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10話

「ということなんだけど」


 今日も家に来たアケミさんに、夕食を準備しながらエルフの件について話す。というか今日は来るように言ったんだけど。


「うーん……まあ、そう言われたら納得するしかないですけど」

「けど?」

「あれ以上の方法があるとは思えません」


 だよね。かなり考えられている案だった。抜け穴を掘る手段も、単に魔法でというわけじゃなく現実的なトンネルを掘る際の注意点まで気にしてあった。前世でも関係のある職業だったのだと思う。


「アケミさんが言うなら、そうなんだろうね」

「じゃあどうするんですか?」

「フフフ、どうすると思う?」


 思わせぶりに茶化す。こちらの思惑くらい分かっていそうだけど。


「エルフを滅ぼす!」


 茶化し返してきた。


「素敵な案にゃ」

「よし、逝ってこいシマ!」


 それが出来るならそもそも問題になってない。


「仮に冒険者を全員集められたとしても、エルフって倒せるんですかね?」

「倒せると思うよ」

「へー、そうなんですね」

「そもそもここまで恐れられてるエルフが禁忌の森にしかいないのって、滅ぼされる直前まで行ったからだと思うし」

「それは考えたことありましたけど、本当に強いと聞いてますよ」

「でも森に火付ければ良いじゃん」

「あー、確かに。すごいですね、悪魔的過ぎて思い付きませんでした」


 それは褒めてるのかな?


「というか、禁忌の森を燃やすのは絶対に無理だから考えないんでしょ。木人問題だってあるし」


 この世界の木々は普通には燃えない。山火事が起きたと思ったら、落ち葉や枯れ木が燃えただけで森はそのまんまということがあるくらいだ。


 それに加えて禁忌の森の傍には水山という、頻繁に噴火のように水を噴き出す山がある。水脈も豊富だろうし、エルフの最終防衛ラインだから防備も完璧だ。炎を使える魔法使いを投入しまくったところで、とても燃やせるものじゃない。


「そしたらどうやって倒すんです?」

「そりゃ普通に暴力で」

「あら簡単」

「俺たちが町のために絶対手を出さないようにしているように、向こうも人間全体を敵に回したくはないんだよ。負けるから」

「今攻められていない事実が、総力戦なら勝てるということに繋がるわけですか」

「でもこの話って筋通ってないよね?というか仮定がおかしい」

「はい。総力戦という話なら向こうは他種族を巻き込みます」


 それこそミルスは絶対敵に回る。ミルスは人間と交流できてるけど、エルフとの方が仲が良いのは明らかだ。他にもエルフは分かっていないことが多くて、戦力なんて雰囲気で言っているだけで実際は分からない。


「それを考えると、アケミさんとしては勝つのは難しそうと」

「エルフとミルスを足すだけで、上級冒険者相当の実力者が人間より多いと思われますから。それこそさっきの理論と同じで、エルフを攻めないのは負けるからだと言えます。どちらも同じように考えているのなら拮抗しているということであって、簡単に倒せると発言は出来ないと思います」

「やっぱ頭が良いねー」

「普通のことを言っただけです。煽ってます?」

「違う違う。俺は結構考えたことあるから、そのときのことを話してるだけ。この場ですぐ同じ答えが出てくるのが頭の回転早いんだなーって思うのよ」


 ただの雑談だし、そんなに真剣に受け取られてもね。アケミさん的には気になる話題なんだろうけど。


「それはどうも。でも、勝てるんですよね」


 料理ができて、テーブルに並べる。


「勝てるだろうねー」

「理由は?」

「強いから」

「……理由になってます?」

「説明としては不十分かもしれないけど、そういうもんだよ。いただきます」

「いただきます。じゃあさっきの負けるから攻めない問題のオチは?」

「冒険者は何の味方か分からないから」

「……そういものですか」

「別に詳しいつもりはないけど、これは間違いないね」

「一番の敵は有能な味方と」

「反冒険者にでもなる?」

「あ、それ聞きましたよ。受け入れるらしいじゃないですか。本気なんです?」

「そうだねー。そこら辺食い違いを感じるよ」

「と言うと?」

「冒険者なんて一括りに出来るもんじゃないよ。その反冒険者だって、主戦力はどうせ冒険者みたいなもんでしょ。こっちも都合の良いところだけ付き合えば良い」

「でも相当な悪評ですよ?受け入れてもいないのになかなかの不利益が生じているとか」

「デクルとどっちが悪いかな?」

「なるほど、一理ありますね」


 俺たちの害悪耐性は、他の町とは一線を画す。


「腹黒兎と潰し合ってくれれば万々歳よ」



「仕事の話は終わったのにゃ?」

「もともと仕事かっていうと微妙だよ」

「そうですか?」

「アケミさん、いつもの職場での感じのフリやって」

「えっと、はい」

「……これ、トンネル掘れる保証ないから却下で」

「うーん、そうですか。残念です。自信あったんですけど」

「そうだね。これ以上はないと思うから、今後この件は考えなくて良いよ。エルフ対策課の規模も縮小しよう」

「分かりました」

「……はい、終わり。仕事なら必要なことだけ言って終わらせるよ。アケミさんもいつも通りなら、はっちゃけないし」

「はっちゃけ……まあそうですね。今は何も気にしないで話してたかもしれません。仕事ならもっと効率重視で風呂敷広げたりしませんもん」


 仕事に関係する話でも、仕事なら話さない。

 頭を動かす人だと討論とかは良いガス抜きになるのだろうし雑談の範疇なのかもしれないが、こういうのが嫌いな人もいる。口喧嘩との区別すらできない人もいるし。


「分からんにゃあ」

「俺とアケミさんの信頼と親愛の証だよ」

「私としては、もう後戻り出来なくなっただけなんですけどね……」


 まだ可愛い子ぶりたい気持ちはあるらしい。


「嬉しくないのにゃ?」

「嬉しいですけどね」


 ハシッとシマを捕まえるアケミさん。嬉しそうにモフる。


「明後日までに荷物纏めてね」

「妙なところで急かすというか、命令しますよね」

「そういうの好きかなって」

「……」


 キャラづくりだとしても、罠に引っかかって嬉しそうにしてるなんてアケミさんも大概だもの。



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