女の子の声に誘われて
俺たちは学校の屋上の扉の前まで来ていた。
「うーん、やっぱり鍵はかかってるな」
「そりゃそうだろ。」
屋上は昼休憩の時間以外は戸締りがされている。その鍵は職員室にあり、教師陣に理由を説明すれば開けてもらうこともできる。
「夜だし、誰もいないだろ。職員室行こうぜ」
「どうせそこも閉まってると思うんだがなぁ」
そして俺たちが階段を下がって職員室に行こうとした瞬間だった。ギィぃぃっと扉の開く音が聞こえる。俺たちは咄嗟に後ろを振り向く。
「は?」
さっきまで鍵のかかっていた屋上の扉がひとりでに開いていたのだ。ありえない光景に体が硬直する。数秒経って、やっと体を動かそうと脳が認識する。そこで気づいた。硬直ではない。完璧に体が動かせない。
「あそぼーよ」
女の子の声が真隣から聞こえる。目をそっちに向けるが声の方向がギリギリ見えない。そこからさらに数秒、それから解放されてやっと体が動くようになる。
「お、おい、雪!お前、あれ聞こえたか!?」
「裕司もか…なら幻聴って感じではなさそうだな。それにこれは…」
俺たちはさっきまで女の子の声がしていたであろう方向を向きながら話す。そこには濡れた足跡、サイズからして小学生ぐらいだろうか。その足跡はどこかに続いている。
「追いかけるか?」
「怖いもの知らずすぎるだろ…はぁ、だが面白そうではあるな」
「お、それなら行くってことで決定だな!」
俺たちは屋上を後にしてその足跡を追っていく。その足跡は三階に降りて、音楽室に入っている。しかも音楽室の扉もご丁寧に開いている状態。冷静に考えれば行かないのが正しい。だが、俺たちはそれ以上に興味心が上回っている。
「さて、辞めるなら今だな。どうする?」
「俺はどっちでもいいぞ」
「俺はお前がいなくても行く気満々だ。あの声の主も気になるしな」
「そうかよ。じゃあ、行くぞ」
俺たちはほぼ同時に中に入る。瞬間だった。ピアノの音がけたたましく鳴り響く。俺たちは咄嗟に耳を塞ぐ。周囲からは謎の笑い声、老若男女関係ない。ありとあらゆる声が聞こえてくる。そして空間も歪み始める。立っていることもできないほどだ。眩暈の様にも感じるそれは、時間が経つとともにひどくなっていく。ついには俺たちはその場で倒れ気絶するのだった。気絶する瞬間、あの女の子の声が聞こえた。
「たくさんあそぼーね」
・・・
目を覚ますと見知らぬ教室の中だった。普通なら混乱する場面だろうが、俺の脳は既にさっきまでの現象のせいで深く考えることをやめ、こういうものだと認識し始めていた。周囲を確認すると複数の同い年ぐらいの男女が倒れていることに気が付く。その中に裕司がいるのを見つけて、俺はすぐに近寄った。
「おい、裕司!大丈夫か?」
「う、うーん…なんだったんだ?」
裕司にもなんの異常もないらしい。だが問題は他の奴らが何者なのかという話だ。その中の一人が目を覚ました。
「なんなんだこれは!」
目を覚ましたのは少し体つきがいい男子だった。髪色は金髪に染めてある。服装もなかなかいかつい。ザ・不良みたいな見た目だ。
「おい、お前はここがどこかわかるか?」
俺はそいつに対して質問をする。まぁ、最初の反応的に無意味だろうが…
「お前は誰なんだよ!急になんだ!」
不良にしてはかなり腰が引けている。そんなんじゃないのかもしれない。だが今はそんなことは関係ない。
「俺は柳雪だ。いつの間にかここにいたんだ。お前は?」
「…俺は榊原智也、友人と一緒に肝試しに来たはずなんだよ。そしたら突然立ちくらみが起きて、気がついたら…」
少し似たような感じだが、ひとつ気になる点があった。
「肝試しはどこに行ってたんだ?」
「確か…春導学園だったか?数年前に廃校になった学校だよ。」
「は?春導学園はまだ廃校になってないはずだぞ!」
途中から裕司が割り込んでくる。だが最もな意見だ。なんなら俺たちはそこの学生だ。廃校なんてなっているはずがない。
「何がどうなってるんだ?」
「ちなみにお前たちが肝試しに来たのは西暦何年の何月だ?」
「あ?西暦2043の8月だ。これがなんだ?」
「俺たちが学校内に入ったのは2025の7月だったはずだ…」
「「は?」」




