03:こっそり城を抜け出して
「脱城は容易いのにゃ!」
「僕の力がないとできないのです。僕に感謝してほしいです」
「ハービーはほんとに甘えんぼにゃんだから〜」
風魔法で無事に城を抜け出した僕たち。
確か脱城はこれで百回目になるのです。……我ながらなんという脱城数。恐ろしいです。
でも今までは大抵城下町までしか行かなかったので、冒険とやらがどんなものになるかは少し不安。
ですがきっとキャシー姫様がいるなら大丈夫です。
僕は姫様の耳を指で撫でくり回し、快感を噛み締めつつ次の行動を考えることにするのです。
……さて。脱城したはいいものの、冒険って何です?
いくら何でもこの国を出たら危ないです。
外の世界には姫様のような獣人を嫌う人間もいるからです。
ちなみに僕は人間と犬のクウォーターで、匂いに敏感なのと尻尾以外は人間なんです。なので無問題ですけどもね。
でも国内で冒険と言ったら何がいいですかね。
僕としては、キャシー姫様とラブラブができるデートスポットがいいのですが……。
「ハービー、また変な顔してるのにゃ。何考えてるのにゃ?」
純粋無垢な茶色の瞳でまっすぐ見つめて来られると、キュンとしちゃいますです。
ああ……最高。
「ほーらほら、また顔真っ赤! 暑いのにゃら休まなきゃってキャシーいつも言ってる!」
「ごめんなさいです暑いわけではないです。熱いのです」
「やっぱり暑いんじゃにゃ〜い」
キャシー姫様には全く通じない。そこが可愛いところです。
今度は首を撫で撫ですると、憤慨する彼女は少しだけとろんとした顔に。楽勝です。
「も〜仕方にゃいな〜。じゃ、早速冒険するのにゃ!」
「キャシー姫様はどんなものを冒険と考えてるのです?」
「海を越えて空を渡り雲の上の神様たちと会って、で、世界のエイユーになるのにゃ!」
うーん。
まず海を渡るのはできたとして、空に行くのは無理ですし、英雄になると言ってもそう簡単ではないです。というか不可能です。
……まさか数年後にこの全部を果たすとは思っていませんでしたが、それはまた別の話です。
ともかく、
「わかったのです。じゃあ、こうするのはいかがです?」
僕は、可能な範囲でできる安全な冒険――もといハラハラデート計画をキャシー姫様に提案したのです。




