【104】第23話:キョウシュー帝国へ(1)
実技テストから数日経った、ある日。
突然、ゼルから宮藤迅宛にメールが届いた。
「センガさんについて、タクトくんとカタリーナさんに情報連携しようと思っています。良ければ今度、一緒に説明してくださいませんか?」
メールを読んで、カタリーナ達にセンガについて連絡していないこと思い出した。
俺は『わかった』とだけ返信して、その後の連絡を待った。
◆◆◆
翌日。
カタリーナ達が『話がある』というので、放課後、みんなで教室に集まった。
話す内容は検討がついている。
昨日の今日だ。
どうせセンガの件を、センガのことを知らないライラ達にも共有しようという話だろう。
「みんなに大事な話が、2つあるの。」
2つ?
1つはセンガの件として、もう1つは何だ?
カタリーナの意図が見えない。
「実は!」
「「実は?」」
「なんと...宮藤くんの連絡先を手に入れました!」
「「えっ?!」」
これには思わず俺も変な声が出た。
ゼルの奴、勝手に連絡先を教えやがったな。
「な、何でカタリーナちゃんがクドージンさんの連絡先を知ってるの?」
「私はゼルくんから教えてもらったの。」
「僕は、この前彼と会った時に教えてもらったんだ。」
「でもクドージンさんって、今まで頑なに連絡先を教えなかったよね?何でゼルくんには教えてくれたの?」
ゼルはホリーの質問に戸惑ったのか、一瞬眉をひそめて黙った。
だけど変な間ができる前に、質問に答えた。
「それは、カタリーナさんが言っていたもう1つの大事な話と関係があるんだ。その件について、クドージンさんと情報連携しようと思ったんだけど、お互い連絡先を知らないから困ってさ。だからクドージンさんにお願いして、連絡先を教えてもらったんだ。とは言っても、このメールアドレスは僕と連絡する用に作ったアドレスだから、彼の本当の連絡先はまた別にあると思うよ。」
「じゃあクドージンさんが普段使っているメールアドレスって、レオンくんのメールアドレスなのかな?」
「かもね。レオンも記憶喪失中の記憶が無いみたいだし、直接彼に聞くのもナンセンスでしょ。」
そういえば『レオンにとって不本意な形で正体を知ってしまったのだから今まで通り知らないフリをしよう』という話になったんだっけ?
不本意も何も、レオンは宮藤迅じゃないから無駄な配慮だが。
「でもこのメールアドレスがあれば、クドージンと連絡できるのは確かだよ。僕も何度か連絡を取ってるし。」
「私達は彼の正体を知ってるワケだし、こっちのアドレスだけ知っていたら十分でしょ。それより、このアドレスがあればいつでも彼を呼べるんだから、今度みんなで彼にサプライズしましょうよ!」
『宮藤迅にサプライズ』っつっても、フレイがいる時点でバレバレだぞ。
「それ良いね!私達、いつもクドージンさんに助けてもらっているから、そのお礼ができたらいいな。」
「でもアイツの家って、公爵だから相当金持ちだろ。お礼に何かするにしても、今のアイツだったら何でも手に入るだろうから大して喜ばないんじゃね?」
「確かにお兄ちゃんの言う通りだけど、こういうのは気持ちが大事だよ!」
「その気持ちにしても、クドージンさんは別に求めていないんじゃないでしょうか?」
「フレイくん、そんな冷たいこと言わないでよ。フレイくんは宮藤くんに、感謝したり『お礼に何かしたい』って思わないの?」
「はい。全然。」
自分が自分へお礼って、何のギャグだよ。
「あらそう?まぁ、フレイくんはこの前、記憶を消されたからそう思うのも仕方ないわね。」
記憶を消したのは俺ではないが、カタリーナが納得したのなら、それでいいか。
「それでも僕はクドージンさんにお礼がしたいよ。彼は僕の恩人だからね。」
ゼルの過去を聞いても尚、ゼルから恩人だと言われるのには違和感がある。
ヒトの身体を乗っ取った挙句に、化け物みたいな姿にされたのだから、むしろ恨まれてもおかしくない。
それなのに恨むどころか『恩人』だと思うあたり、ゼルもかなりお人よしだな。
「ねぇ!いいこと思いついたよ!みんなで魔力を込めた水晶石をプレゼントするのはどうかな?」
うわぁ。
いらねー。
「いいわね!それならお店には売っていないし、私達の気持ちがこもっているもの。」
「それと一緒に、みんなでメッセージカードを書いて渡すのはどうかな?」
「ホリーくん、ナイスアイデアだわ!それ採用!」
俺の意に反して、お礼とやらがどんどん決まっていく。
自分宛のメッセージを自分で書くのは、想像しただけで寒い。
「僕は面倒なので、書きませんよ。」
「そっか、だったら強要しないよ。フレイくん以外に書かない人はいる?」
どうやら俺以外はみんな書くらしい。
あのタクトですら、メッセージを書くようだ。
「じゃあフレイくん以外は、今度メッセージカードと水晶石を準備しようね。」
俺へのプレゼントの準備に、みんなは張り切っている。
....プレゼントを受け取った時、俺はどうリアクションを取ればいいんだ?
「それより、カタリーナさんが話していたもう1つの大事な話って何ですか?」
話が逸れていたので、本題に戻す。
「そうそう、そっちも重要なのよ!実はね...。」
「「実は?」」
「何と、聖ソラトリク教団に関する重要な手がかりを見つけたの!」
「えっ?!カタリーナちゃん、それってどういうこと?」
「この前、みんなでアスオ鉱山へ行ったでしょ?その時、タクトくんとゼルくんと私で、鉱山の中を調べに行ったの。」
「カタリーナ、いつの間にそんなことをしていたんだい?」
「そ、それは...秘密です!」
流石に、夜にこっそり許可なく鉱山に入ったことは、言いづらかったようだ。
「とにかく。アスオ鉱山の中を調べていた時に偶然、聖ソラトリク教団のシンボルが書かれた箱?を見つけたの。で、その中には人が入っていて、今は宮藤くんがその人を保護しているの。」
「箱の中に人か。なんだか只事ではない話だね。」
「だから今度、宮藤くんにお願いしてその人と会わせてもらう予定なの。」
「その、箱の中に入っていた人って、どんな人なの?」
「黒目黒髪の堀の浅い目鼻立ちで、まるで日本人のような見た目の女性だったわ。」
それを聞いたライラ達は、目を大きく見開いて驚いた。
「ニホン人みたいってことは、もしかしてクドージンさんやカタリーナちゃんと同じで、異世界からやってきた人ってこと?」
「それはまだ分からないわ。今度会った時に聞くつもりよ。」
「聖ソラトリク教団は、ニホン人と何か繋がりがあるのかな?僕が見たクドージンさんの記憶とも、何か関係がありそうな気がするよ。」
殿下が見た俺の記憶というのは、俺がゼルに憑依して教団から逃げた時の記憶のことだろう。
カタリーナに質問するライラや殿下とは反対に、ホリーは真剣な面持ちで考え込んでいた。
「まさか、もしかして....」
「ホリーくん、どうしたのですか?」
「えっ?いや、何でもないよ。」
俺が話しかけた途端、ホリーは笑って誤魔化した。
「とりあえず、私を含めてみんな色々聞きたいことがあると思うけど、それについては今度会った時に聞きましょ。」
その後、俺達はゼル経由で宮藤迅と会う日を決めた。
日程調整の結果、来週の休日に寮のカタリーナの部屋に集まって会うことになった。




