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第33話 任期延長

「愛翔、ちょっといいか?」

土曜日の朝、愛翔の父、浩之が愛翔に声を掛ける。

「あれ。父さん土曜日の朝にこんな早く起きてるなんて珍しいね。何かあったの?」

「う、うむ。まあリビングで話そう」

リビングに移動すると愛翔は隣接したキッチンでコーヒーメーカーに向かう。

「父さんもマンデリンでいいかな?」

浩之に尋ねながらコーヒーメーカーに豆をセットする愛翔。

「朝ご飯もまだだよね。俺も食べるからついでに作ろうか?」

「ああ、頼む」

冷蔵庫の中を覗き、食材を確認すると卵と牛乳に砂糖を加えよく混ぜ卵液を作る。そこに半分に切り魔切込みをいれた食パンをつけこむ。つけ込んでいる間にサラダを作り、冷蔵庫からベーコンとチーズを取り出す愛翔。ベーコンをフライパンであぶり程よく火が通ったところでチーズと一緒に卵液のしみ込んだ食パンに挟み込む。

フライパンを替えバターを落とし溶かし、そこで焼いてクロックムッシュもどきが出来上がった。それを皿にもりつけ、サラダとコーヒーを添えてテーブルに出す愛翔。

「完成。簡単だけどいいよな」

「まったくこの2年半でまた更に手際がよくなったな」

「まぁね。そんなのはいいから冷めないうちに食べよう」

そして朝食を終え、2杯目のコーヒーを口にしながら

「で、父さん話ってなんなの?」

「実はな、父さんの任期が伸びそうなんだ」

「え、今年の8月までって話だったよね。どのくらい延びるの?」

「いや、まだ確定じゃないんだが、最悪2年ばかり延びそうだ」

暗い表情で黙り込む愛翔。

「それ、どうしても受けないと駄目なの?」

「会社のプロジェクトだからな、簡単には抜けられないんだよ。ごめんな」

桜との約束。手紙でのやり取りを思い浮かべる愛翔。

「実はさ、この前桜から手紙が来たんだ」

「おう、桜ちゃんか。元気そうだったか?」

「うん、それとね。楓と一緒に光野高校に入学したって書いてきてたんだ」

「光野高校と言えば結構難しい進学校じゃないか。ふたりとも頑張ったんだな」

愛翔は、そこで少し迷うような素振りを見せ、それでも言葉を続けた

「オレ、桜や楓と一緒に光野に通いたいんだ。それに大学だって日本の大学に行くのならそろそろ日本の高校に通った方が良いみたいだし」

愛翔の希望に浩之は目を見張り、言葉少なに答えた。

「父さんの仕事も簡単に代わるわけにはいかない。お前の希望も叶えてやりたいけど。少し時間をくれないか」

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