第71話 記者会見とは宣戦布告
「ここに住吉愛翔君の当クラブ、ステラスターFCへの加入をご報告させていただきます。」
日曜日の午後、愛翔はステラスターFCU18のユニフォームを身にまとい記者会見場に居た。
地元のテレビ局、スポーツ雑誌、スポーツ新聞、地元一般誌等、それでも10社を超える報道陣が集まっていた。
「みなさんもご存知の通り、住吉愛翔君は先日までアメリカで活躍されており、MLSへのスポット参戦も果たした将来有望な選手です。我々ステラスターFCは、彼が日本に帰国したのを機にユースU18育成枠への登録を行いました。彼は今後当ステラスターFCにて活動していくこととなります。では本人からの意気込みを語ってもらおうと思います」
そこで愛翔は深呼吸をひとつしたあとマイクの前に歩み寄った。
「ご紹介いただきました、住吉愛翔です。本日はお忙しい中、私のステラスター加入記者会見にお越しいただきありがとうございます。私は家庭の都合により中学1年の9月よりアメリカに渡り、アメリカで生活しつつサッカーに打ち込んでまいりましたが、このたびグラスハイトハイスクールで10年生を終了したのを機に帰国し日本で活動していくことといたしました。そんな私にこちらステラスターFC様ほか数チームが声を掛けていただきましたが、様々な諸条件を検討させていただきました結果、ステラスターFC様にてお世話になる事といたしました。本来であれば、もっと早い時期に加入報告をさせていただくべきところでしたが、私事により、遅れてしまいましたこと、お詫び申し上げます。また、それを受け入れていただきましたステラスターFC様にはお礼申し上げます。今後は高校生とステラスターFC様のユースU18の活動を両立させ頑張っていく所存です。みなさま応援よろしくお願いします」
司会者がマイクをとった。
「それでは僅かではありますが質疑の時間をとらせていただきます。ご質問のあるかたは挙手をお願いします」
数人の記者が手を挙げたため、マイクがまわった。
一般的な質問が数件あり、愛翔はそれぞれに無難に答える。そして
「NHTVテレビの神楽です。住吉さんは先ほど私事と言われましたが、それはSNSにアップされたイジメと何か関係がありますか?」
愛翔は、わずかに逡巡するも
「そうですね。それの解決に向けた取り組みをしていたとだけ言っておきます」
「相当に酷い内容だったようですが、なぜ住吉さんが動いたのですが、学校がするべきことと思うのですが」
愛翔はすっと目を細め
「校長先生はじめ、教頭先生、クラス担任の先生、生活指導担当の先生に直接お話したのですが効果的な対策をとっていただけるようなお返事がいただけなかったので私自身が動くことにしました」
「それにしても何故住吉さんが動かれたのですか?被害にあわれた方は住吉さんとどのようなご関係なのでしょうか?」
「一般人ですので名前などへの言及は控えさせていただきますが、私の大切な人です」
「それは恋人のような方と考えてよろしいですか?」
「いえ、恋人という関係ではありませんが、幼いころからお互いを大切にしてきた人です」
「なるほど幼馴染さんなのですね。それは寄り添う気持ちになっても不思議はありませんね。ありがとうございました」
その日の夕方、愛翔が昼の記者会見をテレビでみていたところに”プルルルル♪~”愛翔のスマホが呼び出し音を鳴らした。
「はい、えぇそうですが。ふむ、でも俺は言いましたよね。『俺たちは自分で自分の身を守ることにします』って。ええ、特定は出来てますよ。わかりました。では月曜日の放課後にこれから言う人たちをその保護者と一緒に集めてください。それと……」
スマホの終話ボタンを押すと愛翔は通話アプリをたちあげる。数コールで相手が出た。
「おう楓、俺だ。どうやら釣れた。明日の放課後に学校の会議室だそうだ。おばさんも一緒に来てもらえるように頼んで……え?もう連絡が来てたのか。まぁそういう事なので。あとひと踏ん張りだから頑張るぞ」
再度通話アプリを立ち上げる愛翔、また別の相手に掛けると、やはり数コールで相手が出たようだ。
「桜、そっちにも学校から連絡あったか?うん、やっぱりそうか。じゃぁあとひと踏ん張り頑張ろう」




