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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【57】第14話:キメイラ帝国旅行(3)

獣人のいた魔道具屋を出て、しばらく繁華街をぶらぶらと歩いていると、デニスの店とやらの前までやってきた。


デニスの店にはドラゴンの生首が堂々と飾られていて、その派手さに、一瞬で目が釘付けになった。


「うわぁ、凄い!コレって、ドラゴンの剥製?ハンティング・トロフィーってヤツかしら?」

「あぁ、コイツは俺がこの前狩ったドラゴンの剥製だな。」


「えぇ!このドラゴン、ゲイルさんが倒したんですか?!」

「まぁな。デニスの店はドラゴン料理を出してるんだが、食材のドラゴンがなかなか入荷できないらしくてな。代わりに狩ってきてやったってワケさ。」


へぇ、ドラゴン料理なんてものがあるのか。

ドラゴンって鱗がゴツくて硬いイメージがあるが、頑張れば調理できるんだな。

どんな味がするのか、少し興味が湧いた。


「デニスさんのお店って、ドラゴンが出るんですね!」

「ドラゴンだけじゃねえぞ。スライムのジュースだったり、マンドレイクのサラダだったり....いわゆる、典型的な獣人料理店だな。」


「ニホンの料理も変だったけど、獣人の料理も変わってるな!」

「スライムやマンドレイクまで食べるなんて、さすが異世界だわ。」


獣人料理に期待しながら、俺達は店の中へと入った。


店の中は、お昼時だからか沢山の人で賑わっていた。

獣人料理だからか、客の半分くらいは獣人だった。

人間の俺達が入ってきたからか、客の何人かは物珍しそうに俺達をじっと眺めていた。


「はいはい!いらっしゃいませ!」

店に入るなり現れた店員は、髪を覆うように帽子を深く被っていて、清潔感のある服装をしていた。

帽子は2方向に不自然に尖っていたから、きっと帽子の中には犬や猫のような耳があるのだろう。


「よっ!」

「あっ、ゲイルさんじゃないですか。今日はご友人と来られたのですか?」

「友人ってコイツらのことか?コイツらはホリー坊ちゃんと、そのお友達だ。」


「ホリー坊ちゃん?」

「初めまして。僕がホリー・コトナカーレです。」

「ホリー坊ちゃんはドーワ侯国の君主の息子って言えば分かるか?」

「えぇ!ドーワ侯国の君主の、ですか?!」


それを聞いて、店員は萎縮するように背筋をピンと伸ばした。


「す、すみません!ウチは見ての通り普通のお店なので、そんな高貴なお方が満足できるかどうか....」

「いえいえ、そう身構えなくても大丈夫ですよ。こちらのお店のドラゴン料理、楽しみです。」


「そういえば、デニスは今日もいるよな?」

「はい!店長はいつも通り、厨房で料理してますよ。」

「じゃあデニスに、会わせたい客がいるって伝えといてくれねぇか?『ライトニング領の国境壁で会ったガキ』って言えば、伝わるはずだ。」


「分かりました!では、好きな席に座って待っててください。」

俺達は人数分座れる席を探したが、多人数用の席が見つからない。

するとゲイルは、空いている2人客用の机と椅子を持ってきて、それを並べて8人分の席を用意した。


俺達が席に座ってメニューを決めると、タイミングを見計らったように先程の店員が帰ってきた。


「ゲイルさん、お待たせ!店長は今は調理で忙しいから、落ち着くまで待って欲しいとのことです。」

「そうか、わかった。ついでに注文して良いか?」

「はい!大丈夫です!」


注文してしばらくすると、頼んだ料理が順番に運ばれてきた。


「おぉ!コレがドラゴンステーキか!意外とうまそうだな!」

俺・タクト・ゲイル・ゼルの4人は、この店の看板メニューであるドラゴンステーキを注文した。

