第44話 女子バスケットボール(県大会予選)
「今週の土曜どっか遊びにいかない?」
桜と楓に藤島が部活帰りに声を掛けてきた。
「理子とデートでもしてきなさいよ」
楓はそっけない。
「いや、たまにはみんなで遊びに行きたいなって思ってさ」
「賛成」
「たまには良いよね」
多賀と剣崎が同調し
「遊園地とかよくね」
男子3人でいきなり盛り上がり始めたところに
「ごめん、今週土日あたし部活の県大会なんだ」
桜が申し訳なさそうに告げる。
「私は、その応援に行くつもりなのよ」
「え、女子バス県大会出場だったんだ」
「桜がレギュラーに入って地区2位だったの。あなた達知らなかったの?」
楓が呆れたような表情をみせると、多賀が
「いやぁ、うちの学校って個人種目でたまに県に行く人がいるくらいで他はみんな地区で撃沈てイメージだったんで……」
などと言い訳を始めた。
「そういう言い訳って一番かっこ悪いよ」
理子がサクリと言葉で刺す。そして膝から崩れ落ちる多賀を横目に
「じゃぁみんなで応援にいかないか?」
剣崎が少しだけ積極性を見せる。その際なぜかチラリと藤島の様子をうかがっていた。
「そうだな、知らなかったお詫び兼ねてみんなで応援にいくのもいいんじゃないか?」
藤島も賛意を示すと、
「あたしも桜の応援に行きたい」
結局フルメンバーで桜の応援に行くことに……。
「桜ぁ、ファイトー」
試合開始と同時に楓が叫ぶ。
女子とは言えバスケットボール選手としては小柄な桜がコートを縦横無尽に走り回る。前に立ちふさがる相手を軽快な動きで翻弄する。ボールを持っていなくてもいつの間にかフリーでベストなポジショニングで攻撃の起点になっていた。
楓以外の普段の少しばかり人見知りな桜を見ているメンバーはあっけにとられている。
「か、華押さんってバスケットコートでは普段と別人だね」
多賀が絞り出すように呟き、
「桜、かっこいい」
理子がうっとりとしている。その横で藤島が剣崎に囁いている。
「お、おい聞いてないぞ、華押さんがこんなスーパープレイヤーだなんて。マジで狙うのか?」
その日2試合をこなした女子バスケットボール部は2勝し翌日の決勝リーグに駒を進めた。
「桜、おめでとう」
楓がニッコリと祝福をする。よこから飛び出し桜に抱きつき
「桜、おめでとう。凄くカッコよかったよぉ」
理子も夢中になっていた。
比して男子3人はむしろ運動部だからだろうか、やや引け目を感じるようで
「おめでとう」
剣崎が辛うじて祝福の言葉をつぶやいただけだった。
そんな3人を後ろに、楓が更に言葉を唇にのせる。
「2試合目の後半でやっとエンジン掛かった感じ?」
「う~ん、自分でも分かってなかったけど、受験で実戦から離れてたブランクが効いてたみたいね。やっと感覚が戻った感じかしら」




