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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【85】第19話:鉱山探索(4)

俺は崩れた鉱山の中から、埋もれた3人を魔法で探して取り出した。


「...あれ?さっき埋もれたはずなのに、何で?」

唯一生きていたゼルは、その状況を理解できずに戸惑っている。


仕方ない。ちゃんと説明してやるか。

俺は宮藤迅(前世)の姿の分身を、あたかも転移魔術で移動してきたかのように演出しながら、ゼルの近くに作り出した。


「あっ!貴方は、クドージンさん!」

「よっ!死に損ない。」

「貴方が何でこんなところに...?いや、それより重要な話があるんです!」


「重要な話?」

「実はさっき、聖ソラトリク教団の手がかりを見つけたんです!」

「あぁ、知ってる。さっきまで見てたからな。」


「『見てた』って、どういうことですか?」

「どうもこうも、お前らが面白そうな事をしでかしそうだから、ずっと魔法で遠くから観察していたってことだよ。」


「遠くから観察って、いつからですか?」

「お前ら3人が鉱山に向かうところから。」

「割と最初から見てたのですね。」

「そんなことより、2人を生き返らせるぞ。」

俺は2人に蘇生魔法をかけた。


「あっ!待ってください!」

ゼルに止められたがもう遅い。

既に魔法をかけた後だった。


「待てって言われても、もう蘇生魔法をかけた後だから無理。」

「そんな...。どうしよう。僕、こんな格好なのに。」


ゼルは分かりやすいくらい取り乱して、頭を抱えた。

そういえばコイツ、厄災の魔王(もと)の姿に戻っていたんだった。

このままタクト達が起きてゼルの姿を見たら厄介なことになりそうだ。


「そうだ!クドージンさん、隠れてください!」

「は?何で?」

「お願いです、早く!」


ゼルは何かが閃いたらしい。

俺は渋々、宮藤迅(前世)の姿の分身をその場から消した。

そのすぐ後に、タクト達はタイミング良く目を覚ました。


「...あれ?」

「ここは...?」

「気がついたか?」

ゼルはあろうことか、2人に話しかけやがった。

ってか、お前は隠れなくて良かったのか?

