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転生魔王の正体は?ー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですー  作者: サトウミ


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【100】第22話:記憶喪失(3)

朝の授業が終わり、昼食を取った後、昼から実技テストが始まった。

クラスのみんなは、実技テストのため第一アリーナへと集まった。


「それじゃあ、早速テストを始めるね♪まずはやってみたい人ー?」

「はーい!」


大きな声で挙手したのは、黄緑色の髪のガタイのいい男だった。

そういえばアイツ、昼間にレックス殿下やカタリーナ嬢と一緒にいたな。

カタリーナ嬢達と仲が良いのだろうか?


「おい、アイツは誰だ?」

「あぁ、タクト・ブレイブですか?隣国キョウシュー帝国に住む伝説の勇者の息子です。ちなみにあっちは双子の妹のライラ・ブレイブです。」

勇者の息子か。

だから実技テストに自信があるのか。

だけど妹の方は自信なさげに俯いている。

まぁ、女だから実技テストが怖いと思うのも無理はない。


「じゃあタクトくん、装置に触れて魔物を召喚してね♪」

タクトは指示通りに装置を動かすと、大きくて強そうなドラゴンが召喚された。


「おっ!アメジストクルーエルグレイスドラゴンを召喚するなんて、やるじゃん♪さすがはユシャくんの息子だね。」

「へへっ。」

褒められて照れ笑いすると、タクトは剣を構えてドラゴンへと立ち向かった。


風雅炎神光雷斬ふうがえんじんこうらいざん!」

そう叫ぶと、タクトの剣は神々しい光を纏った。

そしてタクト高らかにジャンプすると、その剣でドラゴンを真っ二つにした。

それと同時に、凄まじいほどの熱風が、剣を中心に周囲へと広がった。


「おぉ〜!まさか一瞬で倒しちゃうとは、ビックリだ♪タクトくんは文句なしのS評価だね。」

「よっしゃ!」

勇者の息子という肩書きは伊達じゃないな。


「それじゃ、タクトくん以外にやってみたい人はいる?いなかったら順番に見て行くよ。」

「はい!僕、やります。」

手を挙げたのは意外にも、フレイ卿だった。

あれだけ嫌そうにしていたのに、もしや気が変わったのか?

『どうせしなければいけないのなら、早めに終わらよう』という算段なのかもしれない。


「じゃあフレイくん、装置に触れて魔物を召喚して。」

「はい。」

フレイ卿が召喚したのは、タクトとはまた別の、大きくて強そうなドラゴンだった。


「おぉ!ブラッディスカーレットドラゴンか。さっすがセージャちゃんの甥っ子♪」

だが褒められた当の本人は、ドラゴンを見て苦しそうな表情を浮かべた。

噂ではかなりの実力者のようだが、大丈夫か?


