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異世界の薄幸少女にチート霊が憑依しました  作者: バッド
2章 ダンジョンの巫女

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46話 大量の戦果を確認します

 結局、私たちはダンジョン探索を終わりにしました。私はテンナン子爵との戦闘で限界でしたし、戦果は充分でしたからね。


 現在はガタゴト揺れる歩兵輸送用装甲車で街に帰還中です。


「これも生体認証か。一度認証を通せばロックするまでは他の人間も使えるようだが、軍事用ならば不便極まりない車だな」


 車のハンドル横にあるパネル部分が指紋認証でした。それを見て、ハッと鼻で笑いながら、おったんが運転してます。他の人は免許持ってませんでしたしね。


「おったん様は蟲の運転もおできになられるのですね」


「あぁ、飛行機から三輪車まで、全ての運転ができるようにしているからな。それよりも帝都でもこの車は蟲と呼ばれていたのかね?」

 

 助手席に座るガーベラがおったんに興味深げに尋ねるので、反対に情報収集をする。


「このような丸っこい車は蟲と呼ばれておりました。わたくし帝都出身ですので」


「車名か、二つ名か………まぁ、どうでもいいか」


 事あらば帝都出身を自慢するガーベラを、ちらりと見ると嘆息して前に向き直り、つまらなそうな表情となり興味をなくして、おったんは運転を続けるのでした。


『おーい! この世界、車が普通にあるらしいぞ。なぁなぁ、きっとスポーツカーに乗って、私の愛馬は凶暴ですとか言う奴もいる予感しないか? ちょっと面白そうな世界だよね』


 内心は違ったようですけど。さすがは私の分体、考えることは同じでした。


「ところで、この車も魔石を使うのでしょうか?」


 当然ながら、永遠燃料ではない装甲車。運転席に表示されている。燃料ゲージは64%と表示されています。そして、おったんがちらちらと燃料ゲージを確認しているのも目に入ります。とことんセコい性格なのです。


 私の視線に気づいて、フンと鼻を鳴らすおったん。


「仕方あるまい。この魔石の予備があるかどうかで、移動手段が変わるのだからな。で、兵士長、この車の魔石はあるのかね?」


「あぁ、戦闘用魔道具は貴族が個人で管理してましてわからないのです。テンナン子爵も大事に自室かどこかに隠しているはずでして。お役に立てず申し訳ありません」


「まぁ、そうだろうな。馬鹿でもなければ、盗まれる危険性は少しでも削るだろうよ」


「テンナン子爵は見かけによらず、凄腕の戦士でした。帝都の武道大会で本戦に出場した動けるデブだとも自慢してましたし、そこら辺は用心深かったんでしょう」


 隊長さんとおったんの会話に加わると、ガーベラが目を見開き身じろぎする。とんでもなく驚いたようです。


「本戦ですか!? 帝都の武道大会はレベルが高く、本戦に出場できるのはほんの一握りです。テンナン子爵はそんなに強かったのですか……」


 武道大会って、そんなに大変な大会だったのですか。たしかにテンナン子爵は歴戦の戦士でしたから納得です。


「あれ? でもテンナン子爵がオークの呪いにかかったのはここに来てからじゃ?」


「武道大会の頃もきっと平均体重よりかは数キロ太っていたということでしょう」


 私の言葉にヒナギクが不思議そうにするので、すぐに完璧なフォローを入れておきます。そこは不思議に思わないで良いです。


「帰ったらすぐにテンナン子爵の部屋を家探ししますので、姫殿下とおったん様はご報告をお待ち頂ければと」


「よしなに」


「兵士長の仕事ぶりを見せてもらえるというわけだな」


 ピシリと背筋を伸ばし、なんだか完全におったんとテンナン子爵を別にしているような隊長さんの敬うような話しぶりですけども、記憶喪失のおったんに気を使っているのでしょう。


「レイ姫様、どうでしょうか、この不肖ガーベラが暫くおったん様のお世話をし、現状のご説明や貴族としての礼法などをご教示できれば幸いです」


 意外なことをガーベラは希望してくるなぁと思いながらも……ふむ、どうしましょうか?


『メイドはいらないよ。私は執事とかと勉強会を開くから安心してくれ。ほら飲み会に女の子が混ざると、どうしても女の子中心になっちゃうだろ? 言動の厳しい昨今、セクハラやアルハラに管理職は気をつけないといけないから、そうしたら隅っこで寂しく酒を飲むことになるし』


 危機管理能力の高いおったんのセリフです。


「良いでしょう、ではガーベラさんは暫くおったんの側仕えとします。しっかりと働くように」


「ありがとうございます、レイ姫様。必ずやおったん様のお役に立てるように頑張ります!」


 フンスと鼻息荒く、ガーベラは頭を下げて気合い充分です。私のために頑張ってくれるとは、ガーベラも忠臣になったものです。


『忠臣じゃないと思うよ? ねぇ、あのメイドの目を見てくれない? 肉食動物のように爛々と光っているよ? なんなら、獲物を前によだれを垂らすライオンの姿も見えるよ!?』