目が覚めた2人は案の定、ゼルの姿を見て驚く。


「あっ、お前!」

「宮藤くんじゃないの!」

「あぁ、そうだぜ。」

いやいや、違うだろ。


....そうか、わかったぞ!ゼルは俺のフリをして誤魔化そうと考えたんだ。

だから俺にどっか行けと言ったのか。


「お前らが変なのに殺されてたから、生き返らせてやったぞ。」

「そうだったのね。また生き返らせてくれてありがとうね。宮藤くんさまさまよ。」


「おいクドージン、俺らアスオ鉱山に入ったはずなのに、なんでこんなところにいるんだ?ってか、ここどこ?」

「ここはえっ〜と...アスオ鉱山の入口だ。...多分。」

ゼルは自信無さげに弱弱しく言った。

大丈夫、合ってるぞ。多分。


「『多分』って、答えが曖昧ね。それにこの土砂崩れの後みたいなのは何?」

「それは、アスオ鉱山が崩れた跡だ。」

ゼルは冷や汗を流しつつも、今度は堂々と言い切った。

大丈夫だ。今度はちゃんと合ってるぞ。


「お前らを殺した変な黒い物体が、その後鉱山中を攻撃して、そのせいで鉱山が崩れてこうなった。」

「えっ....アスオ鉱山って、崩れちゃったの?!」

「だから、そう言っただろ。」


「お前、よく俺らを担いで鉱山から脱出できたな。下手すりゃ、俺ら全員ぺちゃんこになってたぞ。」


「いや、普通にお前ら2人は鉱山の下敷きになってたぞ。....俺がその後、魔法で脱出させてくれた...じゃなくて、脱出させたから、今ここにいるんだ。」

「待って。『お前ら2人』って...ゼルくんは?」


カタリーナは唐突に核心をつく質問をしてきた。

ゼルは明らさまに狼狽えている。


「ゼ、ゼルもいたのか?俺が見た時にはいなかったぜ?」

「ウソ!じゃあゼルくんは、今どこにいるの?」


「もしかしたら、まだ鉱山の下敷きになったままかも知れねぇぜ...。」

「いや、それはない。」

ゼルは断言した後、慌てて言い訳をするかのように後付けの説明をし始めた。


「さ、さっきお前らを鉱山から脱出させた時に、念のため他に人がいないか確認したけど誰もいなかったからな。」

「そう。なら良かったわ。ゼルくん、もしかして先に宿へ帰ったのかしら?」

「知らないけど、多分そうなんじゃねえか?」


「なぁクドージン。お前、鉱山の中を調べられるんだよな?だったらあの中から、黒い物体を取り出してくれよ!」

タクトが急に無理難題なお願いをしてきて、ゼルは再び冷や汗を流す。


「何言ってんだお前!あの黒いのはお前らを攻撃してきたんだぞ。そんなもんを今更取り出しても、危ないだけだろ。このまま鉱山の下に埋もれていた方がいいに決まっている。」


「お願い、宮藤くん!それでも、私にはアレが必要なの。アレは聖ソラトリク教団の手がかりになる代物なの。アレが何なのか調べれば、もしかしたら奴らを追い詰める切り札になるかもしれないわ。だからお願い!この通り!」


カタリーナは深く頭を下げ、頭の前に両手を合わせて懇願する。

だがゼルはどうすることもできずに、困り果てた顔で鉱山の跡を眺めるしかできなかった。


仕方ない、サポートしてやるか。

俺はカタリーナの要望通りに、黒い物体を鉱山の中から取り出してやった。


「なっ..!」

「あっ!」

「ありがとう、宮藤くん!」

「...ま、まぁ。こんくらい、どうってことないぜ。」

ゼルは一瞬戸惑ったものの、すぐに状況を理解して落ち着きを取り戻した。

多分、俺がサポートしたことに気づいたのだろう。


『オブジェクトの移動を検知しました。周囲情報のオブザベーションを開始します。』

すると突然、また黒い物体が喋り出した。


さっきからコイツは何を喋っているんだ?

俺は魔法を使って翻訳を試みた。


「危険種BKM−1147を2体、準危険種HYF-5098を1体確認しました。危険種2体及び、準危険種1体を排除します。」

言っていることは分かったが、言いたいことが分からない。


「すごい!さっきと違って言っていることが分かるわ!」

「なぁ、これもクドージンの魔法か?」

「ま、まぁな。それより、さっきアレが喋っていたことが気になる。」


ゼルは2人の盾となるように、黒い物体の前に立ちはだかった。

と同時に、黒い物体は白い光線を3人に当てようとした。

だがタクトとカタリーナは、ゼルが盾になってくれたおかげで、光線は当たっていない。


「危険種BKM−1147と準危険種HYF-5098の排除が困難と判断しました。排除手順を再考します。」

黒い物体はそう喋った後、白い光線を消して大人しくなった。


「なぁ、どうなってるんだ?」

「さぁな。言葉通りなら、俺達を殺す方法でも考えているんじゃないか?」

「ねぇ、せっかく宮藤くんが翻訳してくれたわけだし、あの声と会話できるんじゃないかしら?」


「やめとけ。コレは一回お前らを殺したんだぞ?」

「でもそれは言葉が通じなかったからでしょ?今なら話が分かるかもしれないじゃない。」

「....勝手にしろ。」


「そうさせてもらうわ。もしもーし!私達に白い光を当ててきた黒い物体さーん!少しお話できませんかー?できるならお返事くださーい!」

するとカタリーナの声に反応するように、黒い物体は再び喋り出した。


「危険種BKM−1147より念話交渉のリクエストを感知しました。危険種BKM−1147の登録情報を更新します。また、これより一時的に厳戒態勢を解除し、危険種BKM−1147と交渉を開始します。」