「しゃ、初級光魔法(シャイン・スフィア)初級水魔法(アクア・スフィア)初級風魔法(ウィンド・スフィア)初級土魔法(サンド・スフィア)!」


フレイ卿は初級魔法を色々試すも、ドラゴンには一切効いていない。


「すみません先生!降参ってできますか?」

手も足も出ない相手に、フレイ卿は助けを求めるように教師へお願いした。


「おっ、もう諦める?ギブアップはできるけど、その分評価は下がるよ?」

「それで構いません!」


教師は転送装置を使って、召喚された魔物を還した。


「ありゃ〜。相手が悪かったね。戦闘結果は良くないけど、召喚した魔物の強さも加味して、評価はB+にしておくよ♪」

全然戦えていなかったのにB+ということは、あのドラゴンは相当強いのだろう。


「ハハッ、いい気味!普段威勢の良いことを言ってるけど、魔物相手にビビるなんて情けない!」

「しかもブラッディスカーレットドラゴン相手に初級魔法で挑むなんて、賢い俺達には到底思いつかない戦術だな。さすがは半分平民の血が混じっているだけのことはある。」


ここぞとばかりに俺の取り巻き達はフレイ卿を嘲笑った。


「お前ら、フレイ卿は記憶喪失なんだから本調子じゃなくても仕方ないだろ。」

「いいんです、レオン様。僕が怖気付いて逃げ出したのは事実ですから。あんな無様な戦い方をしたのですから、半分平民だと馬鹿にされて当然です。」


擁護する俺とは反対に、フレイ卿は罵詈雑言を受け入れている。

さっきのドラゴンに惨敗したことが、よほどショックだったようだ。


「他にチャレンジする人はいる?」

教師が聞いても、誰も手を挙げない。

ということで、その後は順番に実技テストを受けることになった。


召喚される魔物は、生徒によって様々だった。

タクトやフレイ卿のようにドラゴンを召喚する者もいれば、スライムやベビーラットのような雑魚を召喚する者もいた。


第二王子のレックス殿下は流石と言うべきか、タクトと同じアメジストクルーエルグレイスドラゴンを召喚し、一瞬で倒していた。

もちろん、評価はSだ。


カタリーナ嬢の戦い方も見ていて面白かった。

召喚されたサンダーケルベロスの群れを『圧縮』の一言で次々と潰していった。

あの魔法は便利そうだから、俺も使ってみたい。


「次は、レオン・コーキナルくんだね。準備はいい?」

「はい。」

とうとう俺の番か。

何が召喚されるのか、期待と不安を胸に、転送装置を操作した。


すると召喚されたのは、ブラッディスカーレットドラゴン...の群れだった。

しかも召喚された魔物はそれだけではない。

アメジストクルーエルグレイスドラゴンや、他にも手強そうなドラゴン達が、群れごと一斉に召喚された。


その光景に呆気に取られたのは俺だけではなかった。

クラスの全員が、口をぽかんと開けて召喚された魔物達を眺めていた。


とにかく、召喚された以上はコイツらを倒さないと。

一体一体倒すのも面倒だし、まとめて倒せないだろうか?

俺は試しに召喚されたドラゴン全てに、カタリーナ嬢が使っていた圧縮魔法を試してみた。

するとドラゴン達は、まるで真っ赤な花火のように血を四散させて肉塊があちこちに飛び散った。

これだけバラバラになれば、生きているドラゴンはいないだろう。


「先生、終わりました。」

俺は振り返って教師の顔を見る。

すると、さっきまでの飄々とした態度から一変し、目を大きく開いたまま表情が硬くなった。


「あの〜。先生?」

話しかけても反応がない。

....もしかして俺、なにかやらかしたか?


とりあえず、召喚した時の状態に戻した方がいいのだろうか?

と言っても、ドラゴン達は殺してしまっているし。

ダメ元でドラゴン達を蘇生できないか魔法を試してみると、あっさり蘇生できた。


それと同時に、クラスメイト達が一斉にざわざわと騒ぎ始めた。


「嘘だろ!」

「さっき、確かに死んだはずなのに?!」

「『3つの実現不可能な奇跡』が...そんな馬鹿な!」


よかれと思って蘇生してみたら、余計に場を混乱させてしまった。


「先生、起きてますか?」

俺が再び声をかけた途端、教師はまるで石化の魔法が解けたかのように動き出した。


「凄いよレオンくん!蘇生魔法が使えるなんて。ボクはてっきり、別の子がクドージンくんだと思っていたけど、まさかキミだったとは。」

「クドージンくん?」


「あ!ごめんごめん、こっちの話。それより、いくら転送装置があるとはいえ、あの数のドラゴン達を還すのは骨が折れそうだから、もう一回倒してもらっていい?」

「はい。わかりました。」


結局、倒したままで良かったのかよ。

やれやれだ。

俺はもう一度、ドラゴン達を圧縮した。


「うひゃぁ〜。もう一回見ても、凄い光景だね。ボクですらこんな荒技、絶対に真似できないよ。評価はもちろん、S+だね♪」

今までの生徒の中で一番の評価だ。

今のところ魔法は思い通りに使えるし、実力テストでも学年2位になっていたくらいだから、以前の俺はそれなりに優秀だったようだ。


「凄いです!さすがはレオン様です!」

「『3つの実現不可能な奇跡』ですら実現してしまうなんて、世界中を探してもレオン様の他にはいません。」

取り巻き達は実技テストの結果に、俺以上に喜んでくれた。


「ですが水臭いですよ。あれ程の実力がありながら、我々にも教えてくださらないなんて。」


「え、そうなのか?記憶を無くす前の俺は、お前らの前であんな魔法を使ったことがなかったのか?」


「はい。初めて見ました。」


ということは、まずい事をしてしまったか?

記憶がなくなる前の俺は、何か事情があって実力を隠していたのかもしれない。


「お前らにはすまないが、さっき見たことは忘れてくれないか?」

「えっ...?」

「わ、わかりました。」

取り巻き達は戸惑っているようだが、俺からの頼みということもあってか、すんなり了承してくれた。


実力テストは難なく終わったものの、疑問ができてしまった。

なぜ俺の実力を周りは知らない、もしくは隠している?

その理由によっては、俺は今窮地に立っている可能性もある。


そういえば教師が『クドージン』だとか何とか言っていたが、それが関係しているのだろうか?

兎に角、今後魔法を使う時は慎重に使おう。

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