058 次の冒険は
◆ルース ゲイルの家
錬金術に行き詰まりゲイルのもとを訪れていたアルマは目的としていた下級錬成陣を作成した後そのままゲイルから錬金術の講義を受けていた。
薬草臭さが漂う薄暗い室内をゲイルの声だけが響いていた。
「さて、『下級錬金術』スキルについては今説明した通りよ。あなたは確か『下級錬金術』スキルのレベルが9だったわね。もうすぐにでも『中級錬金術』至るようだから、ついでに『中級錬金術』についても講義をしてあげる。」
ゲイルのその言葉にアルマは期待感が高まるのを感じる。
自分のはるか先を行く先達から直々に講義を受けられる機会を得られたことに感謝をしつつゲイルの言葉を待つ。
「『中級錬金術』に関しては説明は簡単よ。これはね魔法生物を作り出すことができるようになるの。」
「魔法生物?」
「そう。例えば有名なところではホムンクルスなんかがそれにあたるわね。あれは人を模した魔法生物に当たるわ。」
ホムンクルス。
その名前を聞いてアルマは興奮を隠せずにはいられなかった。
錬金術を代表するその人工生命の作成までアルマはもうすぐそこまで来ているのだ。
アルマはゲイルの言葉を1言も逃さないようにさらに集中して話に聞き入った。
「当然、それを成すためには膨大な素材が必要になるし、素材を集めきったとしても作るには熟練の技が必要になるわ。」
ゲイルはそう言うと「そうね………」と言葉を区切って部屋の暗がりに向けて手招きをするようなしぐさをした。
するとその暗がりから1匹の灰色の猫がやってきた。
猫はゲイルのもとまでやってくるとぴょいとその膝の上に乗っかり丸まって寝てしまった。
「この子は私が作り出した魔法生物よ。」
その言葉にアルマは驚きを隠せなかった。
よく観察しようと目を皿のようにしてその猫を見る。
しかし、アルマの目にはその猫はただの猫にしか映らなかった。
「ただ見るだけじゃ普通の猫と変わりないわよ。まあ、『魔力感知』スキルがあれば別なのでしょうけど。」
ゲイルがそう言うとアルマは残念そうな表情をして猫を観察するのをやめた。
そして再びゲイルに向き直ると話の続きを待った。
「魔法生物を作る場合必要となる要素は大きく分けて2つ。肉体と魂よ。肉体の説明はいいわね?その生物の体を指しているわ。この子みたいに実際の肉の体を持つこともあればゴーレムのような無機物の体やゴーストのような霊体を持つこともできる。」
ゲイルはそう説明しながら「まあ、そちらはオートマタや死霊術の分野と被る分でもあるんだけど………」と言いながら言葉を区切った。
「話を続けるわ。魂は肉体を動かす機能を持っているわ。これはパッと見せることができないわね。例を挙げるとゴーレムのコアのようなものと思ってもらって構わないわ。あれも無機物の体を動かしているからね。でも、ゴーレムのコアと違うのはそれが生命であることが重要よ。生命でない場合、それは魂とは呼ばない。当然ゴーレムのコアは生命ではないためゴーレムを魔法生物とは言わないわ。」
「生命であるなしの判断はどこでするんですか?」
「難しいことを聞くわね。色々と条件があるのだけれど特に重要なのが知恵を持っているかどうかね。ゴーレムのようにプログラムされた通りに動く知能ではなくゴーストのように生者を憎む本能でもない。しっかりと考えて、動くことができる知恵を持つことが生命の条件とされているわ。」
ゲイルはそう口にすると一度話を区切り少し考え込むようにして再び口を開いた。
「ついでだからこの世界における生物の定義も教えておくわ。生物とは肉体と生命を持つ者のことを指すわ。魔法生物はこの名前の通り人工的に作り出された肉体と生命から生み出された生物に分類されるわね。オートマタに代表されるゴーレムや死霊術のゾンビなんかは生命を持たないから生物とは言わないわ。そして、この世界には肉体を持たない生命だけの存在もいる。何かわかるかしら?」
ゲイルにそう聞かれてアルマは頭を悩ます。
当然この世界の常識を知らないアルマにはその答えがわからない。
少し考えて「わかりません。」と口にするとゲイルは再び話を続けた。
「異邦人にはわかりにくいよね。精霊よ。精霊は肉体を持たず生命だけの存在と言われているわ。他にも神や悪魔、最上位の龍なんかも同じく生命だけの存在と考えられているわね。」
ゲイルの話をそこまで聞いてアルマには1つの疑問が浮かんだ。
「生命とは魂のこと。人間の場合魂には形はありませんよね?精霊や神といった存在は何故、生命だけで形を保っていられるのですか?それとも、人が気が付かないだけで人間の魂にも形があるのでしょうか?」
「いいところに気が付くね。多くの生物の場合魂に形が無いのは間違いないわ。普通は肉体を失った時点でその魂も霧散してしまうわね。では、何故精霊や神がその形を失わずにいられるかと言うと正直確かなことはわかっていないわ。」
ゲイルは「でもね………」と一度言葉を区切り、重要なことを話す様に真剣な表情でアルマの顔を見つめた。
「推測はできる。精霊や神の持つ生命は強大であるとされているわ。それは既存の生物どれと比べてもね。その、強大な生命があるからこそ生命そのものが質量を持っているのではないかと私は考えているわ。つまるところ、生命事態が魂でありそして体であるということね。」
ゲイルはそう口にしながらも「まあ、ここまで言っても推論だけどね。」と肩をすくめるのであった。
