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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【31】第10話:魔物村(4)

前世の姿の方の俺は、再び猩猩族エリアに戻ってきた。

猩猩族エリアは荒廃していて、人と魔物の死体で溢れかえっていた。


「さっさと片付けるか。」

俺は人も魔物も生き返らせ、建物も全て元に戻し、魔物達も順次檻の中へと戻していった。


魔物村を元に戻していると、途中でライラとホリーを見かけた。


「あっ!あなたは...!」

「クドージンさん!」


二人は俺を見つけるや否や、こちらへ駆けつけてきた。


「凄い...!これがクドージンさんの力?!魔物村が元通りになっている!」

ホリーは元通りになった魔物村に驚いて、キョロキョロ見回した。


「ありがとう、クドージンさん。また助けてくれて。」

別にお前らを助けたつもりはないが、言ったところでコイツは理解しないだろう。

それより、少し気になったことがある。


「あれ?他のヤツは?」


周りを見渡してみても、タクトや殿下達がいない。


「他のヤツって、誰のこと?」

「決まってんだろ。お前の兄貴やカタリーナ達のことだよ。」


「タクトくんとカタリーナさんでしたら、レックス・ディシュメイン殿下や、クラスメイトのレオンくんと一緒に、竜族エリアへ向かいました。クドージンさんは、二人に何か用事ですか?」

「用事ぃ?別に。いなかったから聞いただけだ。」

「『いなかったから聞いた』?」


ホリーは俺の返答に何か引っかかったようだが、ホリーが何かを言おうとしたのを遮るように、後ろの檻からガチャガチャと大きな音が響いた。


どうやら中にいた魔物が、興奮して騒いでいるようだ。

このままだと、また檻から出てきてしまうかもしれない。


「しゃあねぇ。」


俺は檻の中の魔物に剣を投げつけて、魔物達を()()()()させた。


「えっ...何で?!」

「クドージンさん、魔物達も生き返らせてくれるんじゃないの?」

「あぁ?もちろん生き返らせるさ。でも今、生き返らせたらまた檻から出るかも知れないだろ?だから、じぃ.....コイツらを大人しくさせられる奴が現れるまで、こうしていた方が合理的だろ。」


「だとしても、殺すのは良くないよ。」

「そうですよ。眠らせるだけじゃ、ダメなのですか?」

「バーカ。眠らせても起きたら意味ないだろ。一旦殺しておく方が確実じゃねえか。どうせ後で生き返らせるんだし、今死んでても問題ないだろ。」


するとホリーとライラは、表情を凍らせた。


「....ねぇ、クドージンさん。」

「あぁ?何?」

「クドージンさんは、何で躊躇なく人や魔物を殺せるの?」


ライラは唐突に、よくわからない質問をしてきた。


「んな事聞かれたって、殺せるものは殺せるとしか言えねぇだろ。逆に聞くけど、何で躊躇する必要あんの?」

「それは....」


ライラは困った様子で、言葉を濁す。


「クドージンさんは、最初から躊躇なく人や魔物を殺していたのですか?初めて殺した時って、どんな感じだったか覚えていますか?」


初めて殺した時?


「.....ッハハハハハハ!!」


ホリーが変なことを聞くから、あの時のことを思い出しちまったじゃねえか。

今思い出しても、笑いが止まらない。


「えっ?....何で、笑っているの?」

「ックク.....お前、あん時のこと聞くのは反則だろっ!アッハハハ!」

「あの時って?」


「初めてヒト殺した時のことに決まってんだろ。放心状態で戦地にいた時に、俺に斬りかかってきた奴がいてよ。でもソイツ、傷口から腕ごと、俺の身体に取り込まれてさ。気持ち悪いから引き剥がしたら、ソイツの腕がちぎれて、噴水みたいに血がドバドバ出てきたんだよ。で、それを見たソイツは、短い腕をパタパタさせて『うわぁ〜!』って情けない悲鳴を出してさ。あー、アレは傑作だった!」


あの時、生まれて初めて、大声が出るくらい笑ったなぁ。

アレがなかったら、今でも放心状態だったかもしれない。


「それの、一体何が楽しいの?」

「あ?」

「ヒトが苦しむ姿を見るのって、そんなに楽しい?」


ライラは俺を責めるように、強い口調で言ってきた。

『当たり前だ』と即答しようとしたが、なぜか即答できなかった。


確かに、カタリーナを嘘の乙女ゲーム設定で揶揄ったり、レオンを煽ったりするのは楽しい。

だけど、前ほど他人の不幸を『面白い』と感じること自体が少なくなっていた。

ぶっちゃけ、赤の他人の不幸なんざ、どうでもいいとすら思い始めている。


でもまぁ、カタリーナ達を揶揄うのは面白いし、楽しいことには変わりないか。


「.....楽しいに決まってんだろ。他人がどんだけ苦しんだところで俺には関係ねぇし。」

「でしたらクドージンさん、ヒトが苦しむ様子の、具体的にどういったところが面白いのですか?」


今度はホリーが難しいことを聞いてきた。


「何が面白いかぁ?....強いて言うなら、幸せそうにしている奴が不幸になっているのを見るとスカってするから、とか?それに恵まれたヤツが不幸になれば、世の中の幸不幸が均等になるだろ?世界にとってもいいことじゃねえか。」


「....幸せな人を不幸にしたところで、不幸な人が幸せになれるわけじゃないよ。」


うざ。

ライラが耳障りな正論で諭してきた。


「んな事、言われなくてもわかってんだよ。」

「そうなんだ....。じゃあさ、誰かを不幸にして楽しむより、誰も不幸にしないで楽しめることを探すのはどう?誰かを不幸にする努力より、自分が幸せになれる努力をする方が、ずっと楽しいよ!」


うざい。

うざい、うざい、うざい!

