【114】第25話:ソラトリク様(1)
とある日の休日。
俺はゼルに呼び出されて、再びシヴァの汚屋敷へと訪れた。
何でも、先日センガが聖ソラトリク教会から盗んだ宝石について話があるらしい。
屋敷に入って適当にソファへ座ると、シヴァは宝石を持ってきて説明を始めた。
「君も知っての通り、連中が大事に持っていたコレ、センガちゃんと調べてみたよ♪するとなんと!面白いことが分かったんだよねぇ〜。」
勿体ぶった言い方だな。
「で?何がわかったんだ?」
「それがですね。この中に入っていた魂には、クドージンさんと同じように根源がついていたのです。」
ということは、この魂も日本からやってきた魂ってことか?
「ただ、この魂の根源は命属性の魔力は生み出していないみたい。生み出される魔力量はバケモノ級だけどね♪」
「やはり、クドージンさんのように命属性の魔力を生み出す根源は珍しいようですね。」
「奴らはどうして、この人の魂を封印して保管していたんだろう?」
「十中八九、この人の魂に根源があるのに気づいて、それでクドージンくんの魂と勘違いしたから捕まえたんじゃない?なんせ、命の器とやらを狙っているらしいからねぇ〜。」
「それで?他にわかったことは?」
「ないよ?だからキミを呼んだんじゃん♪」
はぁ?俺に何を聞くつもりだ?
シヴァ達に教えられそうな情報なんざ、俺は持っていないぞ?
「何が目的だ、テメェ。」
「キミにしかできなさそうなお願いだよ。ズバリ、この宝石に閉じ込められている人とお話したいのよ♪」
「クドージンさんが私にかけた魔法のように、この中の人と会話できる魔法を使うことは可能でしょうか?」
「使えるだろうが、使ったところで何を聞くつもりだ?どうせ大した話が聞けるとは思えねぇけど。」
「そんなの、話してみないと分からないじゃん♪それにボクらの知らない教団の情報を持ってるかもしれないしさ。」
「はぁ〜、仕方ねぇな。」
魔法を使うなんて大した労力じゃないし、俺はちゃちゃっと宝石と喋れるようにしてやった。
「おーい、聞こえるか?」
「....ここは?この声は...?」
宝石にもちゃんと俺の声が届いているようだ。
「ほらシヴァ。話せるようにしてやったぞ。」
「ありがと〜♪さっすがクドージンくん!君の魔法ってホントに便利だよね♪」
「アンタらは一体何者だ?それに、この感じ....転生したわけではなさそうだが...?」
「貴方は今、魂だけを宝石の中に封じ込められている状態なのです。」
「言っている意味が分からない。とりあえず俺は今、閉じ込められているということか?アンタらの声は聞こえるのに、何も見えないし、肉体の感覚もないのは何故だ?」
「それを説明するためにも、貴方にはまず自分の身に起こったことを思い出して欲しい。貴方は今の状態になる前、どうしていたか覚えてる?」
「俺がこうなる前...?そういえばあの日、現世での親に聖ソラトリク教会へ連れて行かれたな。そこで『厄災の魔王』だとか言われて、怪しい儀式に強制参加させられて....気づいたら今になっていた。」
やっぱりコイツも、あの変な儀式で殺されたんだな。
ご愁傷様。
「実は貴方が参加させられた儀式は、魂を宝石の中に封じ込める儀式だったんだ。ほら、儀式で神父が宝石を持っていたのを覚えてない?」
「あぁ、アレか。....ということは、俺は今、魂だけをあの宝石の中に閉じ込められているってことか?」
「だからさっきもそう言っただろ。」
「でも何故、俺はアンタらと喋れているんだ?そもそも、アンタらは何者だ?」
質問が多い奴だな。
「ボク達は何者かって?う〜ん、それを説明するのはちょーっと難しいなぁ。強いて言えば、ボク達は聖ソラトリク教団とは対立関係にあるよ。だからキミに危害を加える気はないから安心して♪」
「アンタの言葉を信用するつもりはないが、そう言うのならそういうことにしておこう。というか、アンタらは全員で何人いるんだ?」
「それを聞くんだったら、まずは自分から名乗れよ。」
「確かに一理あるな。俺の名は....色々あるが、俺自身は自分の名前はリクだと思っている。」