「とりあえず、お話できるってことでオッケーかしら?」


「はい。現在、危険種BKM−1147からの念話のリクエストを受け付けております。」

「つーか、さっきから危険種って何だよ。危険なのは俺らを殺したお前の方だろ。」


「リクエストに回答します。危険種BKM−1147は過去562回接触があり、うち489回はオブジェクトへの攻撃を確認しました。よって、生命体BKM−1147は危険種として登録しております。」

堅苦しい言い方をしているが要するに、過去の人間がコイツに攻撃的だったから、人間を警戒していたってことか。


「ねぇ、危険種云々って私達のことよね?今からあなたと仲良くできないのかしら?私達、あなたと戦いたいわけじゃないの。」


「リクエストに回答します。クロノトロイドβ–F32は、オブジェクトを管理・保護し、最終的にオブシェクト内部を開放することを目的として搭載された人工知能です。オブジェクトを保護する目的で外敵を迎撃することはありますが、クロノトロイドβ–F32が積極的に攻撃や破壊等を行うことはありません。また、クロノトロイドβ–F32は過去の生態データを参照して生命体とコンタクト・または排除の判断を行っています。よって危険種BKM−1147の生態データが更新され『危険種』ではないと判断した場合、積極的にコミュニケーションを取ることも可能となります。」

説明がくどい。

コイツはもっとシンプルに回答できないのか?


「えっーと、つまり危険種が俺ら3人で、黒い物体がオブジェクトで、黒い物体を守っている声の主はクロノトロイドってことで合っているか?」


「リクエストに回答します。準危険種HYF-5098の認識には1点、謝りがあります。準危険種HYF-5098は現時点では危険種ではありません。ですが先述以外の点においては、正しいと言えます。」


「宮藤くんと私達は違う種族として登録されているんだ。この見た目じゃ、当然よね。」


「そういや、さっき『最終的にオブシェクト内部を開放する』っつってたけど、中に何かあるのか?もしかして、お宝?!」

タクトは目をキラキラさせて黒い物体を眺めた。


「リクエストに回答します。オブジェクト内部には生命体SMT-0001が保存されています。」

「生き物が入っているってこと?」


「何の生き物が入ってるんだ?見せてくれよ!」

「リクエストに回答します。現在、オブジェクトの開放条件を満たしていないため、開放することができません。」


「何が駄目で開放できないの?」

「リクエストに回答します。未達成のオブジェクトの開放条件は、現在残り1件です。条件内容は『危険種及び準危険種の個体及び集落が近隣に存在しないこと』です。」


「要するに僕達...じゃなくて俺達がいるから開放できないってことか。」

あぁ〜!もう!まどろっこしい。

要は、この黒い物体に教団が関係している生き物が入ってるってことだろ?

