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第70話 友達?

「住吉愛翔です。この度はお返事が遅くなり申し訳ありません。貴クラブにお世話になりたいと思いご連絡させていただきました…………


……はい、では、日曜日午前10時に事務所にお伺いいたします。はい、よろしくお願いいたします」

そしてもう1件電話連絡をする。

「……住吉愛翔です。この度はお返事が遅くなり申し訳ありません。いえ、大変申し訳ありませんが貴クラブからのお申し出は辞退させて頂きます。いえ、条件面ではなく……

……はい、わかりました。はい?今日ですか。……ええ、では18時に、はい。では失礼します」


18時、愛翔は駅前のホテルのラウンジで人と会っていた。

「では、どうしてもだめなのですか?」

「貴クラブでも、当然に青少年の健全育成を掲げていらっしゃいますよね。そのスカウト担当窓口のお子さんがこれではね。何よりターゲットが俺の大切な人達ですので。とてもわだかまりなくお世話になることは無理です」


そして翌金曜日。クラスの女子生徒が1人欠席をした。理由は『自宅の階段で足を踏み外しケガをした』ため。また火曜日からそれまで毎日行われていた3人の机へのいたずらが止まり、そしてクラス内で挙動不審な女子生徒が数人見られた。




「愛翔、これは?」

「あぁ、それはその奥のクローゼットに入れておいて」

愛翔に言われたように箱に入ったままの衣類を丁寧にクローゼットにしまう楓。

「こっちの箱は何が入ってるの?」

「それはサッカー関係の……っておいおい大丈夫か桜」

桜は積み重ねた箱を動かそうとして重さに耐えられずひっくり返してしまっていた。

土曜日、忙しく中々進まない愛翔の引っ越し後の片付けを手伝いに来た桜と楓。

「なんだかんだ言って荷物あるね。あ、これなんのトロフィー?」

「あ、そんなところに入ってたんだ。アメリカではいろんなリージョンでのリーグ戦があってね。これは、5州リージョンのリーグ戦で優勝した時のトロフィーだよ」

「あ、これ向こうにいた時の?」

楓がアルバムを見つけた。

「え、あたしも見たい。見せて見せて」

桜も作業を中断して顔を寄せてくる。

「あれ?愛翔1人で写ってる写真ばかり……」

「あぁ、向こうに行ったばかりの頃は言葉もうまく通じなくてね、中々仲間をつくれなかったんだ。それでも半年くらいしてどうにかコミュニケーションを取れるようになって少しずつ仲間に入っていった感じだったんだよ」

「愛翔が、ボッチなんて想像できないわね」

「しかたないだろう。1カ月の付け焼刃の英会話でどうにかなるものじゃなかったんだ。それにアメリカの学校ってクラスって概念が無いから周りに固定している人がいないからね」

「あ、これストリートバスケ?」

「ああ、むこうで初めてできた友達でカイル・レイ・モリーナ。サッカーのクラブの休みにストリートバスケのコートでシュート練習してたら誘ってくれてね。地区の有力チームのセンター。それからずっと一緒にストリートバスケを楽しんでたんだ。カイルと友達になってからどんどん英語でのコミュニケーションもうまくとれるようになってね。カイルがいなかったら半年じゃすまなかっただろうなぁ」

「あ、本当だ、このカイル君が写り始めてからいろんな人が一緒に写るようになってるね」

「これは、クラブチームのキーパーで……」

「こいつら、甘い物好きでさぁ……」

次々とアルバムのページをめくる楓と桜。その手があるページで止まった。

「この女の子2人」

「あの時の2人よね」

楓も桜も写真の中で愛翔に笑顔で抱きつくクリスとケイトに視線が止まる。

「ね、愛翔。この2人の女の子はどういう人?」

「ああ、クリスとケイト。スキップしてハイスクールに入った時に知り合った友達だよ。こっちのハニーブロンドの背の高い子がクリス、こっちのストロベリーブロンドの小柄な子がケイト。どういうわけか気に入られてさ」

「どちっかが彼女だったりするの?」

「いや、どっちも仲の良い友達。だいたい桜に……」

そこまで言って口を閉じる愛翔。

「あたしに?」

「いや、なんでもない。向こうで仲良くというか、あっちが年上だからかね、しょっちゅう付き合おうとか揶揄われてたけど、友達だよ」

「それ本当に揶揄っていただけかしら……」

桜がそっとつぶやいた言葉は愛翔の耳には届かなかった

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