自分が幸せになれる努力?はぁ?

幸せなんざ、努力したところで手に入るわけないだろ。

努力した程度で幸せが手に入るのは、元から環境や運に恵まれた奴だけだ。


「うるせぇ!平和ボケした、いい子ちゃんのお前に何が分かんだ!」


ライラは大した苦労をしたことがないから、綺麗事ばかり言えるんだ。

ゆるい環境で生きてきた世間知らずのガキが、偉そうに分かった風な口を聞くな!


「えっと、その....ごめんなさい。」


すると、ライラが謝ってきたのと同じタイミングで、竜族エリアの奥からドラゴンの大きな声が響いた。

そういえば竜族エリアの修繕はまだだった。


「お前らと下らない話している場合じゃなかった。じゃあな。」

「あっ、待って!クドージンさん!」

「ライラさん、今、竜族エリアに行くのは危険だ。僕らはここで待とう!」

「でも...!」


ホリーが引き止めたおかげで、ライラがついてくることはなかった。

まぁ、今ライラが来たところで、死体が増えるだけだしな。

賢明な判断だ。


俺は、そんなライラ達を放っておいて、竜族エリアへと足を運ぶ。


竜族エリアに着くと、ブラッディスカーレットドラゴンが暴れているのが見えた。


ブラッディスカーレットドラゴンは誰かと戦っているようだ。

だけど戦っているソイツは、強烈な一撃を喰らって地面に叩きつけられた。


近づいてよく見ると、ソイツはタクトだった。


「カタリーナ、目を覚ませ!カタリーナ!....カタリーナ!」


声がした方を振り向くと、カタリーナを抱き抱えた殿下がそこにいた。

殿下はカタリーナの顔を覗くように、ずっと俯いていた。

泣いているのか、肩を震わせている。


殿下とカタリーナのそばには、レオンの間抜けな死体も転がっていた。


「ったく。どいつもこいつも情け無ぇ。」


ドラゴン一匹相手に寄ってたかって攻撃しているくせに、倒すどころか返り討ちにあっているじゃねえか。


俺は身体能力を最大限まで高めて、ブラッディスカーレットドラゴンの頭に蹴りを喰らわせた。

するとブラッディスカーレットドラゴンは、胴体を残して、頭だけ遠くまで吹っ飛んでいった。


「っ!?....何だ?どういうことだ!」


後ろから殿下の驚く声が聞こえた。


「見てわかんねー?お前ら雑魚に代わって、始末したんだよ。」

「雑魚?!」

「そうだろ。こんな雑魚ドラゴン一匹、まともに倒せねぇんだからさ。」


ひと通り、暴れているドラゴンがいないことを確認して、俺は猩猩族エリアと同じように竜族エリアを修繕した。

そのタイミングで、もう一方の俺がじいちゃんと一緒に猩猩族エリアに着きそうなのを察知した。


「おっと、急いで戻らねえと。」


俺は倒れているタクト達を放置して、一直線に猩猩族エリアへと戻った。

まぁ蘇生魔法はかけてやったし、コイツらもそのうち起きるだろう。


再び猩猩族エリアへ戻ると、じいちゃんとホリー達が合流していた。

どうやらホリーがじいちゃんに、ひと通り状況説明をしてくれたようだ。


「おーい、じ.....アーロン卿!」

「君は...?」

「アーロン男爵。彼が、ここを元通りにしてくれたクドージンさんです。」

「そうか。君が、事態を収めてくれた英雄か。」

『英雄』って。

大袈裟だな。


「何とお礼を言えばいいのやら。とりあえず、君の住んでいる場所を教えてくれないか?後日、相応のお礼を送りたいんだ。」

「別にいいって。」

住所知られたら一発で正体がバレる。

それにお礼って言っても、結果的に息子夫婦に仕送りを送るのと変わらないし。


「でも、それじゃあ君にどうお礼をすればいいか....そうだ!ウチの新商品『ガラケー』を君にあげよう。とても便利な魔道具だから、君もきっと気にいるはずだ。」


いらない。

というか、すでにスマドがある。

スマドより性能は良いとはいえ、スマドのゲームデータを捨ててまでガラケーに機種変更する気はない。


「だからいいって。」

「まぁ、そう言わずに!魔物村を救ってくれた恩人に何もお礼できなかったら、私の気持ちがおさまらないのだよ。だからお願いだ。私の気持ちだと思って受け取ってくれないか?」


