階段
「なんで私たちの名前だけ呼ばれたのかしら」
謎の女の子…いや、あのバケモノがいなくなってから俺たちは少しずつ落ち着いてきていた。
「…わかりません…でも、僕たちもあの女の子の声を聞いてここに来たんです…何かしらあるんだと思います」
「うーん…俺たちはついて行っちゃダメなのかなぁ?」
「辞めといた方がいいだろうな。さっきただ顔を見ようとしただけで裕司の眼球を破裂させるような奴だ。警戒は必須。余計なことはしない方がいい。それが例え誰かを危険に晒してもだ。」
薫は今もなお身体が震えている。指名されたんだ。当然と言える。俺と夏海が冷静なのが異常なだけだ。
「ずっとここにいるだけ無駄ね。急いで屋上に行くわよ」
「裕司は片目が潰れてる。俺が支えながら連れていく」
「おー!それでこそ親友だ!」
マジでどこからその元気は来るんだ。だが何故か血も止まり、軽く目を抑えるだけで済んでいるのは運が良かったと言える。この世界がそういう仕組みなのかもしれない、あいつの攻撃のみこうなるのかもしれない。だが運がいいことには変わりない。
そして俺たちは少しずつ階段を登っていく。もしこの学校が春導学園と同じなら五階が屋上のはず。それを信じて階段を登る。だがその思いに反し何回登ろうとも屋上は見えてこない。
「何かおかしくないですか?」
「そうね…現実で考えるなら既に15階にはなっているはず。一階3メートル程度だとしたら私たちは高さ45メートル程度にいるはずよ」
45メートル程度の変化では外を見ないとほぼわからないが、外は暗闇に包まれ見ることは叶わない。
「…あの…僕、登る時に壁に少し傷をつけてたんです…その傷がここにあるんです…」
龍二の指した方向には小さな傷跡があった。
「なんとなく状況がわかってきたな」
「なんで早く言わないのよ」
「だ、だってぇ!」
「つまりはどういうことよ」
「…俺たちはループし続けているってことか?」
「まぁ、そうなるな。だが、捕えるだけだと思うか?」
ただ閉じ込められた。そんな優しいものか?いや、今まで見てきただろう!何かに取り憑かれたかのように笑いながら追いかける女、一瞬にして全てを止める少女、そんな奴らと同じような存在がこれだけか?
瞬間、地面は泥のように溶けていく。足場はおぼつかない。
「やっぱり来たか!」
だがただ足を引っ張るだけ、それだけなら問題はない!はずだった。
「行かないでぇ」
地面から声が聞こえてくる。地面は徐々に形を変え無数の顔になっていく。
「助けてぇ」
「一緒に来てぇ」
「寂しいよぉ」
最悪なものを見せてくる。その時、ここに来て初めて、恐怖ではなく憎悪を感じた。その声に玲奈が気を取られ放心状態になる。
「玲奈!」
それを助けようと薫も飲まれていく。このままじゃ共倒れだ。
「めんどくさいなぁ!裕司!」
「おう!」
俺は薫を、裕司は玲奈を思いっきり上に引っ張る。だが、その衝撃で俺と裕司が一気に飲まれる。たくさんの声が俺たちを呼んでくる。抜け出そうにも足場がおぼつかない状態、なかなか上に上がるのはかなりキツイ。他の奴らも体力を持って行かれて沈んでいく。俺と裕司はすでに体の半分近くが埋まっていた。
「くそ…」
詰んだと思った。その時だった。
「皆さん!これを掴んでください!」
聞いたことのある声、それと同時にロープが投げられる。俺たちはそれを掴みながら、やっとの思いでその沼から抜け出すことができた。
「はぁ…はぁ…」
「よかったです。無事に助けられて」
そこにいたのは少し前に別れた海斗と桜だった。




