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第61話 キス

「やっぱり住吉君と橘さんて付き合ってるでしょ?」

「えと深谷さんだっけ?付き合っては無いけど。なんで?」

昼休み愛翔が楓と弁当を一緒に食べているところに声を掛けてきたのは、深谷千晶。

「だって体育の時間に、住吉君の活躍にあれだけ喜んで授業中ってことを忘れて抱きついていくなんて普通じゃないよ」

「う~ん、そうだなぁ。俺たち幼馴染3人はちょっと特別なのは確かだな。生まれた時から一緒に居て、楽しいことも辛いことも悲しいことも腹の立つことも全てを共有してきたからね」

「特別な関係だけど付き合ってはいない?」

「そう、普通の恋人よりもっと太い絆があるからね。桜や楓が白だと言えば、他の誰が黒だと言っても疑うことなく白だと信じられるくらいにね」

「それは、付き合ってなくてもキスしちゃうくらいってこと?」

「キスに拘るんだ?まぁ昔からキスくらいは普通にしてたから俺たちの間では普通の事だね」

そこまで聞いて深谷はグッっと声を改めた。

「じゃ、じゃぁお互いに恋人が出来たら?」

「まだこだわるんだ。お互いに恋人が出来たらそりゃ配慮するよ。だから桜には配慮して抱き締めたりキスしたりしてないからね」

「てことは以前はしてたんだ」

さすがに愛翔も眉を顰める。

「深谷さんに関係ないよね。さすがにその質問に答える気はないよ」

「ふぅん。やっぱりしてたんだ」

それに対して楓が不愉快そうな声を出す。

「深谷さん、さっきから何?私たち幼馴染の何か気に喰わないの?」

楓の剣幕に一瞬怯み

「いえ、その。ちょっと気になったって言うかその……」

「もう、良いわよ。教えてあげる。私も桜もファーストキスの相手は愛翔よ。なんならここでキスしてみせましょうか」

「お、おい楓」

「何よ愛翔。もうこういうの嫌なの。このところ誰が誰と付き合うだの。断ったら生意気だの。他人の気持ちを無視して……」

怒りをあらわにする楓に愛翔は、椅子から立ち上がりそっと寄り添った。

「楓、大丈夫。もう俺がここにいるから」

そう囁き抱き寄せる。

「キスして」

愛翔を上目づかいに見上げながら楓がねだる。

「おい」

「いいじゃない。キスしてよ」

愛翔は楓を抱き寄せ唇を寄せる。しかしチラリと周囲を見やるその視線に気づいたものはいなかった。

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