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12. レッツクッキング!

 朝食が終わると、そそくさと母さんは外出していった。


 今日はエミリーさんも週に一度のお休みの日なので不在だ。

 ワンオペだが、この機会を逃すと次にいつ母さんが外出するかはわからないので、ここぞとばかりに旅の間に食べられるようなものを作り置きしようと思う。


 幸い、母さんは夕方まで帰ってこないはずなので、心持ち余裕はある。


 手洗いとクリーンを済ませ、作り置き用に分けていた材料をストレージから取り出す。

 そうしてぼくがキッチンで下ごしらえを始めると、リビングで遊んでいたリュカが気づいて近寄ってきた。



「にぃに、ごはん、ちゅくってる?」

「そうだよー」

「りゅーも!おてちゅだい、しゅる!」



 食欲旺盛で食べることが好きなリュカは、最近お手伝いにも興味津々だ。

 きらきらした青いお目々で「りゅーも、やりゅ!」と言われると、かわいいのだが困ってしまう。



(ぼく1人で作った方が早いんだけどな〜。まぁ、仕方ない)



 大人しく遊んでいてくれた方が本当はありがたいのだが、断れば断ったで泣いてしまうので、リュカにも簡単なお手伝いをしてもらうことにする。



「それじゃー、リュカくん。にいにのお手伝いしてくれるかなー?」

「あーい!」



 リュカがふんすと張り切って、右手を挙げる。かわいい。


 さっそくリュカにエプロンを着せる。生成りのシンプルなものだが、胸にフェルト生地でできた黒猫のワッペンが縫い付けられていて、リュカのお気に入りなのだ。


 リュカの手洗いとクリーンを済ませ、まずは豆や野菜を洗ってもらう。

 本人は「んしょ、んしょ」と一生懸命なのだが、いかんせん水遊びしているようにしか見えない。


 その様子を尻目に、ぼくも大鍋3つにウォーターとヒートで熱々のお湯をはり、1つにリュカが洗ってくれた豆を入れて放置する。水戻しは流石に時間がかかりすぎるので、時短して豆の水煮を作るのだ。


 残りの鍋にはそれぞれ芋と卵を入れて、火にかける。

 豆・芋・卵はあればあるだけ助かる食材だし、今回は色々なメニューに化ける予定だ。


 そこまでやってから、すっかり水浸しのリュカのエプロンをドライで乾燥させ、次のお手伝いをお願いする。



「さて、次は玉ねぎの皮むきできるかな〜?」

「できりゅ!」



 幼児というのは飽きやすいものだが、リュカはまだまだやる気があった。



「じゃあ、お願いね。でも疲れたら、にいににちゃーんと言うんだよ?わかった?」

「あいっ!」



 一度、お手本をかねてリュカと一緒に玉ねぎの皮をむいて見せる。

 リュカの小さな指先で皮をつまむのは難しいようだったので、先にちょっとむきやすくしておいてあげたら、あとは黙々と上手にむいていた。

 意外とこういう集中力の必要な作業は合っているのかもしれない。


 その間に、ぼくは野菜を切ったり、粉類などをざっくり計量しておく。


 リュカのお手伝いを見守りながら、ぼくも順調に作業を進めて行くと、リュカから「ぐうぅぅ」とお腹がなる音がした。

 少しお昼には早い時間だが、お手伝いをいっぱい頑張ったからだろう、リュカがお腹を空かせてしまったようだった。



「りゅーのおにゃか、ぐーぐー!」

「お腹すいたんだね」

「おにゃか、しゅいた〜」



 とりあえず、リュカに果物をあげて先に食べてもらっている間に、手早く昼食を作る。


 丸々大きくて、ずっしりとした冬キャベツを粗く千切りにする。

 それに、チーズ・小麦粉・水・塩を入れて混ぜ、フライパンで蒸し焼きにする。


 中までしっかり火が通ったら、トマトソースをかけ、目玉焼きをのせる。なんちゃって洋風お好み焼きの完成だ。

 これに、ゆでた鶏肉と温野菜のサラダ、豆のスープを添えれば、急いで作った割にはちゃんとした昼食になる。



「リュカ、お待たせ〜。よくかんで食べるんだよ」

「あい!いたっきまーちゅ!」



 ほっぺを丸くして、もりもりと食べるリュカの食いっぷりをみるのは楽しい。

 ぼくとしては、やっぱりお好み焼きにはソースがいいとか、出汁や山芋が欲しいとか、ないものねだりをしてしまって味に集中できないのだが、「おいしい!」と食べてもらえると、作ってよかったと思う。



「リュカ、おいしい?」

「おいちい!りゅー、にぃにのごはん、しゅきっ!」

「はは。それはよかった」



(お手伝い頑張って疲れてるだろうし、食べ終わったらお昼寝しちゃいそうだな)



 リュカは結局、お好み焼きをもう1枚おかわりして、ごちそうさまをした。本当に、小さな身体のどこに入っているのか。それほどよく食べる。

 昼食後、リュカはお手伝いの続きをすると少しぐずったが、予想通りまぶたはもう閉じてしまいそうである。



「お昼寝して、起きたらまた手伝ってね」



 そう約束して、抱っこしたリュカをゆらゆら揺らしていたら、すんなり眠ってしまった。

 今日はぼく一人なので、様子が見られるようにリビングに毛布を敷いて、リュカを起こさないようにそっと寝かせる。


 こうなれば、ぼくの勝ちだ。

 リュカにはすまないけれど、起きる前にすべて終わらせてしまおうと、怒涛の勢いで残った作業を片付けていく。

 下ごしらえはほぼ終わっているので、あとは煮たり焼いたりするくらいだ。






 そうして、なんとかぼくはリュカの目が覚める前に、作り置きを作り終わった。


 サンドイッチ、芋のガレット、豆と芋のクロケット、お好み焼き、蒸しパン、鶏肉と豆のトマト煮込み、野菜のスープ、シチュー、ニョッキ、マッシュポテト、マッシュ豆、ゆで卵、蒸し鶏、温野菜などなど…。

 我ながら、短時間でよくもここまでの品数を作ったものだと、謎の達成感がある。



(リュカの食いつきがいいもので、飽きがこないように種類多くって作ってたら、なんだか作り過ぎたかもしれない…)



 備えあれば憂いなし。ぼくとリュカだけではなく、ドニ氏が食べることもあるかもしれない。そうぼくは自分を納得させ、リュカをお昼寝から起こしにかかった。

※ 英語的には「レッツクック!」が正しいですが、今回は聞きなれたキャッチコピーの「レッツクッキング!」を採用しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] リュカは健啖家というよりも燃費が悪いだけのような?スキルが関係してるか。
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