第100話 発表
「乃村」
愛翔の右足が鋭く蹴り上げたボールはゴール前に詰めていた乃村芳春の前に落ちるとそこまでの勢いが嘘のようにふわりと弾んだ。愛翔のスピンコントロールの冴えが光る。
愛翔からのボールを乃村の右足が蹴り抜き、ボールはゴール右隅へ。
キーパーが横っ飛びに飛びつき手が届く直前にボールは鋭く弧を描く。キーパーの手の下を抜けたボールがゴールネットを揺らした。
”ピピー”審判のホイッスルが響き歓声が上がる。
ステラスターFCU18のチームメンバーが喜びに走り乃村とハイタッチを交わす。
「ナイスシュート」
愛翔のねぎらいの言葉に乃村もサムズアップで応え
「スーパーアシストだ住吉」
攻守変わってディフェンスに走るステラスター。
愛翔も細かく動き相手のパスコースを潰す。中央で時枝が相手フォワードにプレスをかけているのを確認すると、わずかにポジションを後ろにずらす愛翔。時枝の圧力に耐えかねた相手フォワードは苦し紛れに愛翔が開けたラインにボールを出した。愛翔はそのスピードを生かしパスカット、そのままトップスピードで相手陣内を駆け上がる。いつものエリア右サイドを蹂躙する愛翔。ほぼフリーで中盤まで上がったところでやっと相手ディフェンス2人が愛翔にプレスをかけようと近づいてくる。しかし愛翔は無理にそこを抜こうとはしない。適度の引き付けたところで逆サイドに大きくパスをだした、ように見せかけたボールは軽く弧を描き時枝の前に。
そのままドリブルで上がる時枝が、前方を走る愛翔にパスを出そうとした瞬間、相手ディフェンダーが一斉に上がった。オフサイドトラップ……。
わずかに上がるタイミングを遅らせ単独で上がる愛翔にパスが通る。旗は上がらないホイッスルもならない、完全なフリーで愛翔が攻めあがり、ペナルティーエリア内ゴールキーパーと1対1、ゴールキーパーが飛び出し、愛翔が柔らかいタッチでボールを蹴った。ゴールキーパーの頭上をふわりと超えたボールはゴール内をポンポンと転がった。
”ピー”審判のホイッスルが響く。試合終了。2対1ステラスターFCU18チームの逃げ切り勝利だった。
「おつかれ。今日も主役は住吉だったな」
「目立ったかもしれないけど、チームメンバーの動きがあったからこそだからな。サッカーは1人じゃ出来ないさ。良いチームだよステラスター」
時枝の揶揄いを含む労いに愛翔は裏の無い笑顔で応えた。
試合後のブリーフィング、U18監督の織部から発表があった。
「12月にU18選抜での対アメリカ交流戦が決まった。選抜選手の発表は10月末だ」




