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異世界の薄幸少女にチート霊が憑依しました  作者: バッド
3章 旅する巫女

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61話 イカと表現されるからわからないんです

 ギミック満載のペントハウスです。これ、いったい誰が建設したのでしょう。悪意を感じるんですけど。


「ここの本棚の本を順番に動かすと、奥の隠し扉が開くんですが……差し込むはずの本が足りません」


「探せということですか」


 敵をなぎ倒しつつ、攻略を進めて、今度は書斎です。上に行くにはこの書斎に隠されているスイッチを押さないといけないらしく、しかもそのスイッチは本棚の本を順番に動かさないと現れないらしいです。


 止めに動かさないといけない本が足りないと。完全にゲームです。このペントハウスは完全に趣味で作成されてますね。


「ゲームなら、本を集めるために奔走しないといけないのでしょうが、私には意味をなしません」


『霊帝の手、本变化』


 本棚の溝に合うように、本を作ってちょいちょいと。キオの言うとおりに動かすとスイッチがゴゴゴの部屋の真ん中に出てきました。ポチリと押下してクリアです。


「探す暇なんかありません。ここの設計者には申し訳ありませんが、ちーと一択です」


 もう飽きました。私はパズル要素嫌いなんです。すぐに飽きちゃいます。


「次が問題です。あちらの通路に回って、こちらにあるスイッチと同時に押さないと」


『霊帝の手』


 同時押し終わり。


「ここはもっとも厳しい通路です。透明な通路が短時間だけ出現するので、上手く乗りながら」


「出口にあるレバーを引けば固定されるタイプですか」


『霊帝の手』


 崖のように暗闇の通路があり、そこに透明な床が現れるようですが、奥のレバーをガシャコンと引くと床が固定されました。余裕でクリアです。


「……………」


 なんとなく納得のいかない顔のキオ。


「手を取り合ってクリアを目指すパターンだと思うのですが。絆が深まり、愛が生まれるパターンじゃないのかなぁ」


 小声でなにか呟いてますがスルーします。


「これはギミック多すぎだろ。プレイヤーにしつこいとクレームつけられて炎上するパターンだぞ。ギミックは多ければ良いというわけじゃないんだよ」


「なにかアトラクションみたいです。でも、これはクリアできる人いるんですか?」


 おったんは愚痴り、ヒナギクさんは普通に疑問を口にします。キオは気まずげに顔をそらすのでクリアできる人はいなさそう。


「でも、たしかにギミックが多すぎです。これはあと何個くらいあるんですか?」


「えぇと、あとは………義眼をドアに翳すと開くドアです。義眼の持ち主はたしか……」


「村長の義眼はリメイク版では換金アイテムになったから時代遅れだ。この扉を斬れば良いんだろう」


 少し先にある頑丈そうな金属製の大扉に、スタスタと近づくと、おったんは裂帛の声をあげて抜き手も見せない速さで剣を振るいます。


「きぇぇい!」


 金属製の大扉に何条もの輝線がぴしりと奔り、大扉は細切れとなり、ガランガランと床に落ちます。


「簡単だったな。さて、辺境伯に会いに、アヒャー!」


 そして、間抜けな悲鳴をあげると、一歩進んで床に開いた落とし穴に落ちていきました。さすがはおったん。肝心な時に離脱してくれます。


「しまった! スタート地点に戻ってしまう落とし穴がまだありました!」


 早く言ってほしかったです。


「クソゲー確定ですね。昔はよくありましたが、今時スタート地点に戻す罠は仕掛けられませんから。プレイヤーか怒りますので」


 スタート地点に戻す罠は最悪です。イザナミちゃんがよくワープ式のダンジョンで怒ってました。私がダンジョンを作るときには、スタート地点に戻る転移罠を仕掛けさせたのに、酷いお友だちでした。


「これでは命術を使わないでとっておいた意味がまったくないんですけど、おったんらしいので仕方ありませんか」


「少しは心配をしてほしいところだが?」


 落とし穴から冷静な声が聞こえると、おったんが飛び出してきました。おぉ、そのまま滑り落ちなかったんですね。


『当たり前だろ! 少し命術を使ったんで、もう残り少ないけど。ここで強くてかっこいい俺が離脱したらイメージがギャグキャラになるからね! お断りだからね?』


『なかなか役どころを理解していますね。拍手しても良いですよ』


『お嬢様の拍手を受けると、もれなくろくでもないことになるから遠慮しておく。猿のおもちゃに代わりに拍手させてくれ』


 パンパンと埃を払い、おったんは見かけはクールです。さっき、アヒャーとか言ってたのに。


「申し訳ありません、テンナン子爵。先に伝えておくべきでした」


「………」


 おったんに頭を下げるキオ。だがムスッとした不機嫌そうな顔で許す言葉を返さないおったんに、あわわと焦ります。


『おったん、おったんのことです』


 フォローに入る良い子なレイちゃんです。おったんは少しだけ肩を震わせると、特に気にしないかのように鷹揚にキオの肩を叩きます。


「あぁ、ゆ、許します。お気にならずに、怪我も負いませんでしたしね」


 ハッハッハと笑うおったんですが、自分がテンナン子爵だと、完全に忘れてましたね、あれは。


「ありがとうございます、テンナン子爵。この扉を開ければ、父上のところですので」


 キオが安堵して、少し先にある装飾過多の大扉に手をかけると開いていきます。


 そしてキオの父上。イカリッドが待ち構えて………。


「あの……キオ? あれがイカですか?」


 謁見の間なのか、赤い絨毯が敷かれていて、壁には家門を表す旗がぶら下げられてます。天井は高く、教会の礼拝堂のようで、ステンドガラスが天井に備え付けられていて、光が奥へと降り注いでいる。そこには領主が立つのでしょう、神秘性と威厳を見せつける予定の作りだと思います。