「さて、長々と話してしまったけど。以上が『中級錬金術』でできる魔法生物作成にかかわる講義よ。残りは魔導書を読んで自分で実験してみなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
アルマが素直にお礼を言うとゲイルは照れ臭そうに「どういたしまして。」と口にして目を反らした。
そして再びアルマの方に向き直り、何もなかったかのように口を開いた。
「アルマはこの町ルースに居続けるの?」
「いえ、しばらくしたらフリートライト帝国に行こうと思っています。」
「そう。それはちょうどいいかもね。フリートライト帝国では魔法金属………ミスリルが取れるわ。あれは錬金術の材料として重宝するからね。もちろん、魔法生物の材料としても使えるはずよ。」
ゲイルの言葉にアルマはまたも顔を輝かせるのであった。
ミスリル。
まさにファンタジー金属の代表とも呼ぶべきそれが手の届くところまで来たのだ。
その感動を感じ、胸が高まるのを抑えられなかった。
「私はまだしばらくはこの町にいると思うから、何かあったらまた来なさい。歓迎はしないけど、今日みたいな講義くらいならしてあげてもいいわよ。」
「はい。ありがとうございます。」
アルマはゲイルにお礼を言うとその場を後にした。
頭の中にはすでにフリートライト帝国に行くことで埋め尽くされていた。
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「これが関所………ここがフリートライト帝国との国境か。」
アルマの目の前には大きな建物が立ち尽くしていた。
それは石造りの30m近い建物であり、その存在感は遠くから見てもはっきりとわかるものであった。
ここはグランボルカ王国とフリートライト帝国のちょうど国境。
そしてこの建物こそがフリートライト帝国に入るための関所なのだ。
その関所は多くの人が行きかっていた。
だいたいは商人である。
王国の品、帝国の品を持ってそれぞれの国を行き来する行商人が商品が摘まれた荷馬車を走らせ関所を通っていた。
次いで多いのは冒険者だろうか。
全身鎧、腰には剣を佩いた剣士やローブを羽織り杖を持った魔術師など戦いを生業とする人たちが商人の護衛をしたり、アルマのように旅を目的としたりしてこの関所を通っていた。
アルマも彼らと同じようにこれからこの関所を通るのだ。
そのことに感動を覚えつつもルースからの旅を含むこの数日のことを思い出していた。
ゲイルの家で錬金術の講義を受けてからアルマはフリートライト帝国を目指して準備に扮装した。
モンスターを倒しては換金して、そのお金で必要な道具を買いそろえ、時には自分で作り出し遂に国を超えるための準備が整ったのだ。
もちろん準備だけしかしていなかった訳ではない。
準備と並行して戦闘によるレベル上げや調薬、錬金によるレベル上げも行っていた。
その中には第1回公式イベントで手に入れたスキルも含まれた。
そうあの後アルマはイベントで手に入れたポイントを全て使って様々な賞品を手に入れた。
『魔力操作』スキル、『魔力感知』スキルはもちろん『無詠唱』スキルまで取得していた。
それでも膨大に余ったポイントは10,000ポイントのランダムボックスと5,000ポイントのランダムボックスに交換しそれでも余った分はすべてスキルポイントにしてしまったのだ。
そうして多くの物を手に入れたアルマであったが、まだすべてを把握しきれてはいない。
そのためにレベル上げに勤しんでいた。
しかし、それも区切りをつけてついに旅に出ることを決意した。
旅立つ決心がついてからは早かった。
すぐさまルースを旅立つとこの関所まで真っ直ぐ寄り道せずに来たのだ。
それでも感慨深く思ってしまう。
それはきっとこれまでの旅のことを考えてであろう。
アルマの旅は別にルースから始まったわけではない。
最初ははじまりの町ファートを出て王都に行くところから始まっていたのだ。
それを思うととても長い間旅をしてきたように感じる。
現実時間で1カ月と少し。
こちらの世界の時間では1年以上もの時間をかけてここまで来たのだ。
その旅を思い出しながらアルマは今新たな旅の始まりを決意するのだ。
期待と不安を胸にしてアルマは関所を越えた。
そうここからフリートライト帝国でのアルマの旅が始まるのだ。
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〇アルマのステータス
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プレイヤー:アルマ
種族 :ルサールカ
レベル :18
(レプラコーン:10)
(ルサールカ : 8)
スキル:
[中級短剣術:レベル8]
[上級水魔法:レベル1]
[看破 :レベル6]
[索敵 :レベル13]
[鑑定 :レベル20]
[毒使い :レベル9]
[無詠唱 :レベル3]
[魔力感知 :レベル3]
[魔力操作 :レベル3]
控え:
[投擲 :レベル9]
[中級錬金術:レベル1]
[調薬 :レベル24]
[生産成功率向上:レベル21]
残スキルポイント:183P
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本作「VRMMOの世界で魔法戦士に・・・なりたかった」につきましてはグランボルカ王国編をもって一先ずの完結となります
短い間ではありましたがご愛読いただきありがとうございました
今後とも作者の別作品などを楽しんでいただければ幸いです<(_ _)>