格子のような焼き目のついたソレは、パッと見他だけでは普通のステーキと変わらないように見える。


「わぁ...。ドラゴンスライムシチューって、なんというか、独特...!」

ライラとカタリーナは、ドラゴンスライムシチューを注文していた。


シチューと言っているが、クリームシチューやビーフシチューとは全然違う。

毒毒しく感じる藍色のスープに、濡れた犬のような強烈な匂い。

このシチュー、絶対ハズレだ。


「これがドラゴンの刺身かぁ。まさか獣人料理にも刺身があるなんて、驚きだね。」


殿下とホリーが頼んだのは、ドラゴンの刺身だった。

皿の上にはドラゴンの頭部が飾りのように置いてあり、赤黒い肉の塊が部位ごとに別れて、綺麗に盛られていた。

ドラゴンの刺身(こっち)も意外と美味しそうだな。


他の料理を覗き見しつつも、俺は早速、ステーキをナイフで切る。

すると中から油がジュワッと溢れ出てきた。

ステーキは生焼けで、中は刺身肉のように赤黒かった。


切った肉を、特製のスライムソースにつけて口に入れる。

すると口の中に、牛や豚とは違った、脂の甘みが口の中に広がった。

その上、スライムソースの独特な酸味とマッチしていて、脂っこさを感じさせない。


これだったら、いくらでも食べられそうだ。

あまりの美味しさに、タクトはステーキを追加注文した。


「このシチュー、見た目はアレだけど、凄く美味しい!」

「刺身もなかなかうまいよ!ユッケにして食べても美味しいかも!」


刺身はともかく、シチューは意外だ。

もしかして、強がりで言ってるんじゃねえか?

ドラゴン料理はどれも好評で、小一時間後には全員、残すことなく食べ切った。


「ドラゴン料理、美味しかったね!」

「おぅ、そうだろ?人間にも気に入ってもらえて、獣人としては嬉しい限りだ。そういえばデニスが『彩りスライムパフェ』って新メニューを作ったらしいんだが、嬢ちゃん達、食べてみねぇか?」

「是非、食べたいです!」


女二人は目を輝かせて即答した。

普通に俺も食いたい。むしろ何故、女限定で聞くんだ?


「スライムパフェ、僕も食べたいです!」

「僕も!」

俺の後に続くように、ホリーも意見した。


「おぅ!もちろん、いいぜ。」

ゲイルは、意外そうな顔をしながらも笑顔で承諾した。

そして店員を呼んで、スライムパフェを注文する。


小一時間待つと、パフェを持った店員がこちらにやってきた。

その店員は、さっきまで対応していた店員ではなかった。


「お待たせしました、彩りスライムパフェです。」

店員はパフェを順番に机に置く。

その店員は、尻尾の生えた中年の獣人だった。

他の店員同様、髪を隠すように帽子を被り、尻尾はクルクルと覆うように布で巻かれていた。


「あっ!あなたは、もしかして....!」

「嬢ちゃん達、お久しぶり!俺はデニスって言うんだけど、覚えてる?」

コイツが例の獣人か。

見窄らしい格好をしていたあの時の面影が一切ないからか、一瞬では分からなかった。


「はい、覚えています!」

「デニスさん、元気そうで良かったです。」

「それもこれも、あの日嬢ちゃん達が助けてくれたおかげだ。ありがとな。」

ライラ達とデニスが笑顔で話しているのを見て、ゲイルもつられて笑顔になった。

それにつられて、殿下やホリーまでもが笑顔になる。


「そういえば、デニスのおっさん以外にも逃げた亜人がいたよな?そいつらは元気なのか?」

「あぁ。アイツらも元気だ。みんな王都で働いてるぜ。」


「王都か。この辺だったら、ついでにお前らにも紹介してやろうかと思ったが、あそこはダメだな。人間差別が露骨すぎる。」

「まぁ、俺らみたいに他国から亡命してきた亜人でも働きやすい場所だからな。アイツらが王都で暮らすのは普通さ。むしろ、人間を呼び込もうとしているこの街で商売している方が変なんだよ。」

