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異世界の薄幸少女にチート霊が憑依しました  作者: バッド
3章 旅する巫女

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71話 ダンジョンのようです

 霧に覆われますが、イザナミちゃんが片手を振るうとあっさりと消え去る。神気を使ったんですね、たいした力です。


「これは一体全体なんなのです? 黄泉比良坂の先になんでへんてこな世界があるのですか? そろそろゲームをしても良いですか?」


「ゲームは我慢してください、この先にあるのは、この世界の隠されしダンジョンです」


 闇の中に篝火がポツンポツンと置かれているゴツゴツとした坂道。本来は黄泉に繋がる道です。


「黄泉比良坂は次元の狭間に存在します。その道の先を少し変えるだけで、もっとも近い次元の狭間に接続することもできるんです。過去に、天界に接続してみたのは良い思い出です。結界が貼られていて入れなかったんですけどね」


「そーゆー裏技的なことに、妾の領分を使わないでほしいのです」


「この坂道は私の財宝部屋に繋がったりもしてたんですよね、不思議なことに」


「妾は寛大なので、気にしないのです。では、探索するのです」


 イザナミちゃんは、早口となり目を魚群で泳がせつつ、歩き始めます。私たちも後に続く。ざらざらとした荒れた大地を踏みしめて、その先に見える世界へと足を踏み入れる。


「おぉ〜、なんですか、ここ? ガラスの建物ですよ、皇女様」


「ふわぁ、なにこれ〜。あそこ見て建物がたくさん!」


「でも、霧があってよく見えないよ?」


「モンスターはいるのかな?」


 ヒナギクズが感心した声をあげますが、たしかに感心するだけはあります。


 全面ガラス張りのドームが配置されています。しかもその規模は大きい。小さな町なら一つくらい簡単に入りそうです。


 ドームはいくつも連なっており、ドーム同士は細い通路で繫がっている。なんというか、SF映画チック。


「むむむ、帝都でも見たことがない建物です。これはなんでしょうか?」


 なんとなく悔しそうなガーベラが、周りを見て、ドームの脇に置かれている柱に近づく。


「『檜野植物総合研究所』と書いてありますね。これは檜野スカイシティに繫がるダンジョンなのでしょうか?」


「ふむ……ドーム内も見えるが、植物が繁茂しているようだ。このダンジョンは植物園というところか。植物園だとあまり採取に期待はできないだろうよ」


 ガーベラの問いに、おったんが顎を擦りながら不機嫌そうに言う。たしかに植物園だと、高価そうな品物は採取できないでしょうね。


「まぁ、頼まれていた依頼はこれでオーケーです。このダンジョンの入口を檜野スカイシティに繋げれば終わりでしょう。おったん、依頼達成の報酬交渉もお願いしますね」


「まぁ、ダンジョンとなれば金が落ちるだろうよ。瘴気により檜野スカイシティが汚染されないようにしないとな」


「それは問題ありません。黄泉比良坂をこっそりと設置しておきますからね。見た目には数ミリ程度の坂道にして、その坂道をフィルターにします。集まった瘴気はモニャモニャに吸収されて、害のない霊気へと変えておきますからね」


「ふむ……ダンジョンは自動で瘴気を吸収するので、そのシステムは都合が良いな」


 おったんはピンと来た模様。そうなのです、瘴気をダンジョンは集めます。巨大であればあるほど、その吸収率は高い。ラショウのダンジョンが瘴気だらけの理由です。


 あの賢者の石を吸収して、そのシステムに気づきました。そして、吸収システムに私の吸収システムを噛ませれば、瘴気は濾過されて私は霊気を回収できてウハウハです。しかも、ダンジョンに入る人たちは黄泉比良坂を通るので、生気も少し徴収できます。素晴らしいシステムですね。


 このシステムはラショウにも通用します。これで何もせずとも経験気が入ります。まぁ、ダンジョンの維持にほとんど費やすので、そこまでウハウハとはならないでしょうけど。


「安全なシステムが作れたところで探索といきましょう。美味しい果物とか採取できるかもですしね」


「触手系はともかくとして、寄生系には気をつけないとだぞお嬢様。ファンガスの例もあることだしな」


「おったん様は、私が触手に襲われたらお願いいたします。帝都でそのような漫画を読みました」


「その漫画の内容は聞かないことにする」


 ガーベラの怪しいセリフに胡乱げとなり、おったんは肩を竦める。ガーベラの積極性はなかなか見ていて面白いです。


「では、先頭はおったん、残りは後衛となり」


「その前にこの霧は邪魔なので消しちゃうのです」


 私が指示を出す前に、イザナミちゃんが手に神気を集めて、うざったいように神術を発動させようとする。


 私とおったんの目には見えます。その手のひらに膨大な神気が収束されていき、漏れ出る残りが私に吸収されていく様を。カスタードプリン味ですね。


「っと、味の感想を口にする前に、それ駄目です、イザナミちゃん!」


「ほへ?」


『黄泉の虚ろなる腕』


 イザナミちゃんはなぁにと疑問顔になっても、とりあえずといった感じで腕を振るう。いつもいつもとりあえずで行動するとろくなことにならないのに、懲りない子です!


