13 殺意の行方
光の剣への手掛かりをつかんだレクスは、再び魔法学校の研究室でアナと共に光の剣の魔法を開発しようとしていた…が…
「……だめだな。昨日のあれは再現できない」
レクスが手に魔力を集中させても、そこから放出されるのはごく普通の光の魔力でしかなかった。
「確かに、全然バチバチとかはしてないですね」
「してたらやけどするぞ」
アナはレクスの手を色々と触って検証している。
「レクスさん、魔力が変質する条件って何だかわかりますか?」
「おそらくは殺意。強い殺意を魔力に込めることで、昨日のあの状態が再現できるはず」
「今は無理ですか?」
「目の前にむかつくクズでもいないと、あのときと同等の殺意は出ないだろ」
「じゃあ、これでどうですか」
アナはレクスのほっぺたをつねった。
「これなら痛みで殺意がわきませんか?」
「力が弱すぎて微塵もいたくないぞ」
「えっ? そ…そんなぁ……」
そんな二人の様子を目にしていた周りの女子生徒たちは、この前よりいちゃいちゃしてる、これもうとっくにくっついてるんじゃ?…などと二人の関係に興味津々。
そして男子生徒のうちの何人かは、爆発しろ…とでも言いたげな殺意のこもった嫉妬の念をレクスのほうに向けていた。
「あっ、そういえば…」
「何だ?」
「レクスさんに渡してほしいって、魔導師科の方から手紙を預かっていて…」
「じゃあその辺に置いといてくれ」
「はい」
「それより今は、昨日のあれをなんとかして再現する方法を…」
「じゃあ、こうやって首をぎゅってしたら殺意わきますか?」
「だから弱すぎて全く苦しくないと…」
「ならこれでどうですか、えーいっ!」
「さっきと何も変わらないんだが」
「ええっ?」
その光景は周りの者たちからは、ただアナがレクスに抱き着いているようにしか見えなかったので、これはもう絶対にそういう関係になっているに違いない…と勝手な妄想を始める女子生徒たち。
そして先ほどレクスに嫉妬の念を向けていた男子生徒たちは、マジで爆発しろ…と、その殺意がさらに高まっていた。
もし彼らが光属性の魔導師であったのなら、レクスの昨日のあれを今ここで再現できていたのかもしれない。
この日の昼休みの時間、魔導師科の魔法訓練場ではカーマ・セドッグが大勢のギャラリーに囲まれながらある人物を待っていた。
「カーマ先輩のバトルが見れるだなんて楽しみだぜ」
「相手はいったい誰なの?」
「今の魔法学校の生徒じゃなくって、昔在籍していた人って聞いたけど」
魔法学校では魔導師同士の勝手な私闘は禁止されているが、あらかじめ学校に申請をして審判役を立てたうえでの決闘なら認められている。
決闘に参加できるのは、この学校の魔導師科の生徒及び、過去に魔導師科に在籍していた人間。
つまり、カーマがここで待っている者とはレクスのことであった。
だがしかし、いくら待てどもレクスはこの場には現れない。
「遅い!」
なぜならレクスは、果たし状として出されたあの手紙のことなど完全に忘れて読んでいないからである。
もっとも忘れていなかったとしても、すぐに読んだかどうかは怪しいし、たとえ読んでいたとしても、めんどくさがって来なかった可能性が大であろうから、どのみち結果は同じと思われる。
「ふざけるな、レクス! 何で来ないんだぁぁぁっ!」
結局レクスが昼休み終了時刻までにここに現れることはなかった。




