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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【107】第23話:キョウシュー帝国へ(4)

厳かな雰囲気を纏う、大きな教会へ戻ってきた俺達。


入口で受付をして奥へと進むと、そこは学校の講堂のように、いくつもの長椅子が並んでいた。

ただ学校の講堂とは違い、ステンドガラスやシャンデリアなど、装飾が豪華だ。

おまけにパイプオルガンまである。こんなもの、何に使うんだ?


「うわぁ....。綺麗ね。」

「この教会は、上流貴族がたまに結婚式場に使うこともあるんだって。」

パイプオルガンは結婚式で使うために置いているのだろうか?


「あの彫刻の人物は...あれはもしかして、ソラトリク様なのでしょうか?」

センガが正面を指差す。

そこには白くて大きい双頭の人間の彫刻が、高い位置に飾られていた。


「結合双生児、にしては顔が全然似てないわね。」

確かにカタリーナの言う通り、二つの頭は似ていない。

一方の頭は堀が浅くて目が鋭く、ゴツゴツとした男らしい顔つきだった。

しかしもう一方は、堀が深くて目も輪郭も丸く、頭も小さくて中世的な顔だった。


「よく見たら、身体も(いびつ)だね。所々線も入っているし。」

ゼルの指摘で、俺もその歪さに気づいた。

身体に入っている線を堺に、骨格や肌の感じが変わっており、まるで別人の身体を無理矢理くっつけたかのように感じた。

そのせいか左右で手足の長さや大きさが違っており、まっすぐ立つことができずに、不恰好なポーズになっている。


「ソラトリク様って、本当にこんな姿だったのかな?何だかクドージンさんみたい。」

「はぁ?俺?」

「うん。何だか違う人の身体を繋ぎ合わせたように見えて、それが前世のクドージンさんに似てるなぁって。」


ライラの言わんとすることがわかった。

前世の俺、もといゼルの身体は、複数の魔物の身体を繋ぎ合わせていたから、そういう意味では似ている。


「そういえば教会の中を見ても、聖ソラトリク教団のマークが見当たらないね。種命地のマークと同じだっていうあのマークは、教団しか掲げていないのかな?」

殿下の言う通り、種命地のマークは教会どころか繁華街でも見かけなかった。

ということは、種命地と関係あるのはあくまで教団だけってことか?

だとしたら教会に来たのは無駄足じゃねえか。


「でしたら、あそこにいる神父さんに聞いてみますか?」

「そうだね。何か知っているかもしれないし。」


ライラの提案で、神父に種命地のマークについて尋ねてみた。

神父は優しく微笑みながら、質問に答えた。


「なるほど、種のような花のようなマークですね。そのマークはソラトリク様のおられる『天の国』のマークです。あなた方はソラトリク様が天の国から来られたことはご存知ですか?」


「はい。」


「でしたら、かいつまんで説明しますね。聖ソラトリク歴4058年に、ソラトリク様は再びこの地へ降臨されました。その際、ご自身が天の国に住んでいることや天の国のマークを、我々信徒に教えてくださりました。」


「天の国が、種命地?」

センガは神父の話を、訝しげに聞く。


「なぁ、おっさん。その天の国のマーク?ってやつは今は、どこで使われているんだ?教会にはそのマークが全然無いよな。」

「おっさんって....ちょっと宮藤くん!すいません神父様。」


「いえいえ。構いませんよ。あなた方はこのマークの存在を知っている、ということは聖ソラトリク教団のこともご存知ですか?」

神父の質問に、俺は一瞬言葉を失った。

探っていることを勘づかれたか?いや、それはない。

が、ないとは思っていても、そんな懸念が頭をよぎって緊張が走った。


「はい。確か聖ソラトリク教の母体団体ですよね?」

「その通りです。天の国のマークは現在、主に聖ソラトリク教団のシンボルとして使用されています。これは聖ソラトリク教のシンボルと区別するためです。

ちなみに、聖ソラトリク教と聖ソラトリク教団は正確に言えば役割が違うのですが、それはご存知ですか?」


「いえ、そこまでは知りませんでした。」

「でしたら説明しますね。聖ソラトリク教は、主にソラトリク様の軌跡や教えを学び、ソラトリク様を唯一神として信仰する団体です。一方の聖ソラトリク教団は、ソラトリク様から授かった叡智を学び、研究する団体です。もしあなた方の中で魔術を追究したい方がいらっしゃれば、教団への入団をおすすめしますよ。ただし、教団に入れるのは聖ソラトリク教に入信されている方に限りますが。」


門戸が狭いな。


「魔術なぁ〜。俺、座学は苦手だから興味ねぇや。魔法だったら興味あったけど。」

「お兄ちゃんは、興味がなくても勉強した方がいいよ。じゃないと最悪、留年しちゃうよ?」

「うるせー!」


「フフフ、聖ソラトリク教団では、魔術の知識に乏しい方でも学べる学び舎もありますよ。そちらで勉強すれば、留年を回避できるかもしれませんね。」

「でも、それも信者じゃないと入れないんだろ?」

「はい。」


教団ってケチ臭いな。


「別館にある礼拝堂で洗礼の儀を受ければ、今すぐにでも聖ソラトリク教へ入信できますよ。」


コイツ、さっきからグイグイ入信を勧めてくるな。

宗教に入ってる奴って、こんなに押し売りしてくる迷惑な連中ばかりなのだろうか?

