【50】第13話:ドーワ侯国旅行(3)
ポップカルチャービルの地下1階。
そこには、日本でよく遊んだゲームセンターそのものが存在した。
クレーンゲームに太鼓の音ゲー、モグラ叩きのゲーム、レースゲーム、メダルのゲーム、プリクラ....。
どれも久々に見る。
早速、両替機で小銭を作り、どのゲームをするか考えながら見て回る。
すると、日本にいた頃によく遊んだ「鈍器の達人」というゲームを見つけた。
鈍器の達人は、備え付けのバットでパンチングマシンをタイミングよく叩くゲームだ。
こっちの世界でのゲーセンデビューはこのゲームにするか。
俺はゲーム機に小銭を入れて、遊び始めた。
「....うっしゃ!!」
鈍器の達人で遊んで、小一時間が経過した頃。
日本でよく遊んでいたのもあってか、あっという間に新記録を更新した。
次でラストにするか。
ゲーム機に小銭を入れて、バットを構える。
その時、後ろを通っていた人物にバットがぶつかってしまった。
「痛っ!」
「あ、すみません。」
振り返るとそこには、屈強でガラの悪い男が数人いた。
男どもは全員、白目部分が黒く、瞳が赤かった。
そして瞳と同じくらい、真っ赤なスカーフを身につけていた。
ホリーの言っていた、レッドオーシャンの魔人達ってところか。
「テメェ!謝って済むと思ってんのか!」
「あぁー!痛ぇわ!こりゃ骨が折れたな。治療費として有金全部よこせ!」
俺とぶつかった男は、俺の胸ぐらを掴んで睨みつける。
そんなに元気だったら絶対、骨なんか折れてないだろ。
「そうなんですね。でしたら回復魔法で治しましょうか?」
「はぁ?!ふざけてんのか!口ごたえせずにさっさと金出せや!」
「調子乗ってんじゃねえぞ!クソガキが!」
胸ぐらを掴んでいた男は、俺の顔を殴ろうとした。
俺はその拳を片手で受け止めると、トマトを握り潰す要領で、男の手を握り潰した。
そのせいで、男の汚い血が辺りに飛び散った。
「ぅあああっ!!」
男の断末魔の叫びが、ゲームセンター中に広がる。
「て、テメェ!何しやがった?!」
男達はまるで幽霊でも見たかのように、顔を青ざめて俺を見た。
「何って、殴られそうになったから自己防衛をしたまでですよ。」
「ふざけんな!」
「どこのチームのヤツだよ、テメェ!」
どこのチームって?何の話だ?
「僕はどこのチームでもありません。」
心当たりがないから、一応否定する。
「馬鹿にしやがって。マジでムカつく!」
「だったら何者だ?カタギじゃねえだろ。」
「そうですね...。『厄災の魔王』って言ったらどうします?」
俺は冗談半分に正体を明かしてみた。
すると、さっきまで青ざめていた男達は、みるみるうちに顔を赤くして怒り出した。
「はぁ?厄災だぁ?!」
「あんなクソ野郎を『魔王』呼びすんじゃねえよ、ゴミカスがぁ!」
「テメェ、ぶっ殺してやる!」
俺の言葉にブチ切れた男達は、一斉に殴りかかってきた。
あぁ、うぜぇ。
俺は手刀で、目の前の男達の首と胴を斬り離した。
男達は、首の断面から噴水のように勢いよく血を吹き、ゆっくり崩れ落ちるように倒れた。
「ひ、ひいぃぃぃ!!」
「化け物ぉぉ!!」
それを見た残りの奴らは、怯えて一目散に逃げて行った。
あーあ。
汚い返り血のせいで、服もゲームセンターも汚れたじゃねえか。
しかも鈍器の達人、お金入れていたのに、コイツらのせいで全然遊べなかったし。
でも懐かしいな、この感じ。
日本にいた時も、たまにゲームセンターでカスに絡まれたな。
で、そいつら殴って、倒れている間にサイフから金を奪って、その金でまた遊んだりしたっけ。
金が有り余っている今じゃ、コイツらのはした金なんざ一ミリも興味ないけどな。
俺は服とゲームセンターを魔法で元通りにし、もう一回鈍器の達人をプレイした。
遊び終わって、違うゲームをしようと歩き始めた時、さっき殺した男達が視界に入った。
...この死体をライラが見たら「人を殺すなんて、ひどい!」って言って怒るんだろうな。
アイツはぬるい環境で育ったからか、ちょっとしたことで酷いだの何だの言ってくる。
一人や二人、殺したって別に大したことじゃないだろ。
それにカツアゲしてくるクズなんざ、殺した方が社会にとっても有難いだろ。
ライラの小言は、考えただけでも鬱陶しい。
「フレイくーん!いるー?」
「っ?!」
すると突然、ライラの声が聞こえた。
どうやら俺を探しているらしい。
俺は慌てて男達を蘇生し、何事もなかったかのようにゲームで遊び始めた。
「あっ!フレイくん、いた!」
「お前、まだ遊んでんのか?」
呼ばれて振り返ると、ライラだけでなくタクトもそこにいた。
「あれ?二人とも、買い物は終わったんですか?」
俺は素知らぬ顔で、ライラ達に話しかける。
「うん!素敵な服がたくさん買えたよ!買った服は、店員さんがあとでホリー君の家に届けてくれるんだって。」
「メイドキッサも、巨乳で可愛い子ばっかで最高だったぞ!今度フレイも一緒に行こうぜ!」
「遠慮しておきます。」
「なんだよ、つれねぇな。」
「ところで、フレイくん。あそこで倒れている人たちって、なに?」
ライラが指さしたのは、俺がさっき殺して蘇生した奴らだった。
「あれは......あの人たちは、ここで殴り合いの大喧嘩をして倒れた人たちです。多分、ゲームでなにかトラブルでもあったんじゃないですか?僕は遠くから見ていただけなので知りませんが。」
俺はとっさに嘘をついて誤魔化す。
...別に後ろめたいことをしているワケじゃないのに、なんで俺は誤魔化そうとしているんだ?
「へぇー。迷惑な奴らだな。」
全く、その通りだ。
「それより、僕もそろそろ終わろうと思っていたところなので、移動しませんか?」
「そうだね。」
「だな。」
俺はボロが出る前に、ゲームセンターから離れるように誘導した。
「もうそろそろ約束の時間だし、このまま集合場所まで行こっか。」
「そうですね。」
俺達3人は集合場所へと移動し、他のメンバーと合流した。