 しかし、今そこには当主らしきものの残骸がありました。


 身体が木の根となり、木を削って作ったような雑な人の顔の模型が残る姿があります。そして、木の根は壁を這い回り、そこかしこに毒々しい花の蕾を膨らませています。


「はい、そのとおりです。あれが父上に違いありません。なんという姿に……。それに貴様は何者だっ!」


 キオが悲しみと怒りを混ぜ合わせた表情で木の根をにらみ━━その隣りにいる男へと怒鳴ります。そうなんです、当主の隣に黒ローブの人が立っているんです。誰でしょうか? 黒幕?


「ふむ……予想よりも遥かに辿り着くのが早いな。これは想定外だ。セキュリティシステムも稼働させたのだから、この場所に踏み入ることができる者は暫くはいないと思ったのだが」


 黒ローブの男が嗄れた声で私たちを見ていますが、そんなことよりも気になることがあります。


「あの、イカじゃないですよね? あれは木の根じゃないですか?」


「これは貴様の仕業かっ! 答えろ!」


「そういえば、イカのようなとか言ってたかもな。たしかに顎から木の根を生やしていたら、イカのようだと説明するかもしれん」


「この場所にいることが証明となっていると思うがな」


「そうですよね。宇宙人的な敵だと思ってたのに残念です。まだ一度も会ったことないですし、かなり残念ですよ」


「なぜこのようなことを! 名を名乗れ!」


「まだ宇宙人には会ったことないからな。地球以外に生命体っていても、宇宙船は作れないらしいぞ」


「愚かな小僧だ。なぜわざわざ名前を教えなくてはならぬ? 教えても意味がないというのに」


「それは屁理屈ですよ。今もきっと宇宙人はふよふよと宇宙を旅しているはずなんです。私は挨拶にバームクーヘンとドイツ語でするつもりですよ」


「だーまーれー! お前ら、そこの二人! 緊迫感のある話し合いを邪魔するな! 訳がわからないことになるだろうが、愚か者め!」


 地団駄を踏んで、怒る黒ローブのお爺さん。私たちが話を聞くつもりがないのが悔しそう。


「だって興味わきませんし。どうせ自己顕示欲と承認欲求の塊の発言をするのでしょう? 肝心な内容には言及せずに、のらりくらりと話をするつもりでしょう? そーゆーの飽きちゃいます。話を聞く必要ないですよね?」


「ムガー! 教えてやろう、この男を魔物に、いや、魔王に堕としてこの森林を瘴気の森に変えたかったのだ。それにより霧の世界が発生するはずだからな!」


「なんで霧の世界が作れるか目的は教えてくれないんでしょう?」


「霧の世界の先には世界があるはずなのだ! そこに至れば、我らは新たなる世界へと到達する! その崇高なる実験をしてたわけだ! フハハどうだ、驚いたろう?」


 ペラペラと話してくれる黒ローブのお爺さん。煽りに弱いことがわかりました。


「なっ、そんなことで父上を魔物にしたのか!」


「そのとおりだ。そして、貴様らもこれから魔物へと変じることになる! くらえ、我が研究の叡智を!」


『瘴気の霧』


 お爺さんが懐から正方形の石の塊を取り出すと、黒い光を発します。と、壁から瘴気が噴き出してきて、あっという間に私たちは躱す間もなく包まれちゃいました。


「くくく、どうかね? これは『賢者の石』。瘴気を操る古代の魔導具だ。魔物へと堕ちるが良い!」


「くっ、まずい、コアのエネルギーは殆どない! レイ姫お逃げをっ!」


 ここまで熱線を多用してきたキオの強化服はエネルギーが空っぽとなり、障壁が明滅して消えそうで、キオは焦った顔になる。


 瘴気の霧は禍々しく辺りを包み込み身体に浸透してきます。


「フハハハ! ここまで来るのにエネルギーを使ったのだろう? どこまで耐えられるか見ものだ………な?」


 哄笑するお爺さんですが、最後は疑問符をつけて、訝し気となる。


 なぜならば、瘴気がシュルシュルと吸い込まれていくからです。私に。


 だって、私にとっては植物に対する太陽の陽射しのようなもの。全部吸収しちゃいます。


「むむむ、少しだけ濃いチョコレート味。ではなく、神の加護を得し私にはその程度の瘴気は通じません。全て神女の私が食べちゃ、浄化させていただきました!」


 でも、食べたのは外聞が悪いので、消化をする、いえ、浄化をする神女レイちゃんです。


「そうか! レイ姫は瘴気を浄化するんだ、この程度効くはずがない!」


「浄化? そんな力を持つものが今になって現れるとは……素晴らしい、研究に値する! 連れて行くとしよう!」


「そうは行くか! 僕が相手だ!」


 黒ローブの男は狂喜し、キオが立ち向かい飛び出します。まるで王道展開ですが………。


「私たちはイカさんを倒しますか」


「イカじゃないけどな」


 とりあえず当主を元に戻しましょう。二億円ですしね。

予約ミスってました〜

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― 新着の感想 ―
[一言] ほんとモヤッとする会話だけ延々とするNPC多すぎる。 つまりどういうことだよ!
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] シリアルとシリアスのせめぎあい どちらが勝つか
[一言] 幼女無双回でちた おったんそこは落ちてスタートから爆走して追い付くパターンでしょうが!?
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