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第84話 もう1人のライバル

「え、ランチ?いいの?愛翔君と桜ちゃんデートじゃないの?」

高野の問いかけに桜はややバツが悪そうに答える。

「違うよ。なんで?」

「だって楓ちゃんが居ないから。てっきり2人が付き合い始めてて今日はこの後デートなのかと思ったの」

「楓は部活が忙しくて来られなかっただけよ」

「それでも、高校になって愛翔君が帰国してもその距離感なのね」

愛翔の右腕に抱きついている桜を見ながら高野はしみじみと口にした。

そこでふとグラウンドの時計を見た愛翔が

「ごめん、そろそろ時間だから俺は行くね。さっきも言ったようによかったら練習の後でランチでも行こう」

見学スペースから出ていく愛翔に手を振り見送る桜に高野が声を掛ける。

「それで、桜ちゃん愛翔君から返事はもらったの?」

桜がピクリと肩を揺らす。そして時間を置き首を横に振る。

「ええ?愛翔君らしくないね。忘れたってわけじゃ」

あまりに意外と高野は目を見開いた。

「違う。あたしのせいなの。あんな嫌がらせに負けて愛翔を裏切ったあたしが」

桜は高野に自らに降りかかった事態を大まかに説明し

「だから、今のあたしには愛翔と付き合う資格なんかないの」

それを聞いた高野はガバッっという感じで桜を抱きしめた。

「そんなことない。そんなの桜ちゃんのせいじゃない。悪いのは嫌がらせをしてきた相手と、それに便乗したその男よ。桜ちゃんが引け目に感じることなんて何もない」

高野の慰めに、それでも桜は目を伏せる。

「それでも、あたしが愛翔の返事を聞く前に剣崎君とつきあってしまった事実は消えないもの」

「なら、はっきりと愛翔君に言ったらいいんじゃなの?あれは精神的に弱っちゃってた時にそれを利用されたんだって。それでも桜ちゃんが気になるなら。裏切るような形になっちゃってゴメンってちゃんと謝ったらいいんじゃないかな。愛翔君ならそれだけで十分に許してくれると思うけど。どうかな?」

高野が桜を優しく抱きしめたまま慰める。

「う、うん。そうね。愛翔ならそれで……」

桜はそこまで口にし、そして申し訳なさそうに言い添えた。

「でも、ひろみんは良いの?あたしの味方しちゃって。ひろみんだって愛翔の事……」

「うん、今でもわたしも愛翔君の事好きよ。でも桜ちゃんのことも友達だと思ってる。だから恋のライバルとして正々堂々と勝負したいの」

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