 虚ろなる闇がイザナミちゃんの手のひらに生まれます。その闇の塊は胡桃のように小さな球体。ですが、その威力はとんでもないことを私は知っています。


 辺りを覆う霧が小さな闇の球体に集まっていく。その吸引力は途轍もなく、視界が晴れて建物がはっきりと見えてくる。


「ひょえー、吸い込まれちゃいます〜!」


「皆さん、這いつくばって耐えましょう」


「バタバタしてて面白いのでつ!」


 暴風が巻き起こり吹き荒れると、霧がどんどん吸い込まれていくが、合わせて私たちも吸い込まれそうになっていく。約4名だけは楽しそうですが。


「ちっ、皆はこちらにこい!」


 おったんが舌打ちして指を鳴らす。


『第5悪魔術:魔神結界』


 ドーム状の結界がおったんの周囲に展開されて、イザナミちゃんの力を防ぐ。私には効果がないですけど、皆は少し危険ですからね。


「きゃー、髪の毛バタバタでしゅ! おもちろーい!」


 結界に入ったのに面白がって、幼女たちは顔だけ結界から出したりしてます。風で髪が靡いて、とっても楽しそう。気持ちはわかります、髪がバタバタ靡くの楽しいですよね。でも、私には効果はないので、少し寂しいので、自分でバタバタさせて良いですかね。

 

 もう止めても遅いので、諦めて様子を見てると、世界にヒビが入っていきます。ピシリピシリとガラスにヒビが入るように、眼前の空間がひび割れる。空間がズレていき、植物研究所が空間ごと文字通り崩れていく。


 物理的に壊れるのではない。空間が、建物はそのままで組み合わせば元通りになるパズルのように割れていった。


 ━━━━そうして、パリンと音がすると、完全に空間が破壊され、眩しい光が私達は目を瞑るのであった。


          ◇


 世界を覆う眩しい光が消えていくと、様相が変わっていた。


「あ、あれ? これどうなっているんですか? 霧が晴れてダンジョンが綺麗になりましたけど……なにか空気が違うような?」


 霧が晴れて、太陽の陽射しが指している。その光は自然のもので気持ちが良い。


 ヒナギクさんたちは不思議そうな顔になります。人間の魂が感覚的におかしかった世界が正常化されたと反応しているのでしょう。


「………今日はダンジョン探索はなしです。ここで物を採取すると復活しないですからね」


「復活しないんですか? でもダンジョンは一週間経てば元通りになるのではないですか?」


「今はイザナミちゃんの力で解除されています。まずはもう一度ダンジョンとして稼働させないといけないですが………」


 くるりと後ろを振り向くと、皆へと伝える。


「後ろの街を探索しにいきましょう」


 私たちの後ろ。ダンジョンへと潜入したときに、解除されるなら、本来の檜野スカイシティに戻るはず。広がる森林があるはずですが━━。


 私の目に入る光景は、高層ビルが聳え立ち、家屋や店舗が見える世界。以前の地球にそっくりな光景が広がっていたのです。


「これ、どうなってるんですか!? 街のダンジョンですか? としたらモンスターが隠れているのですか?」


 アスファルト舗装された道路を歩き進み、少し先に進むと普通の街並みが広がっている。コンビニやレストランがあるし、一軒家からマンションまで、ありきたりの光景です。


「いえ、ここにモンスターはいないはずです」


「ねーねー、こーじょしゃま。お菓子採取していーの?」


 コンビニの棚に並ぶお菓子類を見て、ミハルちゃんたちが指を咥えて物欲しそうに瞳をうりゅうりゅさせる。


「気持ちはわかりますが駄目です。ここはお金を支払わないと手に入らない世界なんです」


「そうなの? でも、だれもいないでしゅ」


「そうですね。見る限り、誰もいないようですね」


 ミナツちゃんの言う通りです。高層ビルにマンションは家屋に店舗と様々な建物が広がり、車道には車両があります。


 ですが、車同士が衝突しクラクションが鳴り響き、店舗には車が飛び込んでいる。


 ですが、警察も来なければ、消防車も救急車もその姿を見せません。道に歩く人も存在せず、録画なのだろうテレビの音がどこからかするだけで、誰も人がいないのです。


 喫茶店にはコーヒーの湯気がのぼり、お皿に置かれているサンドイッチは作りたてに見えて乾いてもいない。


「ここはダンジョンだから人がいないのではないですか? このような立派な街並みは帝都でも見たことがありませんが」


「人がいないのは、ダンジョンだからではないのです。状況を確認するためにも、そこのコンビニに入りましょう。きっと新聞があると思いますし」


 ポテポテと皆でコンビニに入ると、新聞を手に取る。電子全盛時代でも、まだまだコンビニには新聞があるので安心です。


「この電子マネー使えると思うです? お金をはらえば大丈夫です」


 ポケットから一万円札を取り出すイザナミちゃん。この世界は円ではないかもですよ。


「ふむ……これではないか?」


 おったんが新聞を手に取ると見せてくる。


 それは一面に大きく載っていた。


『宇宙から落ちてきた宇宙人の機械。再現ができるか!? 近日中に量産して稼働開始。資源の枯渇の救世主となる!?』


 写真も撮影されており、数十メートルはある正方形のモノリスが写っており、そして研究員らしき人がこの間の『賢者の石』を誇らしく掲げている。


「これがどうやら原因のようですね。宇宙人の機械なんて、ファンタジーでSF映画みたいで良いですね!」


 どういう仕組みかはなんとなく想像できますが、なるほどファンタジーですよね。ワクワクしちゃいます。


「ん〜、これが宇宙人の機械です?」


「そのようですね。とりあえずこの機械を見つけるのが目的になるかもしれません。そこら辺のスマホも回収して、植物園に戻ることにします。植物園の賢者の石を稼働させて、元の世界に戻ることにしましょう」


 時間のズレが発生するかもですからね。さっさと戻りますよ。

申し訳ありません。ストックが尽きたので、毎日更新が無理となります。隔日で更新できればなぁと思います。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  地球のようで微妙に違う多元世界とアクセスしたような霧の向こう側、新聞の情報からはこちらの世界で大量生産されたような賢者の石とそのオリジナルと言われる宇宙から飛来した巨大なモノリス(´…
[一言] イザナミは、やらかし体質! 異世界旅行も幼女がいれば大丈夫!?
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