06:キャシー姫様、お化けが怖いようです
「ふにゃぁー! にゃあにゃあにゃあにゃあにゃあっ」
猫人族独特の悲鳴を上げて、キャシー姫様が逃げ惑っているです。
可愛い。本当に可愛すぎるのです。
キャシー姫様は五歳下で、僕にとっては妹のようなもの。
それでいて恋心を抱いているのですから不思議なものです。
そして今日は、せっかくのデートなのでちょっと悪戯するのです。
「う〜ら〜め〜し〜や〜」
「にゃぁー!!!」
薄気味悪い森。
ここにお化けが出るという噂があったので、来てみたのです。
もちろん本当にお化けがいるわけではないですが、僕が直々にお化けになって見せてキャシー姫様を怖がらせようという目論見。これは見事に成功したようです。
「ハービー、ハービー! どこにゃの! 助けてっ!」
効いてる効いてる。
よし。じゃあそろそろ僕が行ってあげるとするのです。
僕は風の音を巧みに使って化けていた妖怪から元に戻ると、キャシー姫様の方へ行ったんです。
「キャシー姫様、ご無事だったですか?」
「ハービー!」
キャシー姫様の頬が安堵に緩んだ瞬間、僕は嬉しくなるんです。
たまには意地悪もいいですね。
「お化けは僕がやっつけるので、姫様は背後に――」
しかし、
「みゃあああああああ!」
「うわああっ!?」
気が緩んだ直後のことです。
僕らの目の前には、とてつもなく巨大な何かがいたんです。何か――そう、悍ましい化け物が。
噂は本当だったんですか!? あれは確実に僕の悪戯じゃないです!
逃げろ〜。
どうやら僕もキャシー姫様も、お化けは苦手なようです。
でもたまには怖い体験も楽しいかも?
キャシー姫様は「きゃ、キャシーは怖くなかったにゃ!」とむくれていて、もうとっても癒やされるのです。
今度またここに来ようと僕は決めたのです。
ちなみに。
お化けの正体が魔物の一種だったのですが……それを知るのはもっと後のことです。