含みのある言い方だな。
名前が色々あるってことは、コイツも何回か転生したってことだろうな。
「で、アンタらは?」
俺達4人は軽く自己紹介をした。
「そうか。ところで話は戻すが、俺が今会話できている理由は何だ?」
「俺の魔法だ。」
「....はい?」
「だから俺の魔法で、お前が会話できる状態にしてるって言ってんの。」
「アンタの魔法で?それは本気で言ってるのか?」
「当たり前だろ。」
「....信じられない。クドージンの特殊魔法ということか?」
「違う違う。これは特殊魔法でも何でもない、ただの魔法だ。」
「特殊魔法でもないのに、これほどに高度な魔法が使えるのか?」
「あぁ〜、リクくん。それ以上はツッコんでも意味がないよ。クドージンくんの魔法は規格外だから。彼、魔法なら何でも無詠唱でできちゃう恐ろしい子なの。そういうものだと理解して♪」
「そういうものなのか?長いこと生きた俺ですら、『何でも』は不可能だぞ?....まぁ、アンタらがそう言うなら、言及しないでおこう。」
「長いこと生きたっつっても、こっちの世界に来てから生きた期間は大したことないだろ。」
前にザボエルから聞いた話だと、俺達日本人の魂はヤツの研究のせいで、こっちの世界来たんだよな。
それが仮に今から20〜30年前だとしても、こっちの世界で生きた年数はたったのそれだけだ。
「いや、むしろ元いた世界よりも、こちらの世界で過ごした期間の方が圧倒的に長い。」
「こっちの方が長いって....お前、元の世界でどんだけ短命だったんだよ。」
って、俺も人のことは言えないか。
日本にいた時は19歳で死んで、今は15歳だから同じくらいだな。
ゼルに憑依していた期間も合わせたら、19年以上こっちの世界にいた可能性もある。
「確かに短命だったが、元の世界で死んだわけじゃないからな。....って、アンタら、元の世界について何か知っているのか?!」
「知ってるも何も、俺もお前と同じく異世界からやってきたからな。」
「クドージンが?どういうことだ?お前はソラなのか?」
ソラ?どっかで聞いたことのある名前だ。
どこだっけ?思い出せない。
「俺は俺だ。誰と勘違いしているか知らないが、俺にそんな名前の知り合いはいねぇよ。」
「わけがわからない....。この世界に迷い込んだのは、俺とソラだけじゃなかったのか?」
「他にもいーっぱいいるよ〜。異世界からきちゃった人。どっかの所長さんのせいでね♪」
「シヴァと言ったか。アンタは事情を知っていそうだな。良かったら教えてくれないか?」
「いーよ♪その代わり、ボクもキミに聞きたいことがあるんだ。後で聞いてもいい?」
「もちろんだ。」
シヴァはリクに一から説明した。
サラという女と出会ったこと。
一緒に聖ソラトリク教団に入ったこと。
教団の研究所で、一緒に異界穴の研究をしたこと。
その研究をザボエルに横取りされて、教団から追放されたこと。
異界穴研究を続けたザボエルによって、日本人の魂が次々とこちらの世界へ連れてこられたこと。
その魂が、俺やリクであること。
長い説明を終えると、リクは「なるほど」とすんなり理解したようだった。
「以上で説明終わり!リクくん、何か質問はある?」
「いいや、ない。クドージンの魂がこちらに来た理由はよく分かった。それで、シヴァの聞きたいことって何だ?」
「実はさ、さっきの話に出てきた『サラ・リンカネーション』って女性を知ってる?...って言っても、どうせ知らないだろうけどね。」
シヴァは諦め半分で尋ねる。
俺達日本人は、サラがいなくなった後にこっちの世界に来たワケだから、サラのことを知っているハズがない。
そもそもサラって女は、根源を持つ魂を探していただけであって、根源を持った魂と知り合いだったかどうかは分からないしな。
「...サラ・リンカネーションという名の女は知らない。」
やっぱりな。
「だが、その女の正体には心当たりがある。」
「っ?!」
リクのその一言で、シヴァはさっきまでの緩い顔から一変、珍しく真剣な面持ちになった。