『大丈夫ですよ。昨今の研究ではライオンは獲物を横取りするタイプが多いとか。生きの良いおっさんはきっと狙いません』


『全然安心できないよ? ライオンは普通に狩りもするからね? ねえ、聞いてる?』


 被害妄想が激しすぎです。ガーベラは私の側仕えで忠臣です。おったんに取り入って、追放した男爵家に復讐してやるとか考えているはずありません。


 さて、雑音はシャットアウトして、そろそろ街に到着します。前方にお友だちを抱えたメイドズ発見。どうやら追いついちゃったようです。


「ただいま〜、皆今帰りましたよ〜」


 屋根を開いて身を乗り出すと、笑顔でぶんぶん手を振ります。


 抱えられて運ばれているお友だちの目がきらりんと光って、油断していたメイドズからするりと抜け出すと、猛然とダッシュしてきました。


 轢かないように、おったんは慌てて装甲車を停めると、満面の笑顔でお友達たちは装甲車に飛びついて、よじよじと器用に登ってきました。


「こーじょしゃまだ!」


「お菓子手に入れまちた?」


「おいていっちゃうなんて酷いでつ」


「だーいぶ!」


「受け止めちゃいますよ!」


 キャッキャッと飛びついてくるお友だちたちを受け止めて、中に戻る。お友だちたちは私がお菓子を持ち帰ったと信じ切っているようで、おめめをキラキラさせています。


 もちろん私はお友だちの期待を破ることなんかしません。


「じゃじゃーん! リュックサックの一つは駄目になりましたが、他はたっぷり持ってきました!」


 たくさんのジュースやお菓子をリュックサックから取り出して、ムフフと胸を張っちゃいます。これだけの量を回収するのは大変でした。


 悪戯っぽく微笑むと、なにが入っているんだろうと、興味津々で覗き込んできます。


「これはなんでしゅ?」


「ポテチですね、コンソメ味」


 食べてみるのが良いでしょう、百聞は一食にしかずといいますし。バリッとな。


「この鉄の棒はなんでつか?」


「これはオレンジジュースですね」


 飲んでみるのが良いでしょう。百聞は一飲にしかずといいますし。パコッとな、


「木でりゅ?」


「バームクーヘンですね。チョコレート味」


 試してみましょう。百聞はバームクーヘンにしかずといいますし。ビリッとな。


「果物の絵がたくさん載ってるよ!」


「飴玉ですね。果物の味」


「いい加減にしろ」


 おったんに、パコッと殴られてしまいました。


「子供におやつを食べさせすぎると、夕飯が食べられなくなり、結果両親に怒られることになる」


 意外と良識のあるおったんです。悪魔王なのに、気の利く人ですけども、叩かなくてもいいでしょうに。


「はぁい。でも開けたのは全部食べないとですからね。皆さんで食べましょう!」


 レッツおやつパーティーターイム!


「車に乗ってお友だちとおやつを食べるって、夢だったんです。叶っちゃいました」


 イザナミちゃんと幽霊列車に乗って遊んだりしましたけど、あれは亡霊たちとの百鬼夜行みたいな感じだったのでノーカンです。


「このポテチというやつ、塩が利いていて美味しいです、皇女様! おいもなんですね、パリパリして、簡単にパラパラしちゃいます」


 ポテチを食べたのは生まれて初めてだったのだろう、ヒナギクさんが不思議な感触ですねと、大事に味わおうと端から齧ろうとして、パリッと砕けちゃうので、慌てて食べているので、とっても微笑ましい。


「ふ、分厚く切って二度揚げをすると、面白いことになるぞ。なんと揚げすぎて焦げるんだ」


 そこでお芋が膨らむといわないのが、哀しきおったんらしいです。ポムとかボムとか名前は忘れましたけど、お芋を風船のように膨らませるのは高度な技術が必要なんです。


「ですがよろしいのでしょうか、レイ姫様。これらのお菓子は高価な嗜好品です。商人に売れると思うのですが………」


「この土地の異名を忘れたのですか? 呪われし土地ラショウですよ。ダンジョンからお菓子が手に入ると言っても、他の街の人々は魔に汚染されていると思って、食べることはないでしょう。もちろんこれらは添加物は入っているので健康的とは言いませんが、魔に汚染されることはありません」

 

「添加物って、なんですか?」


「お菓子をある程度腐らないようにするとか、まぁ、お菓子類のほとんどに使われているので、気にする必要はありません。あまり気にすると禿げちゃいます」


 本当に気にするなら、あらゆる食べ物を注意しないといけないのですと、私はバームクーヘンを慎重に剥がしながら説明する。ふふふ卓越した妙技を見せちゃいますよ。


 あ~んと、雛みたいに小さなおくちを開けて、ワクワクしながら待っているお友だちにプレゼント。端っこから、ちまちまと食べるお友だちですが、ちょっと微妙な顔です。


「あう、あんまり味しないでしゅ」


「舌にのせて、ゆっくりとあじわうのです。舌で味を感じるのではなく、心で感じるのです! そうしなければ繊細なるバームクーヘンの味はわかりません」


「あい! モニュモニュしまつ!」


「ムニュムニュ」


「モキュモキュ」


「ハクハク」


「そうです、その味がわかりし時、貴女たちは新たなる力を手に入れることができるでしょう! バームクーヘン師範の私が明言します!」


 力説して、五人でモキュモキュ食べます。これならば大事に食べられるから安心なのです。


 レイちゃんとお友だちたちが輪を作り、キャッキャッと遊ぶ中で、車は再度停車する。


「到着したようだぞ。どうぶつの解体祭りのようななんとなく恐ろしい感じもするが」


 門前には多くの人々が先程手に入れた獲物を解体しており、おったんは半眼となる。たしかに少しだけ恐ろしい光景かもしれませんが━━━。

 

 明日のために、あの肉は使うのですのでと呟いて、装甲車を降りるレイ一行であった。


 そうして手に入れたお菓子やジュースは皆へと振る舞われて、収穫祭の事前パーティーへと早変わりするのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 縮むところが焦げるw 押す事を知らずに膨らむのを待ってた?
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] ガンガン開けようぜ!
[一言] おっさんはお菓子もそこまで食べられなくなるんだよな。 子供よ楽しんでください。
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