【24】第9話:授業開始(1)
入学式を終えた翌日。
今日から各クラスに分かれて授業が始まる。
俺はいつものメンバーと一緒に、授業が始まるまで教室で待機していた。
クラス分けの結果、タクトやライラ、カタリーナ、殿下、ホリー、そしてゼルといった、いつものメンバーとは同じクラスになった。
そこまではまだいい。
問題は....。
「あーあ。ブスや平民と同じクラスなんて。このクラス分けを考えた奴は馬鹿だろ。」
レオンは相変わらず、聞こえるくらい大きな声で嫌味を言う。
コイツと意見が一致するのは癪だが、俺達とレオンと同じクラスにした奴は滅びればいいと思う。
「はぁ。アイツさえいなかったら、最高のクラスなんだけど。みんなゴメンね。アイツ、家同士が対立しているからか、なにかと私に因縁をつけてくるの。」
「別にカタリーナちゃんが謝る必要ないよ。もう見慣れちゃったし。」
「それより、今日からの授業、楽しみだね。まさか担任の先生があのシヴァさんだなんて、ビックリだよ。」
本当にビックリだ。
何が悲しくて、俺を転生させたヤツの授業を受けなければいけないんだ。
「『あのシヴァさん』って、ホリーくんはレイブン先生と知り合いなの?」
「うん。シヴァさんとはライトニング領で一回会ったことがあるんだ。その時、タクトくんとライラさんも一緒にいたよ。」
「そうそう。ライトニング領で元・勇者一行が集まってパーティをやってさ。なんだかんだで、あの日、楽しかったよな。」
「ライトニング領ってことは、フレイくんもいたの?」
「いえ、僕は体調不良で欠席していました。だからシヴァさんと会うのは昨日が初めてです。」
正確には『この姿で』だけどな。
「はいはーい!みんなー、席についてー!」
雑談をしていると、担任のシヴァが教室に入ってきた。
それと同時にチャイムが鳴る。
もうそんな時間か。
生徒は全員、自分の席についた。
「それじゃあ今日は、魔法の基礎について勉強していこうね〜!」
魔法の基礎か。かったるい。
家庭教師に教わったから、今さら覚える必要がない。
「先生!俺様のように由緒正しい貴族は、魔法の基礎は学習済みです。基礎を知らない平民とは違う授業を希望します。」
またレオンが、俺の気持ちを代弁するかのようなセリフを言う。
言ったのが他の誰かだったら同調できたが、コイツが言うと反論したくなる。
「え〜!レオンくん、せっかちだねぇ。みんなで歩幅合わせて、勉強していこうよ!」
「無理に平民と歩幅を合わせるより、才能ある選ばれし者は、その才を伸ばす教育の方が良いのではないでしょうか?」
「うわぁ〜。相変わらずイヤなヤツ。」
カタリーナの小言に、思わず首を縦に振る。
「う〜ん。そう言われると、おじさん困っちゃうなぁ。....じゃあさ、思い切ってクラスのみんなに聞いてみようか。みんなで魔法の基礎から勉強するのに賛成な人、手を挙げて〜!」
俺は迷わず手を挙げた。
基礎の勉強はどうでもいいが、レオンの思い通りになるのは癪に触る。
「ハハハッ!才能ゼロの半分平民じゃねえか!確かに貴様には基礎がお似合いだな!」
レオンとその取り巻きが俺を嘲笑う。
すると、俺の後に続くように、カタリーナも手を挙げた。
「私も、先生の意見に賛成です!そもそもこの学校は、平民や他国の人でも学べるように門戸を開いているので、基礎からの授業になるのは当然です。その方針に従えない人が、他校へ編入すればいいだけだと思います。」
レオンを睨みつけながら、カタリーナは意見した。
「俺も、基礎から学ぶわ。」
「私も!みんな一緒がいい!」
カタリーナに同調するように、タクトとライラも手を挙げた。
その流れに乗るように、他の生徒もぞろぞろと手を挙げ始める。
気がつくと、クラスの半数くらいが手を挙げていた。
「ハハ、困ったなぁ〜....。見事に真っ二つに割れたね。じゃあ、そうだなぁ.....」
シヴァは顎に手を当てて考え込む。
「そうだ!じゃあ、今から出す課題ができた子だけ、基礎の授業を受けなくていいってことにしよっか!その代わり、魔法の授業中は、その子達に個別で課題を出すよ。それならいいかな?」
シヴァの提案に異議を唱える奴は誰もいなかった。
「反対は、なさそうだねぇ....あぁ〜よかった!じゃあ早速課題を出すよ!」
すると教壇の周りに火・水・風・土・光・闇の6つの球が現れた。
さしずめ各属性の初級魔法、といったところか?
「今、ボクが出したのは各属性の初級魔法です。左から初級火魔法・初級水魔法・初級風魔法・初級土魔法・初級光魔法・初級闇魔法だよ。」
シヴァが出した魔法に、生徒は皆、驚嘆した。
「凄い....!あんなに簡単に出せるなんて!」
「流石、伝説の勇者パーティの一人だ。」
そんなに凄いか?
魔法を出したって言っても、たかだか初級魔法だろ。
「コレ全部できる子は、基礎の授業聞かなくていいよ!あ、でも不適性はできなくても大目にみるよ。やってみる子はいる?」
レオンとその取り巻き連中は、全員、手を挙げる。
「さすが、基礎は要らないって言うだけはあるねぇ!じゃあ、レオンくんから順番に見ていこうか。」
レオンは威勢よく教壇まで行くと、得意げに魔法を繰り出した。
「まぁ見とけよ、平民ども。..... 初級火魔法!」
そう言って出てきたのは、小さい火の玉だった。
さっきシヴァが出した初級火魔法は、小さいとはいえ子ども一人が収まりそうなくらいのサイズはあった。
だがレオンの出した火の玉は、人の頭くらいのサイズしかない。
あれだけ自信満々にやって、この程度か?