案の定、みんなは苦笑いして神父の話を受け流していた。


「すみません。入信についてはまた後日考えます。」

「そうですか。我々はいつでもあなた方を歓迎しますよ。ちなみに別館の礼拝堂では、信徒以外も受けることができる『贖罪の儀』というものがあります。この儀式は皆さんの魂を清め、癒す儀式なのですが、受けてみますか?」


「へぇ〜。折角ですし、私は受けてみます!」

「私も!」

「僕も同じく。」


ライラやカタリーナ、殿下は興味津々で参加するようだ。

その流れに合わせるように、ホリーやセンガも参加する。


「俺はパス。めんどい。」

「僕も同意。」

一方、俺とタクトとゼルは参加を拒否した。


「そうですか。でしたら退出の際は、金貨1枚を献金してお帰りください。」

「はぁ?!」

「ぼったくりじゃないか!」

しかも金貨1枚って、相当な額だぞ。


「ですが、そういう規約ですので。受付の際の説明はお聞きになられましたか?」

神父のムカつく質問で、受付時の説明を思い出す。

事前の説明では『入場料はありませんが、教会内で迷惑行為を行う者や悪の手先と思われる者には、金貨1枚を徴収致します。』と言っていた。


「『贖罪の儀』は悪しきものを清める儀式でもあります。ですので、その儀式を拒否する方は『悪の手先』なのではと疑わざるを得ません。」

「だから『悪の手先は金貨1枚払え』ってか?」

「そんなの、脅しと変わらないだろ!」


「脅しだなんて、人聞きの悪い。ただ我々は、信徒や善良な方々が悪しき者達から危害を受けないよう、予めこのようなルールを取り決めております。」


ゼルとタクトが大声で抗議しているからか、周りの入場者達が軽蔑の眼差しでこちらを見ている。

その視線に気まずくなった俺達は、神父を睨みつけながら渋々贖罪の儀を受けることにした。



◆◆◆



聖ソラトリク教会・別館。

俺達は神父に連れられ、礼拝堂へと赴いた。

礼拝堂には、数人の信徒と思われる男女が、祈りを捧げていた。

そいつらは俺達に気づくと、一礼して後ろの方の席へと移動した。


「それでは今から、贖罪の儀を行います。皆さん、前から順番にお座りください。」

言われた通り、前から順番に2人ずつ長椅子に座る。


「次に、皆さんには魂を浄化するための聖水を飲んでいただきます。」

そう言って神父は小さな瓶に入った聖水を配る。

胡散臭い宗教団体の怪しい水なんざ飲みたくない。

だが飲まないと金貨1枚を取られるので、俺は意を決して勢いよく一気飲みをした。

すると、心なしか身体の内側からぽかぽかと温かくなってきた。


「身体の芯から暖かい力を感じますか?その力こそが、聖水による浄化の力です。」

浄化の力?馬鹿馬鹿しい。

どうせ、そういう効能がある薬か何かを混ぜているに決まっている。


「それでは今から祈りを捧げましょう。皆さん、目をゆっくり閉じて、両手を握りましょう。そして、鈴の音が聞こえたら、ゆっくり鼻から息を吐きましょう。」

直後に鈴の音が聞こえて、ゆっくり鼻から息を出す。


....いつまで息を吐けばいいんだ?

吐く息がなくなって若干苦しくなってきたタイミングで、再び鈴の音が鳴る。

「今度はゆっくり、鼻から息を吸いましょう。」


その後、鈴の音に合わせて息を吸って・吐いてを繰り返す。

すると、聖水を飲んだ時に感じた暖かさが、身体全体に広がっていくのを感じた。


「それでは、目を開いてください。」

目を開けると、ぽうっと光る玉のようなものが、幾つか浮いているのが見えた。

そしてその光は、よく見ると俺にもある。


「今、皆さんの胸に浮かんでいる光。それは皆さん自身の魂の輝きです。」

そう説明を受けて、魂の光とやらがみんなの胸で光っていることに気づいた。


「あれ?クドージンさんは、魂の光がありませんね。」

宮藤迅(おれ)の後ろに座っていたホリーは、不思議そうに尋ねてきた。


「あぁー。そっか。今の宮藤迅(おれ)は分身だから、魂が浮かばなかったってワケか。」

「えっ。今のクドージンさんって、分身だったんですか?」

「だから昼食の時、何も食わなかったのか。」


「っつーか、ホリー。お前は何で魂が2つあるんだよ。」

「え?....あ、本当ですね。」


俺達の会話を聞こえたのか、神父は慌ててホリーに近づいた。

そしてホリーの魂を見るや否や、目を大きく見開く。

...心なしか、一瞬口角が上がったように見えたが、気のせいか?

すると神父はいきなり、ホリーを指差して大声で叫んだ。


「悍ましい!かの者には、厄災の魔王の魂が憑依しております!」


「はぁ?」


....何言ってんだ、コイツは。

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