第68話 SNS
「住吉君、大変だよ!!」
「おう。加藤君おはよう。大変って何かあったの?」
登校した愛翔たち3人を見かけた加藤が慌てたように駆け寄り声を掛けてきた。
「そんな落ち着いている場合じゃないよ。教室で机が大変なことになってるんだよ」
その言葉を聞いた桜が愛翔の腕にギュっとしがみつく。
「桜、大丈夫。予定通りだ」
愛翔は、そっと周りに聞こえない声で囁き桜の頭を撫でる。
そして3人が教室に入ると、そこに展開されたのは
「いやぁ、さすがに予想を超えたな」
愛翔が苦笑しつつ見回す。
「あいとー、どうしよう」
桜が泣きをいれつつ愛翔に抱きつく。
酷い落書きをされ、びしょ濡れになった3つの机。
「ま、とりあえず、証拠確保だな」
そう言いつつ、スマホを取り出す愛翔。いくつかの操作をしたうえで3つの机をいくつものアングルで撮影していく。そして、
「おっと、操作間違って俺のSNSに投稿しちゃった。やばいなぁフォロワーさん6桁超えたとこだから大丈夫かな。一応被害者側だってコメントだけ入れとくか」
ひとりごとと言うには大き目の声で愛翔が呟いた。クラスの様子をうかがいつつ放った愛翔の言葉に顔をひきつらせた女子3人、顔をそらした女子1人。
それを確認した愛翔は桜と楓に声を掛ける。
「桜、楓、とりあえず職員室行くぞ」
移動中に愛翔のスマホが通知にブルブルと震え続けた。それに気付き愛翔は通知を切る。
職員室の戸を開けると愛翔が声を掛ける。
「1年B組住吉愛翔入ります。1年B組担任の篠原先生と生活指導の鈴木先生いらっしゃいますか?」
「では、前回桜へのイジメがあった時に行ったのはホームルームでの口頭による注意のみだったと。誰が行ったのかの特定や、再発防止への対策はされなかったということですね」
愛翔が3人を代表して交渉を進めていくけれど、アメリカのディベート訓練を受けて来ている愛翔に日本の一般教師が対応しきれるものでは無く……
「い、いや、まだ対策も検討中で……」
「どのような対策を検討されているのですか?1週間もの時間があれば対策案の1つや2つ出ているでしょう。いや、検討中というからには5つだの10だのと言った対策案があってどれが効果的かの判断をしているということだと思います。実際に行う対策でなくて結構です。検討中の対策リストを見せてください。」
「い、いや。それは生徒に見せられるものでは無くてだな……」
「こちらはこの写真のように一方的に嫌がらせをされているのです。学校に来るのが不安になる状況ですよ。それに対して安心させていただけるような言葉さえないのですね」
「い、いや、きちんと対策を……」
「いつまでに、どのような対策をしていただけるのですか?」
「いつまでと言われても」
「とりあえず2日待ちます。その間に対策と期日を連絡してください。それをしていただけなければこちらで勝手にやらせてもらいます」
「わ、わかった。2日だな。対策用にその写真をこちらにもらえないか」
「わかりました。メディアを準備し明日にもお渡しします」
「そ、それとだな、その住吉のスマホ上のデータを削除してもらいたい」
「なぜです。削除する必要性を感じませんが」
「いや、うっかりSNSに流出するといけないだろう」
「別に個人情報が乗っているわけでもない現場写真がSNSに流出したところでどうということは無いでしょう」
「い、いや、それでもだな」
「そもそも手遅れです。先ほど操作ミスでSNSに上げてしまいましたから」
「な、削除をしなさい」
「正当な理由を伺いたいのですが。ネット上には同様の画像は大量に存在します。それでも敢えて削除を要請されるのであれば明確な理由をお聞かせいただきたい。」
と、そこまで対決姿勢を見せていた愛翔がフッと表情を緩め。
「とは言っても先生たちにも立場もあるでしょうからSNS上の写真は削除しましょう。それで良いですね」
「わ、わかった」
その場で愛翔のSNS上の画像を削除してみせる愛翔。
「では2日後にお返事をいただきます。失礼いたします」
SNS上
Aito-Sumiyoshi:学校からの要請により画像削除しました。