デニスの自虐に、ライラ達は苦笑いした。


「そうだ!あの時のお礼がまだだったな。ほらコレ。」

デニスはポケットから、小さな袋を取り出してタクトとライラとカタリーナに渡した。

タクトたちは袋を開けると、中にはクッキーが数枚入っていた。


「わぁ!おいしそう。」

「そいつは良かった。ついでに今日のお代もタダにしておくぜ。」

「タダ飯食えるなんて、今日はついてるぜ!これも、嬢ちゃんたちのおかげだな。」

「おっと、ゲイルの旦那は別だぞ。旦那は景気がいいんだから、ちゃんとお代は払っていけよ。」

「ちぇっ。わかったよ。」

場は、和やかな雰囲気に包まれた。


「本当は、あの時の黒髪の兄ちゃんにもお礼したかったんだけどな。」

「えっ?黒髪って、クドージンさんのことですよね?デニスさん達と一緒に帰ったんじゃないんですか?」


げっ!

まずい。あの時、すぐにキメイラ帝国から消えたのがバレたら怪しまれる。

最悪『クドージン(オレ)がキメイラ帝国に住んでいるのは嘘』だとバレかねない。


「デニスさん、パフェ美味しかったです!おかわりください!!」

俺はライラのセリフをかき消すように、大きな声で注文した。

ただ、パフェが美味しかったのも、おかわりが欲しいのも事実だ。


「はいはい!兄ちゃん、食いっぷりがいいね。今日は奢りだから、たくさん食ってけよ!」

パフェが好評で嬉しかったのか、デニスは朗らかな笑顔で厨房へと戻っていった。


うまく誤魔化せたか?

ライラの様子を確認すると、『何かが引っ掛かる』と言わんばかりの顔をしていた。


「そういえば宮藤くんって......」

「デニスさん、尻尾が布で覆われていましたけど、怪我でもしたのですか?」

カタリーナが余計なことを喋り出すのを察して、無理矢理話題を変えた。


「あぁ、アレは別に怪我じゃねえよ。俺達獣人は、人間や他の亜人に比べて毛深いからな。『獣人の料理は毛が混じって不衛生だ』って偏見があるんだ。だから獣人以外の客に安心して食べてもらえるように、ああやって毛が混ざらないように対策してんだよ。」


「なるほど、そういえば別の店員さんも、帽子を目深に被っていましたよね。アレはそういうことだったんですね。」


「俺達獣人からすれば、人間も魔人もエルフも髪の毛が生えているのに、なんで俺達だけ不衛生とか言われなきゃいけねえんだって、腹が立つけどな。」

「確かに、そうですね。」


「今でこそ獣人料理はこの国で認知されてきているけど、ひと昔前はゲテモノ料理扱いだったからな。少しでも獣人料理を食べてくれる奴を増やすには、そういった小さな配慮が必要だったワケだ。」