「ッハハハハハ!!」
あまりにもショボい初級火魔法に、笑いを堪えることができなかった。
「ど、どうしたのフレイくん?」
「だって、あれだけ僕のことを馬鹿にしてたくせに、あんな小さな火の玉しか出せないんですよ?あまりにも滑稽じゃないですか。」
だけど、笑っているのは俺だけで、他の全員はきょとんとした顔で俺を見ていた。
基礎を習ってなさそうなライラ達なら、レオンの魔法の貧弱さが伝わらなくても仕方ない。
でもカタリーナや殿下まで「俺の方が変」と言わんばかりの目を向けてくるのは、おかしいだろ!
「はぁ?!才能ゼロの分際で偉そうな口叩いてんじゃねぇよ!」
レオンは顔を真っ赤にして俺を睨みつけた。
「だったら、貴様もやってみろよ!」
「えぇ〜。僕は基礎から勉強したいので、課題は遠慮しますよ。合格しちゃったら授業が受けられなくなってしまうので。」
「それだったらフレイくんは、課題の結果に関係なく基礎の授業を受けても良いよ♪むしろ大歓迎さ!」
「だとよ、半分平民。俺様の初級火魔法を嘲笑うくらいだから、当然、俺様以上の初級火魔法ができるんだろうな?」
「まさか、できないクセに笑ったわけじゃねーだろ?」
「俺達は何日でも待ってやるよ!フレイくんがレオン様以上の初級火魔法を使うところをよ!」
レオンとその取り巻き達は、ここぞとばかりに俺を煽ってきた。
煽ってくる内容が楽勝すぎて、むしろ前フリのように感じる。
俺は言われた通り、シヴァがさっきやった魔法を、そっくりそのまま再現してみせた。
「コレで良いですか?」
「コレで...って、え?」
目の前の光景に、さっきまで意気揚々と煽っていたレオン達は、口をぽかんと開けて固まった。
「嘘でしょ....?!」
「信じられない...!」
俺の魔法を見て驚いたのはレオン達だけじゃなかった。
むしろクラスの全員が驚いて、その場が一瞬、静かになった。
...それにしても、基礎を習っているハズのカタリーナ達や教師のシヴァが驚くのは、おかしくないか?
「コレやったの、先生、ですよね?先生、このタイミングでもう一回出すなんて、冗談が過ぎますよ。」
あまりにも信じたくない光景だったからか、レオンはシヴァがやったと思い込んだ。
「いやいやいや!ボクじゃないよ?!むしろボクもビックリだよ!」
「こうしたら、信じてもらえますかね?」
俺はさっき出した6属性の球を使って、「レオンはまぬけ」と表してやった。
「レ、オ、ン、は、ま、ぬ、け....?!ふざけるな、貴様!」
すると教室中が笑い声で溢れた。
笑っていないのはレオン達くらいだった。
「はいは〜い!レオンくんからかうのはそこまでだよ、フレイくん。それにしてもキミ、凄い才能だねぇ〜!さすがセージャちゃんの甥っ子くんだ!それじゃあ、他の子の魔法も見ていこうか。次にやってみたい子はだれ?」
あれ?
さっきまで威勢よく課題をやると言っていた連中が、一斉に引き下がった。
「あれぇ..?!みんな、もう課題はしないの?もしかして『フレイくんみたいにできないから無理!』とか思っていない?
フレイくんがすごく特殊なだけで、課題さえ出来ていたら良いんだからね?!
誰もあんな高度な魔法を求めてないよ?
さっきの課題は無詠唱じゃなくても全然問題ないよ。
むしろ無詠唱なんか、かなりの熟練じゃないと無理だから、そこまでは求めてないよ。
それに魔法は1つずつ発動して良いんだからね?
6つ同時に発動するなんて荒技、上級生でもなかなかできないから!
あと初級魔法って言ったけど、ボクが出したのは実質中級魔法くらいの大きさだよ!
魔法って極めていくと初級の魔法でも無意識のうちにだんだん強くなっちゃうからね。
レオンくんが出した初級火魔法でも、普通より大きい方だよ!」
なるほど。
魔法自体は簡単だけど、色んな要素が入り混じって難易度が高くなっていたのか。
それで「さすがシヴァ」とか言われていたのか。
「あと『あんな凄い魔法が使えたフレイくんですら、基礎から勉強するって言っているのに、自分なんかが....』なんて思わなくても良いんだからね?
不適性以外の全ての初級魔法が使えたら、基礎は勉強しなくても大丈夫だよ!」
シヴァはフォローのつもりで言ったのかもしれないが、余計に言い出し辛くなったんじゃないか?
シヴァは長々と説明したものの、とうとう課題に挑戦しようという奴は現れなかった。
あのレオン達ですら、舌打ちしながら課題を放棄した。
「もう課題にチャレンジする子はいない....ってことは、合格者はフレイくんだけか。あ、そういえばレオンくんは、課題は途中までしかやってなかったね!続き、する?」
「いや....いいです。」
無理もない。
あれだけ俺の事を罵倒していたからな。
俺以上の魔法が出せなかったら、公開処刑に等しいレベルの恥をかくことになる。
「そう?じゃあ唯一の合格者のフレイくんも、基礎を勉強するって言っているし、当初予定通りに基礎の勉強から始めるね〜!」
シヴァは仕切り直して、授業を始めた。




