間近な恐怖
「で、なんで俺たちがここにいるって気づいたんだ?」
俺たちはあの沼から抜け出し、近くの教室に入っていた。
「僕たちのところにあの少女が現れて、屋上に来てと言われまして…」
「なるほどな…」
なんとなく考えていた。あいつは俺たちのところにしか現れていないのかと。だが今回はあいつのおかげで助かったと言えるだろう。
「それで、どうしますか?あの状態じゃ階段からは登れなさそうですし…」
「…そうだな…」
「エレベーターはどうだ?」
「え?」
声を出したのは裕司だった。
「エレベーターなんてあったか?」
「いや、まだ見てないが、春導学園ならエレベーターがあったはずだ」
確かに春導学園にはエレベーターがあった。だが使用は教師限定で、教職員が持っているカードをかざして動かす感じだ。
「まあ、学園に似てるからあり得るが…」
「エレベーターはあまり使いたくないわね」
「え!なんで!」
「…密閉」
そこで初めて陽奈が声を出した。密閉、その通りだ。エレベーターは密閉された空間になってしまう。さっきみたいなことが起きたら次は助けは来ないだろう。
「じゃあどうするんだよ!」
「外からとかは行けないわけ?」
「外からか…」
エレベーターはなしとして、外からも否定したら上に行く方法がなくなる。試すのはありかもしれない。
「行ってみるか」
俺たちは教室の窓を開ける。外は闇に包まれ、地面すら見ることは叶わない。
「さて、どうやって上に行くかだな…」
窓は全て閉まっている。こんな学校でも戸締りはちゃんとされているらしい。俺がどうするか悩んでいるとズリズリと引きずる音が近づいてくる。
「マジか!」
「急いでください!」
「クソ…上は無理だ!下に下がるぞ!」
俺は窓ガラスを近くの椅子で叩き割り、そこにロープを縛り付ける。ロープをつたっており、勢いをつけて下の階の窓を破る。
「全員降りてこい!」
一人一人順々に降りてくる。残りは薫と玲奈だけとなった。そして玲奈が降りる時だった。ブチッとロープが切れる。ガラスを割った時、綺麗に割っていなかったため、鋭くなったガラスの破片がロープを傷つけ切ったのだ。俺は咄嗟にロープを掴み裕司たちと一緒に引き上げる。
「薫!大丈夫か!」
「大丈夫です。僕は1人でなんとかしてみます。」
ガラガラと上の階から扉が開く音、そしてズリズリと引き摺る音が聞こえてくる。
「…こうなったら死ぬ気で足掻いてやるっ!」
椅子や机が倒れる音、そして何かが潰れる音が聞こえた。
「薫?」
玲奈が恐る恐る名前を呼ぶ。それに対して返事は返ってこない。
「いやぁぁぁあぁ」
玲奈はその場で泣き崩れた。それは愛する彼が死んだかもしれないと言う悲しみからくるものだろう。そして再びズリッズリッと何かを引きずる音が聞こえ始める。
ここは現実ではない。そう思いたくてしょうがない。そう思わせる理由がまたひとつ増えてしまった。




