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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【49】第13話:ドーワ侯国旅行(2)

「わぁ...!凄ぇ!」


「ドーワ侯国に入った時も異国って感じがしたけど、ニホンアイランドもドーワ侯国とはまた違った感じがするね。」


ニホンアイランドに入るや否や、タクト達は見慣れない世界に興奮して、キョロキョロと辺りを見回した。


「ニホンアイランドは、ダイフク商会の会長の故郷・日本をモデルにしたレジャー施設なんだ。ドーワ侯国やディシュメイン王国とも違った感じなのもそのせいだよ。」

「故郷の日本をモデルにって....やっぱりダイフク会長も日本人だったのね。」


地味な色合いの、瓦屋根の建物。

戦国時代の武将が住んでいそうな、大きな城。

着物を着て接客するスタッフ。

ニホンアイランドは『これでもか』というくらい、日本のモノで溢れていた。


「ダイフク会長とやらは暇人だね。こんな無駄に金だけがかかりそうな施設を作るなんて。もっと他に儲かりそうな商売をすればいいのに。」

そう小言を呟いたのは、ホリーの姉のミラだった。


ダイフク会長からもらったニホンアイランドのフリーパスが一枚多かったことから、『せっかくだからホリーくんのお姉さんも一緒に遊ぼう!』という流れになって、今に至る。


「....ニホンアイランドの収益自体はそこまで多くはないけど、利益は出ているって、この前ダイフクさんが言ってたよ。それに、ニホンアイランドのおかげでドーワ侯国に訪れる観光客が増えて、結果的に観光業や飲食業といった他の商売での売上も上がったんだって。」

ホリーはダイフク会長の気持ちを代弁するかのように、ミラの質問に答えた。


「あとニホンアイランドを作ったのは、同郷の人を呼び寄せるためでもあるらしいよ?」

なるほどな。

だから『ニホンアイランド』なんて露骨な名前なのか。


「そもそもニホンって、どんなところなんだろうね?」

「それなら、カタリーナが詳しいと思うよ。なんせカタリーナの前世はニホン人だからね。だよね、カタリーナ?」

唐突に前世のことをバラされたカタリーナは、殿下の発言に一瞬凍りつく。


「えっ?」

「あっ!ごめん。もしかして、言ったらいけないことだった?」

カタリーナが固まっているのを見て、殿下は慌てて謝罪する。


「えーっと....。別に、言っても問題はありません。」

「そっか。良かった。」

「ただ、言っても信じてもらえないと思ったので、今まで黙っていました。」


そりゃそうだ。

カタリーナの夢を覗いた殿下や、同じ境遇の俺じゃなければ到底信じられない。

頭のおかしい人としてスルーされるのが関の山だろう。


「私は、信じるよ!だってカタリーナちゃん、昔から大人っぽかったもん。それに、私たちの知らない言葉とかをたまに使っていたし。」

カタリーナが大人っぽいかはさておき、ちょくちょく日本(ぜんせ)の知識が漏れていたのは確かだ。


「それに、前世の記憶を持ってるヤツに会うのは初めてじゃねーしなぁ。」

「えっ?!」

「ほら、クドージンのことだよ。アイツだって一応、シヴァおじさんの魔術で転生してんだろ?ってことは、アイツも前世の記憶があるってことなんじゃねえの?」


「そっか。言われてみれば、確かにそうだね。」

「アイツが前世の記憶を持っているくらいだから、今更2人目が現れても、別に疑わねえよ。」

「そうなの?それなら良かったわ。」

カタリーナは、ホッと胸を撫で下ろす。


「あ。そういえば宮藤くんの名前が出たからこの際言うけど、彼も前世は日本人よ。」

カタリーナが発した情報に、タクトとライラは、周囲の人を振り向かせるくらい大きな声を出して驚いた。


「はぁ?!お前ソレどういうことだよ!」

「そのままの意味よ。彼に直接聞いたから、間違いないわ。」


「でもクドージンさんの前世って、厄災の魔王でしょ?おかしいよ、どういうこと?」

「その辺は私も詳しくは知らないのよね。これはあくまで私の考えだけど、宮藤君は最初、日本人として生まれたんじゃないかしら?その後に生まれ変わったのが、厄災の魔王としての彼だと思うの。」

その通りだ。

と言いたかったが、正体がバレるので答えなかった。


「ちなみに、宮藤迅って名前と人間の時の姿は、日本にいた時のものよ。」

「そうなんだ。だから彼は2つの姿があったんだ。でもクドージンがニホンで生まれた時の名前なら、厄災の魔王だった時の彼って、なんて名前だったのかな?もしかして『厄災の魔王』が名前だったの?」

「それは私にも分からないわ。」

それは俺にも分からない。

少なくとも『厄災の魔王』ではないと思う。


「話は戻すけど、確か日本がどういうところかを聞きたいのよね?一言で言い表すのは難しいから、二ホンアイランド内のお店を巡りながら、日本についての説明が必要そうな時に話す感じでもいい?」

