表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/145

【36】第11話:永久睡眠(3)

医務室に着いた俺達は、早速、養護教諭にカタリーナの容態を見てもらった。

倒れた原因は考えるまでもない。

「殿下心酔病」だ。

コイツはいつも殿下が絡むと暴走するから間違いない。

きっと倒れたのは末期症状だからだ。


まぁ、要するに大した病気じゃないってことだ。


養護教諭はカタリーナの容態を確認すると、険しい顔をしながら俺たちの方を向いて話し出した。


「皆さん、カタリーナさんが倒れた時の様子を伺ってもよろしいでしょうか?」

「はい。カタリーナと僕達は他愛もない会話をしていて、その会話でカタリーナが興奮して倒れて、そこからなかなか起きないので医務室まで連れてきました。」


「カタリーナさんの足元に、術式が浮き上がったような痕跡はありましたか?」

「いえ。特に変わったことは起きていませんでした。」

「では、倒れる直前にカタリーナさんが何かを手にしましたか?」

「いえ、何も。」


「すみません、それらの質問はカタリーナと、どう関係しているのですか?カタリーナの容態は大丈夫なのでしょうか?」


「....詳しくは不明ですが、カタリーナさんは永久睡眠(エターナルスリープ)をかけられている可能性が高いです。」

「えっ?!」

養護教諭が下した診断結果に、まるで時が止まったかのようにその場が凍りついた。


「少なくとも、カタリーナさんが眠っている原因は魔術であることは判明しています。魔術反応が強いことから永久睡眠(エターナルスリープ)のような強い催眠魔術が使われている可能性が高いです。」


永久睡眠(エターナルスリープ)って、大して催眠効果のない魔術だろ?

そこまで深刻になるような魔術じゃないだろ。


「眠らせるだけの魔術でしたら、カタリーナさんが起きるのを待てばいいのではないのでしょうか?」

「ただの催眠魔術であれば、そのうち起きるかもしれません。ですが永久睡眠(エターナルスリープ)のような強力な魔術の場合、術者が解除しない限り、死ぬまで眠り続けます。」


「でしたら、魔術で起こせば良いのでは?眠らせた人を起こす魔術って、ありましたよね?」

「魔術で無理に起こすのは危険です。強力な催眠魔術の場合、魔術にかかった人間が望む夢を見せて、意識を夢の中に閉じ込めてしまいます。その状態で無理矢理魔術で起こすと、意識は永久に夢の中に閉じ込められたままになり、催眠魔術をかけた者でも解除が不可能になってしまいます。」


思ったより、ややこしい魔術だったんだな。


「では、カタリーナは永遠に眠ったままなのですか?」

「カタリーナ様を助ける方法はありませんか?」


さっきの説明を聞いたからか、殿下とアリーシャは瞳を潤ませて狼狽える。


「カタリーナさんを助けるには、術者を特定して解除させるしか方法はありません。」


そんなアホな。

自力で起きればいいだろ、自力で。

昔、永久睡眠(エターナルスリープ)をかけられた時、「起きたい」って強く願ったら普通に起きれたぞ?


「カタリーナさんが自力で目覚める可能性は、本当にないのですか?」

「あり得ません。自力で起きるには、『夢から覚めたい』と強く願う必要があります。ですが先程説明した通り、強力な催眠魔術の場合、魔術にかかった人間が望む夢を見せます。たとえ夢だと分かっていても『ずっとここにいたい』と思わせるくらい依存性の高い夢なのです。この夢は意思の強い者でも起きることができないくらい、依存性が高いのです。ですので自力で起きるのは不可能、と考えてください。」


そんなにいい夢か?

永久睡眠(エターナルスリープ)をかけられた時、胸糞悪い夢しか見なかったが?

養護教諭の説明に、今ひとつ納得ができない。


「では、もし術者に解除させることができなかったら….」

「カタリーナさんは眠ったまま、いずれ息を引き取ることになります。」


その一言で、殿下とアリーシャは今にも泣きそうな顔で項垂れた。


....永久睡眠(エターナルスリープ)って、大したことない魔術だよな?

まさか、本当にカタリーナが眠ったままだなんて、さすがに無いだろ。

アイツは図太いし、そのうちすぐに起きるに決まっている。


だけどもし、万が一、このまま養護教諭が言うみたいに眠ったままだったら?


そしたら....。

.....。


折角考えた超大作(アップスターオレンジ)が無駄になるじゃねえか!

嘘シナリオに振り回されて、アホなことをしでかすカタリーナ。

それを見るために練りに練った傑作が、こんなところで台無しになるのは勿体ない。


全く、よく懲りもせずに死にかける女だな。

ここで文字通り永眠されてもつまらないし、俺が直々に起こしてやるか。



◆◆◆



「....あれ?」

目が覚めると私は、どこかで見覚えのある部屋で横になっていた。


「え...?」

部屋中に飾られたポスターや本棚を見て、瞬時に思い出した。

ここは前世の、桜井千佳としての私の部屋だ。


「なんで?」

久々に入った自分の部屋に、嬉しさや懐かしさ以上に驚きが勝る。


確か私、殿下達と一緒に話していたはずよね?

それなのに、なぜ日本の実家にいるのかしら?