だったらそれを取り出せば、コレの正体がはっきりするはずだ。


俺は、鉱山の跡からタクト達を取り出したのと同じ要領で、黒い物体の中から生命体とやらを取り出した。

....って、アレ?コイツの顔って...。


「えっ?!」

「わっ!」

「きゃっ!」

黒い物体から取り出したソイツを3人の前へ運ぶと、3人はギョッと驚いた。


「システムエラー・J-52!システムエラー・J-52!システムエラー・J-52!.....」

黒い物体を取り出した瞬間、クロノトロイドとやらはうるさい警告音を鳴らしながら、壊れた機械のように延々と同じことを繰り返し喋っていた。

あまりにうるさいので、魔法でクロノトロイドの声を消した。


「ちょっと宮藤くん、魔法で何かするんだったら言ってよ。黒い物体からいきなり何か出てきて、ちょっと吃驚したじゃないの。」

「あ、あぁ....悪ぃ。」

「まぁ良いじゃん。クドージンが前触れもなく魔法を使うのなんて、今更だろ。それより、これって人間だよな?」


3人は俺が取り出したソイツをまじまじと見つめる。

ソイツは、黒い髪に彫りの浅い顔立ちで、パッと見20代後半〜30代くらいの女だった。

女は入院患者のような白くて質素な服を着ていた。


「この人、この目鼻立ちに髪の色って....もしかして、日本人?」

「確かに、そう言われてみればクドージンに似てるな。」

「なんでニホン人を聖ソラトリク教団が保護していたんだ?」

俺達のその女に対する疑問は尽きなかった。

そんな中、カタリーナは女の口に手を当てたり、胸に耳を傾けたりした。


「この人、生きてるわ!多分、寝ているだけだと思う。」

「あの中にいて生きているって....コイツ、本当に人間か?それとも教団に埋められたとか?」

「謎は深まるばかりね。とりあえず、彼女が目を覚ましたら事情を聞いてみましょ。」

「つーか、コイツどうする?このまま放っておいたら野垂れ死ぬんじゃねえか?」


「それもそうね。彼女を保護できる場所を用意しないとね。でもそんな場所あるかしら?」

「俺ん家は狭いし、聖ソラトリク教の教会が近くにあるから無理だな。」

「私の家も、素性の分からない人間を長期間住まわせるのは難しいわ。絶対お父様に反対される。」


タクトとカタリーナが困って沈黙すると、ゼルは何かを思いついたのか、沈黙を破るように話し始めた。


「それなら俺が、この女と黒いのをまとめて預かってやるよ。」

「えっ、いいの?」

「任せとけ。それに俺には研究者の知り合いがいるから、ついでにこの黒い物体についても調べてやるよ。」

研究者の知り合いとは、シヴァのことだろうな。

ということは、ライトニング寮にあったゴミ屋敷に連れて行くのだろう。


ゼルは女と黒い物体を軽々と持ち上げると、大きな翼を羽ばたかせて空へ飛んだ。


「それじゃあな。」

「あっ!待って宮藤くん!」

そのままゴミ屋敷へ向かおうとしたゼルだったが、カタリーナに引き留められて再び地面へ降りた。


「何だ。なんかまだ用があんのか?」

「お願い!最後に、魔法で鉱山を元通りにして!」

「は?」

「クドージン、俺からも頼む!鉱山がこのままだったら、明日には大騒ぎだ。それに最悪、俺達が鉱山を破壊した犯人だと思われちまう。」


そんなの知るか。

お前らの自業自得だろ。


「全く、仕方ねぇ奴らだな。直せばいいんだろ、直せば。」

ゼルもゼルで安請け合いするな!

俺が何でも引き受けると思ったら大間違いだ。

それっぽく鉱山跡に手なんか掲げても無駄だからな!


「....あれ?」

「どうしたクドージン。早く直してくれよ。」

「もしかして宮藤くんでも、鉱山を直すのは無理なのかしら?」

「そっかー。お前にもできない魔法って、あるんだな。」


はぁ?

タクトもカタリーナも喧嘩売ってんのか。

コイツらの思い通りに動くのは癪だが、コイツらに舐められるのはもっと不愉快だ。

不服だが、俺は鉱山を一瞬で元通りにしてやった。


「おい。誰ができないって言った?」

「なんだ。普通に直せるじゃん。手間取っているから変な心配したじゃねぇか。」

「もう、宮藤くん。じれったいことしないでよ。」

...やっぱり直してやるんじゃなかった。


「とりあえず、これで用は済んだか?」

「えぇ。ありがとう、宮藤くん!」

ゼルは『じゃあな』と言うと、女と黒い物体を持って空へと羽ばたき、そのままライトニング領方面へと飛んでいった。


...そういえばゼル、この後どうするつもりなんだ?


タクト達よりも先に、元の姿に戻って宿に帰らないと怪しまれるんじゃねーか?

まぁ、その辺は俺に関係ないからどうでもいいや。


タクト達はもう宿に帰るみたいだし、俺はタクト達を観測するのをやめて、そのままベッドで目を瞑って眠りに入った。

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