクスさん、大丈夫…ですか?」

「まあ、戦い方次第でなんとかなるだろ」


 オーガの皮膚や筋肉はとても硬く、普通の剣などでは簡単には切り裂けない…が、この光の剣であればそれを斬ること自体は容易…とレクスも考えている。

 ではなぜレクスはこのオーガとの戦闘を避けようとしたのか。

 その最大の理由はリーチの差である。


 光の剣の攻撃力がどんなにすごくとも、そのリーチは普通の剣と大差ない。

 そして巨体であるオーガの手足の長さは、剣の間合いを明らかに上回っている。

 つまりレクスがオーガの体に致命傷を与えるためには、その長い手足による攻撃をかいくぐらなければならないということであり、それは非常にリスクが大きい。


 たとえ閃光の魔法でオーガの目をくらませたとしても、それでやけになったオーガが雑に腕をぶん回してきて、それがレクスの体に当たりでもしたら、その一発で完全にアウト。

 このオーガとは、そういう相手なのである。


 だからこそレクスは決してオーガの腕の間合いには入らず、常にその一歩手前で構えて、オーガの攻撃を誘っている。


「どうした? 早く来い」

「ウガァッ!」


 オーガが巨大な右の拳をレクスに向けて繰り出す…が、レクスはその拳の間合いを見切り、大きく後ろへ飛んで回避。

 別に大きく後ろに下がらずとも、少し後ろに下がりさえすれば攻撃は当たらなかっただろうが、これは一切ダメージを受けずに確実にいくための選択。


 それに今ので多少間合いが開きすぎたとしても、オーガの動きはそれほど速くはないため、レクスが反撃に出るのには何も問題はない。

 レクスはオーガが拳を引く前に間合いを詰めて、すかさず光の剣でオーガの拳を斬りつけ、指を一本切り落とした。


「グガァァッ!」

「まずは小指一本、いただきだ」

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