ここまでしつこく言われると、断る方がかえって面倒だ。

俺は渋々、ガラケーを受け取った。

....仕方ない。サブのゲームアカウントでも作るか。


「クドージンさん、何もらったの?」

「これか?ガラケーだよ。実質、スマドと同じだけど。」

「ガラケー、ですか....。」

「クドージンくん、ガラケーとスマドを一緒にしてもらっては困るよ。ガラケーはスマドと違って、現在地と連動させて地図を見ることができるし、『エス・エヌ・エス』という世界中の人と交流できる機能もある。今、スマドを持っているんだったら、こっちに乗り換えた方が便利だよ。」


うん。知ってる。

なんせ、半ば強引にガラケー開発を手伝わされたからな。


「それにこのガラケーは、何と王家の紋章入り!しかも純金製!こんな煌びやかなガラケーは、世界に一つしかないよ!」


そうだろうな。

そもそも、そのガラケーって元々、今日殿下にあげるつもりで作ったヤツだろ。

そんな大事なガラケーをなぜ俺に渡す?


「ガラケーって、スマドとも連絡できるんですか?」

「あぁ。もちろん。」

「だったら、クドージンさん。連絡先教えて!」

「僕も是非、教えて欲しいです。」


うわっ。

面倒なことを言いやがる。

そんな事したら一発で正体がバレるから、無理に決まっているだろ。


....いや、でもガラケーの連絡先だったら別に正体はバレないのか?

だとしても、教える義理はない。


「俺の連絡先なんざ、どうでもいいだろ。それより、檻の中の魔物をどうにかするのが先だ。」


俺は半ば強引に、話を逸らした。


「アーロン卿、コイツら順番に生き返らせるから、暴れないように何とかしてくんね?」

「あぁ!そうだった。まだ私の可愛い魔物達を生き返らせてもらっていないのだった。クドージンくん、お願いするよ。」


俺は近くにあった檻の魔物から順番に生き返らせ、アーロン卿に魔物たちを宥めてもらった。


「すごい...!あんなに暴れていた魔物達も、アーロン男爵を見ただけで大人しくなっていく!」

「だからフレイくんは、アーロン男爵を呼びに行ったんだね!アーロン男爵を呼んで正解だよ!」


するとそこに、タクト達もやってきた。


「ライラさん、ホリーくん、無事かい?」

「はい。殿下達も無事で何よりです。」

「檻の中の魔物達も、アーロン男爵とクドージンさんが順次対応しています。」


タクト達は檻にいる魔物達の様子を見る。

さっきまでの様子とは打って変わって大人しくなった魔物達を見て、一同に驚いた。


「仏陀だ....仏陀がここにいる....!」

「もしかしてアーロン男爵の特殊魔法なのか?」


「フレイ、悪ぃ。お前のこと、誤解してたわ。俺はてっきり、あの時適当な理由を言って逃げたんだと思ってた。」

酷い言われようだな。


「ところで、そこの黒髪の貴様!貴様は一体、何者だ?!」

「そういえば僕も気になってたんだ。君は、もしかして噂のクドージンさんかい?」


あー、そういえば殿下とレオンは、この姿で会うのは初めてだっけ?


「そうだけど、それが何か?」

「『それが何か?』って、貴様、ふざけているのか!貴様、一体何をした?何故死者を生き返らせることができるんだ?」

「なぜって....できるモンはできるとしか言いようがねーだろ。」

「こんな都合のいいことが、そう安易とできてたまるか!」


レオンはこの姿でもウザい絡み方をしてくる。


「だったらお前だけ死体に戻してやろうか?一発殴れば、お前を死体に戻せるぜ?」


するとレオンは青ざめた様子で、口を閉じた。


「そうそう。雑魚は大人しく黙っていればいいんだよ。」


俺は再び、魔物達を生き返らせる作業に戻った。


俺が魔物達を生き返らせて、じいちゃんが生き返った魔物を宥める。

といった作業をひたすら繰り返し、猩猩族エリアと竜族エリアの魔物の蘇生はほとんど終わった。


「あとはブラッディスカーレットドラゴンとアメジストクルーエルグレイスドラゴンを生き返らせるだけだな。」

「この子達は人間に対する警戒心が強いから心配だな。もしかしたら、私でも宥められないかもしれない。」

「大丈夫ですよ。だってアーロン男爵は、こんなにも魔物達に愛されているんですから。」


そんな雑談をしていると、竜族エリアの奥で、檻に入っていない魔物がいるのが見えた。


「何だ、あれは....?」


あんな魔物、魔物村にいたっけ?

その魔物はよろよろと、ゆっくり歩いているようだった。


「はて?魔物村に、あんな子はいただろうか?」


じいちゃんすら、見覚えがないらしい。

俺たちは魔物に近づいて、その正体を確認する。


「っ?!」

「コイツは!」

「嘘だろ?!」


その見た目は、厄災の魔王(ぜんせのオレ)そのものだった。

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