「もちろんだよ!カタリーナちゃん、色々教えてね!」


「そういえば、あそこにニホンアイランドの全体マップがあるから、見てみようよ!」

「そうだね!」

ホリーが指差した方向には地図の貼られた掲示板と、パンフレットが置いてあった。

俺達は掲示板の前まで移動して、地図を確認する。


「今いる場所は大江戸村だね。昭和街に京の都、道産子村の里にうちなー町、ポップカルチャービル....色々あるけど、どこに行く?」

「カタリーナちゃんは、どこがいいと思う?」

「そうねぇ。私はポップカルチャービルが気になるわ。ゲームとか漫画がいっぱいありそうだし。」


「あー、ポップカルチャービルか...。」

カタリーナの意見に、ホリーは渋い顔をした。


「どうしたのホリーくん?」

「ホリーは他の場所に行きたいのか?」

「いや、別に良いんだよ?良いんだけど、最近あの辺にはレッドオーシャンの魔人が出歩いてるって噂があるしなぁ。」


「レッドオーシャン?」

「なに、その供給過多っぽい名前は。」


「ドーワ侯国には『カラーギャング』って呼ばれる、荒くれ者集団がいくつかあるんだ。レッドオーシャンは、いくつかあるカラーギャングのうちの一つだよ。カラーギャングは、いろんなお店から用心棒代として多額のお金を請求したり、風俗店を経営してたり、人身売買をしてたり....とにかく、危ない集団なんだ。」

「それカラーギャングと言うより、ヤクザでしょ。」


「カラーギャングにはそれぞれチームカラーがあって、彼らは常に、自分達のチームの色のスカーフを身につけているんだ。それに自分たちの陣地のお店にも同じ色のスカーフを巻いて、テリトリーをアピールしているよ。だから『カラーギャング』なんて言われてるんじゃないかな?」


「そんなに危ない集団なんだったら、捕まえたら良いんじゃない?」

「僕の父さんも何度も取り締まろうとしたけど、どのチームも強者揃いな上にメンバーが多いから、なかなか取り締まれないんだ。かといって、元勇者パーティの一人(リファルさん)みたいな明らかに強い人が取り締まろうとすると、一目散に逃げられるし。ホント、彼らには困っているんだ。」


よほど頭を抱えている問題なのか、ホリーは大きなため息をついた。


「とにかく、赤・青・黄・緑、それとピンクのスカーフを身につけている人達を見かけたら、近づかないように気をつけて。」

なんか戦隊ヒーローみたいな色ばっかだな。


「ポップカルチャービルにいるレッドオーシャンは、赤がチームカラーだから、赤いスカーフの人を避ければ多分大丈夫だよ。」

それは大丈夫と言えるのか?

まぁ、レッドオーシャンだか何だか知らないが、突っかかって来たら返り討ちにすりゃ良いだけか。


俺達はとりあえず、ポップカルチャービル方面へと歩いた。


「着いた。ここがポップカルチャービルだよ。」

「ここがビル?って言うより、五重塔じゃない?」


目の前の建物は『ビル』という言葉とは裏腹に、瓦屋根が何重にも重なった寺のようだった。

その建物の扉の前まで行くと、扉は自動で開いた。

中に入るとそこは、かつての日本のショッピングモールのように、たくさんの店が営業していた。


「うわぁ!建物の中に、こんなにたくさんのお店があるなんて、凄い!」

「ここにビル内の地図が貼ってあるよ。本屋に映画館、ブティックにゲームセンター、メイド喫茶、屋内フェスにお笑い劇場....色々あるよ。みんな、どこがいい?」


「どこが良いって言われてもなぁ。」

「どこが、どんな場所なのかが分からないから、決められないよ。」

「だったら私の出番ね!」

カタリーナはみんなに、ビル内の施設を順番に説明した。


「...っと、説明はこれで終わりかな。みんな、どこがいい?」

「私はブティックがいい!ニホンの服って可愛いのが多いもん!」


ライラには悪いが、ブティックは一番あり得ない。

服なんざ、使用人が見立てたものを着ればいいだろ。


「俺は断然、メイドキッサだな。可愛い女の子に会えるんだから、コレ一択だろ。男どもは同じ意見だよな?」

お前と一緒にするな。


「僕はゲームセンターが良いです。」

同じと思われたら不愉快だから、速攻で否定した。


「僕は屋内フェスかな。ニホンの音楽がどんなものなのか、聴いてみたいし。」

「僕も同じく。」

「僕はお笑い劇場に行きたいかも。今日は好きな芸人さんが出るらしいし。」


タクトと同じと思われたくないのは、俺だけではなかったらしい。

殿下たちも、すぐさま行きたい場所を主張した。

屋内フェスもお笑い劇場も、あまり興味はないが、メイド喫茶よりはマシだ。


「ちっ。裏切り者どもめ。」

タクトは恨めしそうな顔で、俺達を睨みつけた。


「私は本屋さんに行きたいわ。漫画ってウチの国じゃなかなか売ってないし。」

「同じく、本屋希望。」

まだ意見を言っていなかった2人は、同じ場所を希望した。

本屋はナシよりのナシだな。

勉強以外でわざわざ文字の羅列を読む気には、到底なれない。


これで一応、全員の意見が出揃ったな。

俺はゲームセンター。

タクトはメイド喫茶。

ライラはブティック。

レックス殿下とゼルは屋内フェス。

カタリーナとミラは本屋。

ホリーはお笑い劇場。


...全然まとまりがないな。


「どうします?誰の意見を採用しますか?」

「みんな行きたい場所が違うし、せっかくだから各々が行きたい場所に行くのはどう?集合場所と時間だけ決めてさ。」


「「「賛成!」」」


ホリーの意見に異を唱える者はいなかった。


こうして各自、自分の行きたい場所で遊ぶことにした。

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