14話 友達
「あたしとお付き合いしてください」
高野の告白にある程度予想はしていたものの困惑を隠せない愛翔。それでも返事をする必要はある。
「高野さんが俺の事を好きだと言ってくれたことは、嬉しい」
「それじゃあ」
ぱっと花が咲くような明るい笑顔を見せる高野に
「でもごめん。俺は高野さんと付き合う事はできない。いや高野さんと、というより今のところ誰とも付き合うつもりはない。もっと言ってしまえば、正直なところ女の子と付き合うとか好きだとかいうのがまだよく分からないんだ」
一旦表情を曇らせた高野だったけれど、愛翔の付き合えない理由を聞き表情を戻す。そしてならばと続ける
「分からないだけで、あたしの事も別に嫌いというわけではないのよね?」
「当然だろう、俺は嫌いな人と友達になれるほど器用じゃないよ」
「それなら、お試しでお付き合いというのはどうかしら?」
「は?」
今度こそ愛翔はフリーズした。
「愛翔君は、付き合う事、女の子を好きになること、そういうのが分からないって言ったでしょ。それなら、あたしとお試しで付き合ってみて、それで経験してみるのはどうかな?」
その言葉に愛翔は首を横に振る。
「高野さんが言ってることも分からないじゃないけど、それは凄く不誠実だと思う。他の人がどう思うかは分からない。でも俺にはそういうのは無理だよ」
「そっか、わかった」
一瞬だけ高野は泣きそうな表情を見せるも、すぐに笑顔に戻る。その笑顔は少しだけさみしげではあったけれども
「お付き合いは断られたけど、友達のままでいいのよね」
「それはもちろん」
愛翔の即答にホッとした表情を見せる高野だったけれど
「でも、今日は先に帰るね。明日からまたいつも通りにするから」
そう言うとスクールバッグをつかみ小走りに図書室から出ていく。
高野を見送った愛翔は、ため息をひとつついて。
「ごめんな、高野さん」
本人に聞こえない小声でつぶやいた。
「待たせてごめんよ。帰ろう」
愛翔は校門で待っている桜と楓に声を掛ける。すっと左右の腕に絡みつくように抱きつくふたりは揃って愛翔に尋ねた。
「高野さん、なんの用だったの?」
愛翔は周りをぐるりと見回す。部活も終わりほとんどの生徒が下校した後のため、近くに人はいない。それを確認したうえでさらに小声で話す。
「告白された」
愛翔の言葉に幼馴染ふたりは全く動揺さえ見せず
「やっぱり」
「そうじゃないかと思った」
声をそろえた。当然のような反応に愛翔はそれこそ疑問をぶつける
「ふたりは気づいていた?」
「まあ、高野さんが愛翔のこと好きだろうなってくらいはね」
「それで、俺ひとりで行くようにしたということか」
思わず空を見上げる愛翔。
「で、返事はしたの?」
「したよ」
「へー、どう返事したの?」
桜の追及が終わらない。
「断った。付き合うとか女の子の事を好きになるとか、よくわからないから今は誰とも付き合うつもりないって」
それを聞いた幼馴染ふたりは目を見合わせ、一瞬ののち吹き出した。
「まったく、愛翔らしいんだから」
茜色の空の下、仲睦まじく寄り添い帰宅する3人の影が揺れていた。