「千佳ー、入るわよー!」

ノックと同時に入ってきたのは、前世でのお母さんだった。

その懐かしい母の姿を見た瞬間、嬉しさと同時になぜか涙が込み上げてきた。


「お母さんっ!」

私は思わず、お母さんに抱きついた。

もう二度と会えないって、諦めていたのに。

お母さんの服は、私の涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった。


「あらあら、どうしたの?何か辛いことでもあった?」

「お母さんに会えたのが嬉しくて、嬉しくて...。」

「あらそう?お母さんはいつだって、あなたの側にいるわよ。」

泣きじゃくる私とは反対に、お母さんはにこやかな笑顔を私へ向けた。


「でも、もうそろそろあなたも一人立ちした方がいいんじゃない?25歳にもなって実家を出ずに、アニメとゲーム三昧なのは、将来がちょっと心配よ?」

余計なお節介を言うところも懐かしいな。

生前の私だったら『真面目に働いて稼いでいるんだから、別にいいでしょ!』と怒っていただろう。

でも今は、そんな小言ですら聞けて嬉しい。


「そんなことより、私、なんでここで寝てたの?殿下とアリーシャ様、それにフレイくんは?」

「殿下?アリーシャ?フレイ?.....もしかしてあなた、VRゲームのやりすぎで現実とゲームの世界の見分けがついていないんじゃない?」


「VRゲームなんかじゃないわ!そもそもウチには、VRゴーグルが無いじゃないの。」

「VRゴーグルって....なに古いこと言ってるの?イマドキはVRアプリでしょ。」


「VRアプリ?」

「えっ、それ本気で聞いているの?

『アプリを開くだけでVRの世界に行けるなんて、控えめに言って神!視覚や聴覚だけじゃなくて、嗅覚や味覚、痛覚まで再現できるなんて、さすがは天下の大福商事!地元の誇り!』

....って、散々、大福商事を褒め称えていたじゃない。まさか忘れたの?」


全然、記憶にない。

そんな高性能なアプリがあるのならインストールしているはずだし、忘れるワケがない。

でもいくら記憶を辿っても、VRアプリに関する記憶を思い出せない。


「でもさっきまで殿下達はそこにいたわ。それに今までずっと長いこと一緒に過ごしてきたし、VRゲームのはずがない!」


「これは重症ねぇ...。あのね、千佳。ここには殿下もアリーシャもフレイもいないの。アップスターオレンジの世界にしか存在しない人物なの。いい年した大人なんだから、いい加減目を覚ましなさい。」


ちょっと待って?

今、なんて言った?!


「アップスターオレンジって、どういうこと?!」


「どうもこうも、あなたが最近ハマっているVRゲームのことでしょ。確か原作が小説で、よくある中世ヨーロッパ風の異世界が舞台のゲームだっけ?そこであなたは『カタリーナ』って名前の公爵令嬢のアバターを作ってプレイしているんじゃなかったの?」


つまり、さっきまでいた世界がVRゲームだったってこと?

カタリーナ・エセヴィランは転生後の姿じゃなくて、ただのアバターだったの?


「で、でも私、交通事故で死んだわよね?」

「何を言ってるの。確かに千佳は事故で頭を強く打ったけど、軽症で済んでいたでしょ?...もしかして千佳、あの時の事故のせいで記憶に曖昧な部分ができたのかしら?」


お母さんは本気で心配している。

冗談を言っているようには見えない。


....ということは、私は今も生きてるの?

ここは紛れもない現実?

だったら殿下も、アリーシャ様も、フレイくんも....全部、幻?


「じゃあ、殿下達にはもう会えないの?」

「アップスターオレンジの世界に行きたいの?だったらアプリを開けばいいんじゃない?あのアプリ、音声認証で開けるでしょ。あなた、いつも『ワールドチェンジ!』って言ってアプリを開いていたじゃないの。」


そう、なの?

私は試しに『ワールドチェンジ』と唱えてみた。

すると一瞬にして、私の部屋はあっちの世界の学生寮の部屋へと様変わりした。


「戻ってる....!」

机に置いたままの教科書や、枕元に置いてある小説の栞の位置も、今朝と全く同じだわ。

それじゃあこの世界って、お母さんの言う通りVRゲームの世界だったのね。


良かった。私、死んでなかったんだ。

ずっと両親にも、妹にも、友達にも会えないと思っていたけど、私の勘違いだった。

ワールドチェンジをすれば、いつでも現実世界のみんなや、アップスターオレンジの世界のみんなに会えるんだ。


「....誰とも、別れなくていいんだ。」

そのことに安堵した私は、ベッドに横たわった。

そして、自然と笑みがこぼれた。



それから私は、現実世界とVRゲーム(アップスターオレンジ)の世界での暮らしを満喫した。


現実世界では家族旅行をしたり、友達とカフェやコミケに行ったり、あと嫌だけどお給料のために仕事を頑張ったりもした。

そしてVRゲーム(アップスターオレンジ)の世界では、授業を受けたり、魔法を鍛えたり、ライラちゃん達と放課後に遊びに出かけたりした。


こんな何気ない日常が、ずっと続けばいいのに。


幸せな日々が続いたある日、現実世界で突然、誰かが私の家にやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