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波乱①

 運の悪いことは続くもので、「やっぱりな」と、姫乃と双子の後ろから声がした。3人が振り返ると、姫乃と同じクラスの男子が3人、寄り集まって姫乃を睨んでいた。名札を付けなかった3人だ。名前はわからない。


「最初からおかしいと思ってたけど、やっぱりお金持ちのお嬢様だったんだ」

「な、なんのことでしょう」

「とぼけんなし」

「みんな知ってんだよ」

「あんた、元々星蘭女学園に居たんだろ?」

「なんでそれを……!」


 リーダーと思われる男子生徒が意地悪く笑う。星蘭の名前を聞いて、双子は驚いてお互いの顔を見合わせた。星蘭と言えば日本でも有数のお嬢様学校で、政治家や有名な芸能人、スポーツ選手など、各業界の令嬢たちが通っている学校だ。

 トレードマークの星のブローチとハイブランドの制服を見れば、誰もがその学園の生徒だとわかる。そして当人たちもそれをわかっているから隠しもしない。タチが悪い生徒だとそれを力のように見せびらかす。それでビビる人間がいることを知っているのだ。

 だから一般的な学校の生徒からの評判はあまり良くない。良い噂もあまり無い。できればみんな関わりたくないと思っているのが事実。だから姫乃は隠そうと決めていた。自分がそこから転校してきたということを。


「あんたが転校してきた日、質問攻めに遭ってただろ? その答えを聞いてて変だなぁと思ったんだ。引っ越しはしてないし、坂江の方から来たなんて曖昧な答え方するし、おまけに普段のあんたの様子見てれば勘のいい奴なら気づくでしょ」

「たったそれだけで?」

「まぁ俺はちょっと顔が広いんでね。ツテ辿って調べたら面白いことがわかっちゃって」

「……」

「あんた、T-コラボレーショングループんとこの社長の娘でしょ」

「え……」


 驚いて声を出したのは美代だった。T-コラボレーショングループといえば知らない人は居ないというくらい有名な大企業だ。携帯、パソコン、家電、不動産、アパレルブランドに至るまで、あらゆる業種で日本のトップの業績を持ち、海外でも有名な会社だ。

 美代も沙代も、その会社の系列の服が好きでよく着ている。お揃いの靴下は毎日そこのブランドの物を履いているくらいだ。そして日本人が持っている携帯の約半分がその会社の物と言っても過言ではない。そのご令嬢が今目の前に居る姫乃だと、この男子生徒は言っている。沙代は美代の手を強く握って言葉を失っている。


「名前が珍しいから調べたんだけどさ、Tコラボの社長も筑比地って言うじゃん。もう確定でしょ。ねぇ、俺らを見下して楽しかった? 社長令嬢さま??」

「み、見下してなんていません」


 姫乃の呼吸が早くなっていく。これ以上は、姫乃にとって美代と沙代に聞かれたくない話だ。なんとか逃げたい。しかし同じクラスである以上、ここで逃げても何も変わらない。

 姫乃は深呼吸をしながら、なんとか震える膝を踏ん張らせる。


「何が目的ですか? たしかに私はT-コラボレーショングループの社長の娘ですし、それを隠してました。それは見下してたからではありません」

「へぇ。じゃあなんだって言うの?」

「普通の……普通のお友だちを作りたかったからです」


 姫乃の声が震える。黒岩は拳を強く握って自分を抑えていた。今、黒岩が口を挟めばこういう輩は余計に騒ぐ。だから血を飲む思いで、黒岩は唇を噛み続けた。


「友だち? 嘘ついて騙してるくせによく言うよ」


 3人がゲラゲラと下品に笑う。


「みなさんには、折を見て話すつもりでした!」

「あーはいはい。そういう綺麗事は要らないから。そっちの1年生もどうせあれでしょ? 木崎繋がりで知り合ったんでしょ?」

「そ、それが何か」

「そっちの2人は知ってんのかなぁって。あんたが転校してきた理由」


 姫乃の顔から血の気が引いた。このまま喋らせたらまずいとわかっていても、姫乃の喉は声を出すことを拒絶した。


「こいつ、人を階段から突き落としたんだよ」

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