「獣人料理、どれも美味しかったです。食べないのがもったいないくらいです。」

「おうよ!獣人料理は最高だろ?坊ちゃん達、国に帰ったら獣人料理の口コミ、よろしくたのむぜ。」


ゲイルのおかげでいい感じに話が逸れた。

追加のパフェが来るのを楽しみに待っていると、突然、店の扉を勢いよく開く音が響いた。

音がした方を見ると、大柄で険しい顔をした赤髪の男が立っていた。


男の眼は魔人特有の赤い瞳で、扉より背が高いからか、少し頭を下げて店の中に入ってきた。

この店の扉は、身体の大きいレックス殿下やタクトですら、頭を下げなくても入れるくらいには大きい。

にも関わらず、頭を下げないと入れない時点で、男は殿下達より大きいということが、座っていても分かる。


男が大きくて威圧感があるからか、場の空気が引き締まるのを感じた。

それにしてもコイツ、この威圧的な眼、どこかで会ったことがある気がする。


「あっ...!アラン様!」

知り合いなのか、ゲイルは男の顔を見た途端、背筋をピンと伸ばして砕けた態度を改めた。


「『様』?」

「おっと......アラン、さん。お疲れ様です!」

ゲイルは男に頭を下げて敬意を示す。

たったこれだけのやり取りで、アランと呼ばれた男がゲイルより目上の人間であるというのが伝わってくる。

アランはパッと見20代半ばくらいに見えるが、元騎士団長のゲイルより立場が上なんて、意外だ。


「ゲイルさん、この人は?」

「え?あぁー、えっと......この人は、ほらアレだ。俺の職場の上司で、アランさんだ。」

ゲイルは慌てた様子で、アランを紹介する。

若干、胡散臭い。


「アラン、さん?どこかで聞いたような....。」

ゲイルの話が気になったのか、カタリーナは訝しげにぶつぶつと独り言を呟いていた。


「ホリーの坊ちゃんも、俺らが一緒に仕事しているのを見たことがあるよな?」

ゲイルはホリーに目配せをした。


「...はい。以前、ゲイルさんにお会いした時、アランさんと一緒にお仕事をされていました。」


ゲイルと一緒に仕事をしているってことは、騎士団関係の職場なのか?

いや、元・騎士団長って言っていたから、ゲイルの今の職場は騎士団と全く関係ないのかもしれない。


「意外だな、ゲイルがホリー卿と一緒にいるなんて。そこにいる人間たちは知り合いか?」

アランは人間の俺達を鋭いまなざしで見る。

気のせいか、タクトとライラ、それとゼルの顔を見て、一瞬だが顔を歪めたように見えた。


「こいつらは、ドーワ侯国でバカやってた息子に、渇を入れてくれた恩人です。」

「みんな、僕の学校の友人なんです。」

ホリーとゲイルは、簡潔にレッドオーシャンと揉めた時のことを説明した。


「そうか。と言うことは、ゲイルは今、特に予定がないのか。」

「はい。とはいえ休みがまだ残っているし、折角だからお礼も兼ねて、コイツらをキメイラ帝国に案内したってわけです。」


「ところでアランさんは、今からお昼ですか?」

「いや、昼食はもう済ませた。ここに来たのはゲイルに会うためだ。ここに来れば会えると思って来た。」

「俺に、用事っすか?」

アランの真剣な面持ちに、ゲイルは息を呑む。


「....やはり気にしなくていい。客人をもてなしている最中に来て、悪かった。」

「別に私達のことは気にしなくていいですよ!お仕事なんでしたら、そちらの方が大事だと思いますし。」


「気ぃ使わせて悪いな、嬢ちゃん。そういうことなんで、アランさん、用件はなんスか?」

用件を聞かれたアランは、なぜかまたタクト達を凄い剣幕で睨みつけた。

そして三人がアランを見つめると、視線をゲイルの方へと戻して、話し始める。


「あまり大事(おおごと)にしたくないから、静かに聞いてくれ。魔王軍管轄魔物展示会の魔物が逃げ出した。回収するのを手伝って欲しい。」

アランの話を聞いて、ゲイルは飛び跳ねそうなくらい驚いたが、言われた通り声も出さずに黙って頷いた。


「そういうことなら、俺達に任せろ!なんたって俺は...」

「そんな話、部外者の僕たちの前で言っても良かったのですか?」

タクトの話を遮るように、ホリーはアランに質問した。


「構わない。むしろそこの青年にも手伝ってもらいたいから、あえて言った。」

アランは視線をタクトの方へと向けた。


「ゲイルの息子は、そこそこ腕の立つ奴だと聞いている。そんな奴を倒した男なら、十分な戦力になると思ったからな。」

「へへっ、分かってるじゃねえか!」

タクトは実力を評価されて、誇らしげに笑った。


「お兄ちゃんもだけど、殿下やカタリーナちゃんも凄いよね。なんせ、魔物村で魔物に襲われた時も、次々と薙ぎ倒していたし。」

「それにホリーくんの特殊魔法も便利だよね。むしろ魔物を回収するんだったら、彼のバリアの方が便利なんじゃない?」


「確かに!それなら、魔物の捕獲は僕に任せてください!」

ホリーは胸を張って、自信満々に答えた。


「それは心強いな。だったらついて来てくれ。」


えぇ...。

さっきパフェを追加で頼んだばっかりだぞ。

せめてパフェを食ってからにしてくれ。

とは思ったが、話の流れ的にパフェを食ってる場合じゃ無さそうなので、俺は泣く泣くパフェを諦める。


デニスに事情を説明して会計を済ませると、俺達は店を出てアランについて行った。

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