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第67話 仕掛け

「ちょっと、住吉君。華押さんは彼氏がいるから遠慮するって言ってなかったかしら」

「ん?ああ深谷さんか。言ったね」

「それなのに、朝からの華押さんとの距離感は何?」

「単に遠慮する必要がなくなった。それだけだよ」

「それどういうこと?」

「深谷さん、この前もそうだったけど、俺たちのプライベートに踏み込み過ぎじゃないか?俺は深谷さんとそんな事まで話すほどに親しくなった記憶無いんだけど」

一瞬眉を顰めたものの深谷が続けた

「住吉君は知らないかもしれないけれど、華押さんも橘さんも光野高校で天使様、女神様と称される有名人、アイドルなの。そんな人がお付き合いさえしていない男の子と、そ、そのイチャイチャするのを放置するわけには……」

「なんだそれは、桜も楓もひとりの普通の女の子だ。そんなくだらない理由で大切な幼馴染を束縛される必要は認められないね」

「な、……」

思わぬ愛翔の強い言葉に絶句する深谷。それでも言葉を続けた。

「そ、そんな事を言ったところで、周りがゆるすわけじゃないから」

「逆に聞こうか?なんで普通の女の子が普通に生活するのに周りの許可がいるんだ?どんな権利があって人の生活を壊そうって言うんだ?」

睨む様な愛翔の視線と言葉に今度こそ黙り込む深谷。

「そんなくだらない事を言うやつは……」

そこまで言うと”バン!”愛翔は左手の手のひらに右手の拳を勢いよくぶつけた。


 放課後クラスメート達が部活に帰宅にと離れ無人となった教室の隅で愛翔がゴソゴソと仕掛けをしていた。

”パンパン”と手をはたき自席に座るとスマホを手に何やら操作を始める。しばらく何かを確認するような操作をしていたけれどおもむろに

「これでいいだろう」

自分のスクールバッグを手に取ると教室を出ていった。


校門にもたれてスマホを弄っている愛翔を遠巻きに生徒たちがとりかこんでいる。

ひとりの男子生徒が意を決したように近づいてきた。

「あ、あの住吉愛翔さんですよね」

愛翔はスマホから顔を上げる。

「ん、そうだけど君は?」

「ぼ、僕は1年A組、加藤健治かとうけんじと言います」

「うん、その加藤君が俺に何か用かな?」

「あ、とその、住吉さんのファンなんです。サインしてもらえませんか」

「お、おう。俺クラスにサインねだるって珍しいね」

「そんなことないですよ。サッカーファンの中では住吉さんは既にレジェンドですよ。15歳でMLSにスポットとは言えフル出場したなんて、今までいないじゃないですか?」



「じゃぁ住吉さんは、これから日本で活動されるんですか?」

「まぁ活動っていうか、大学までは日本で出るつもりなんだよ」

「サッカーは学校で?それともどこかのクラブチームに入られるんですか?」

「一応クラブチームを考えてる。って加藤君同級生なんだからその敬語で話されると居心地悪いんだ。普通に話してくれないか?」

「ええ?そんな恐れ多い」

「いや、サッカーはサッカーとして俺は君と同じ1年生だからね。同級生に敬語で話させるってどんな俺様キャラだよ」

周囲で遠巻きにしていた生徒たちにざわめきが起きた。

「え?住吉さん、普通に話しかけていいの?」

「お、おい、あれだけ有名になってるのに、なにかえらくフランクな人みたいだぞ」

「こ、声掛けてみようかしら。お友達に、ひょっとしたらワンチャン……」


「あーいと。お待たせ~」

栗色のショートカットを揺らしながら囲まれている愛翔の右腕に飛びつくように抱きつく桜。

「気にするなよ。桜は部活だったんだろ」

「うん」

ハートマークが飛び交うような甘えかたで愛翔にすりすりと抱きつく。

「キャー」

周囲の女子生徒から黄色い悲鳴があがるなか、お互いの頬にキスを交わす愛翔と桜。周囲はますますヒートアップした。

そのうち一部女子から疑問の声が上がる。

「あ、あれ?あの子、天使様じゃない。たしかサッカー部のイケメン剣崎君と付き合ってるんじゃなかったの?」

「あ、本当だ。え?どうして?」

そんな声の上がる中、腰までの黒髪をなびかせて愛翔の左腕に抱きつく少女。

「愛翔、桜おまたせ」

「大丈夫だ。気にするなよ。楓も今日は部活だったんだろ」

そう言いながら楓とも頬にキスを交わす。

そこで愛翔は加藤に目を向け

「悪いな、待ち合わせ相手が来ちゃったから、今日は行くわ。これから気軽に声掛けてくれよ」

「え?えぇ?天使様だけじゃなく女神様まで?」

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