12 変質する光
魔法学校魔法研究科の一年生は、週のうち三日が通常の授業で、残りの登校日二日分がそれぞれ個人での研究の時間に当てられている。
そして本日アナは普通に授業を受けていて光の剣の開発は進められないため、レクスも今日は冒険者として討伐クエストに出向いていた。
「これで終わりだ」
「グガァァァッ!」
閃光の魔法を術式を使って発動できるようになったことで、より効率よく戦えるようになったレクスは、あっという間にコボルトの群れをせん滅していた。
そしてクエストを終えたレクスが冒険者ギルドへと戻ってくると、ギルドの前でレクスを待ち構えている数人の冒険者がいた。
そのうちの一人、大柄な戦士の男がレクスに声をかけてきた。
「おい、卑怯者」
「……………」
だがレクスは完全にその男を無視して進んでいく。
するとそんなレクスの態度に怒り狂ったその男は、大声をあげながらレクスにつかみかかろうとしてきた。
「待てや、こらあっ!」
だがレクスはその男の顔面に閃光の魔法を放ち、つかみかかろうとするその手をするりと回避した…が、この場でレクスを待ち構えていた冒険者は、今目に見えている者たちだけではなかった。
物陰から飛び出してきた一人の冒険者がレクスの背後に回り込み、そしてレクスの両腕をつかんで捕らえてしまったのである。
「ふははっ、こうなったらお前もおしまいだな」
「ちっ、卑怯者はどっちだよ」
「うるせえ!」
こうして身動きの取れなくなったレクスに対して、この冒険者たちのリーダー格であろう大柄な戦士の男は告げてくる。
「てめえ、あのちっこい女のおかげで、最近ずいぶんと調子がいいみてえだな」
「それが何か?」
「冒険者ってのはなあ、強さが全てなんだよ! ここはてめえみてえに大して実力もねえ奴が、でけえ顔していい場所じゃねえんだよ!」
「顔ならお前のほうがはるかにでかいが」
物理的なサイズの話。
「この野郎、減らず口をぉ…」
レクスはアナに術式を作ってもらったことで、さらに効率よく戦えるようになり、冒険者としてより活躍できるようになった。
しかしそれは身体能力の高さや強力な魔法といった分かりやすい強さではないため、彼らはそんなレクスがより一層活躍しているのが気に食わない…というのは建前である。
本当の理由は、このままレクスがアナと手を組んでいると、そのうち本物の実力者になりかねない。
今まで散々馬鹿にしてきた奴に、目に見える実力で越えられるのだけは我慢ならないので、そうなる前に潰しておこう…という魂胆である。
「てめえはザコのくせに調子に乗りすぎたんだよ。今日限りでてめえは冒険者廃業だ」
そしてその戦士の男は仲間の二人の冒険者と共に、捕らえられて身動きのとれないレクスに迫ってくる。
レクスは必死にこの状況から脱出しようとするものの、身体能力が特別高いわけではないレクスの力では、自分を捕らえている者の手を振りほどくことが出来ない。
だがそんなとき…
「あぢっ!」
レクスを捕らえていた者が、突然何かに熱がってレクスの腕から手を放してしまった。
「おい、何やってんだ!」
「いきなり、こいつの手がバチッ…て…」
その言葉を聞いてレクスは自分の手を確認した。
すると確かに何かがバチバチとしているような感覚がある。
それは自分をつかんでいた手を振りほどくために腕に力を入れたことで、その際につい腕に集中させてしまっていた魔力であった。
その魔力が、バチバチと音を立てるような何かに変質している感覚がある。
「ああ、そういうことか。なんとなく分かった。くくくっ…」
「てめえ、何笑ってやがる!」
「お前たちのような奴でも、役に立つことがあるんだな…って。おかげで光の剣の手掛かりがつかめた」
「わけの分からんことを。くたばれぇっ!」
戦士の男は、ここでレクスを逃がしてはなるまいと、太い腕を振り上げてレクスに殴りかかろうとしてくる…が…
「うわぁっ!」
「くっ!」
「そんなっ!」
「ううっ!」
レクスは自分の周りの敵、全員の顔面に向けて閃光を放ち、彼らの動きを止めた。
そしてひるんでいる戦士の男の顔面を右手でわしづかみにする。
「あづっ、あぢゃあぁぁぁっ!」
「そうか、熱いのか。やはりこれでいいんだな。じゃあお前はもう用済みだから、とっととくたばっとけ」
体格的にこの戦士の男はレクスよりもはるかにパワーは上。
だが顔面に襲い掛かる謎の熱さで気が動転していたこの男は、自分より力の劣るレクスにあっさりと倒され、頭を地面に叩きつけられた。
「がはっ!」
「まず一人…。次はお前らの番だから覚悟しておけ」
この日、四人の冒険者が自らギルドを去ることとなった。




