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052 イベントの始まり


◆ガーソン


MSO第1回公式イベント当日。

その日は全プレイヤーが今か今かと待ちかねていた。


アルマ自身緊張した面持ちでガーソンの北東門前広場のベンチに腰を下ろしていた。

イベントが始まるまでリアル時間で残り2分。

MSOの世界では24分を切っていた。


アルマはしきりにインベントリを開いてはアイテムに不足が無いか確認しを繰り返していた。

落ち着きがないのは他のプレイヤーも同じである。

広場はアルマと同じようにイベント開始を待つプレイヤーで溢れかえっていた。


今この時間は露店を開いても稼ぎにはならないからこそ生産職や商人のプレイヤーも戦闘職と同じように緊張した面持ちで時計を確認していた。

ぴりぴりとした肌を刺すような空気が当りを包む。


そんな緊張感が伝わったのか現地人の人たちも皆一様に真剣な表情で黙り込んでいた。

沢山の人がいるのに誰もが声を発しないというおかしな現象がこの広場で発生していた。

きっとそんな光景はここだけではないのだろう。


他の町の広場もきっとここと同じように緊張したプレイヤーが押しかけ、そして静寂を生み出しているに違いない。

そんなことを考えていると残り時間ももう1分を切った。


既に秒読みの段階まで来ている。

のこり30秒、10秒、5、4、3、2、1。

0となった瞬間に視界が暗転した。


次に目に映ったのは真っ白な空間だった。

巨大な空間には数えきれないほどのプレイヤーがいた。

すべてのプレイヤーがここにいるのではないかと感じる程に多くのプレイヤーがそこにはいた。


突然そんな場所に連れられて困惑しているプレイヤーをよそにその空間の上から1つの光の球が下りてきた。

ちょうどプレイヤーたちの頭上3mほどのところで静止すると、その球から声が聞こえてきた。


「やあ、異邦人の諸君、こんにちは。キャラクターメイク以来だね。あの時はナビと名乗っていたAIさ。今回はそうだなゲームマスターとでも名乗っておこうかな。うん、その名の通り今回のイベントの進行を担当させてもらう。どうぞよろしく。」


その、声には聞き覚えがあった。

彼?彼女?が名乗った通り初めてログインした際にキャラクターメイクの場で出会ったAIだった。


「さてさて、事前に告知されていると思うが改めて今回のイベントの趣旨とルールを説明しよう。うん、説明は大切さ。これだけの人がいるとどうしても認識が歪んでしまう。それを正すためにはきっちりと説明しないといけないね。特に今回のようにルールを設けた遊び事においてはその共通認識が互いに幸せになるか、不幸せになるかの境界線だと言っても過言ではない。」


あの時のように話好きなのは変わりないらしい。


「まず、今回のイベントの趣旨。MSOも正式サービスが開始されて早くも1カ月たった。今回はそれを記念してのイベントさ。つまるところパーティと言うわけだね。あくまで祝い事さ、競い合いではない。だからこそ、今回のルールでは十分に力が発揮できないと嘆いている人たちも是非楽しむことを優先してほしい。」


長々としゃべるゲームマスターに辟易としているのはどうやらアルマだけではないようだ。

周りを見回すと「またか。」と呆れ顔をしているプレイヤーが結構な数いた。


「さあ、次はルールについての説明だ。簡単に言ってしまえばバトルロイヤル。自分の持ち得る力を振り絞って他のプレイヤーを倒すのさ。他プレイヤー1人のHPを0にすると1Pを得ることができ、このポイント獲得数のランキング上位には賞品が授与される。また、バトルロイヤルは最長で24時間続き、生き残り時間の長さでもランキング上位には賞品が授与されるよ。皆頑張って長く生き、そして多くを倒すのだ。」


負う言うとゲームマスターは1度言葉を区切った。


「さて、バトルロイヤルの終了条件だが最後の1人になるか、もしくはゲーム開始から24時間が経過することでゲームは終わる。ただし、ゲームフィールドは時間がたつ毎に徐々に小さくなり最終的には半径10mまで小さくなる。そこまで小さくなると勝負がつかないなんてことはないだろうから基本的には2つ目の条件は気にしなくてもいいかもね。」


その条件を聞いてプレイヤーは皆一応に考え出した。

確かに10mと言う狭い範囲内は一息で剣が届く距離だそうなると激戦は必至。

当然すぐに決着はつくだろう。


「さて、ルールの説明は以上だ。本来ならここで質問を受け付けるのだが、この人数でそれをやってしまうと終わらなくなってしまうからね。なので、質問タイムは無しでこのままバトルフィールドにレッツゴーだ。」


ゲームマスターがそう言うとまたも視界が暗転した。

次に目についたのは石畳の街並み。

いや、廃墟が並ぶ街並みだった。


石でできた壁は残されているものの、窓や扉、天井に至るまで木でできていたであろう部分はすべて朽ちてしまっていた。

この廃れぐわいはここ数年の内になったものではないであろう。

それこそ何百年も昔に廃棄された都市のように思えた。


周りにプレイヤーの影は見当たらず。

視界の端には「開始まで残り30秒」と表示されていた。

どうやらまだゲームは始まっていないようだ。

足を動かそうにも地面に張り付いて動かなかった。


アルマはおとなしくその場でゲームの開始を待つことにした。

澄み渡るような青空を見上げながら、高ぶった気持ちを落ち着かせる。


残り時間が10秒、5、4、3、2、1。

0秒となったタイミングで急ぎ短剣を引き抜き、周りの様子を伺った。

するとすぐ左に先ほどまでいなかった魔術師風のプレイヤーの姿を見つけることができた。

どうやら開始まではお互いの姿が見えていなかったようだ。


アルマはすぐさまその魔術師めがけて駆け出した。

距離は30m程しかなかったためすぐに肉薄することができた。

勢いそのままに右手の短剣を振るう。


アルマの出現に驚き対応が遅れた魔術師は何もできずにただされるがままにその短剣の刃を体で受けた。

途端に動きが悪くなる。

猛毒大蛇の毒短剣の毒攻撃か麻痺攻撃によって状態異常を被ったようだ。

アルマはその隙を逃さず続けざまに攻撃を繰り返した。

何度目かの攻撃で魔術師は倒れ伏し、光のかけらとなって虚空に消えた。

視界端の累計獲得ポイントのカウントが0から1に変わった。


「よし。」


アルマは小さくガッツポーズをした。


(とりあえず、まずは1人。魔術師なら距離を詰めれば一方的に攻撃できる。)


アルマはそう考えながら次の獲物を探すのであった。


--


―カチ、カチン


アルマが次に見つけたのは2人の剣士であった。

その2人は狭い路地で互いに向き合い剣をぶつけあっていた。

拮抗しているのかアルマが見つけてから1分以上はああして戦い続けていた。


(狭い路地………剣士………ならば!)


アルマは路地の影から体を出すと口を動かした。


「【ウォータランス】【シュート】」


水の槍は狭い路地を真っ直ぐに進んでいく。

2人の剣士はアルマの姿を目視していたが、路地が狭すぎてその攻撃を回避しきることができなかった。

1人は水の槍に吹き飛ばされ大きく体勢を崩す。

もう1人に至っては今のでHPが0になったようだ光となって消えてしまった。


アルマは水の槍を放った際にそのあとに続くように駆けていた。

当然、体勢を崩した剣士に追撃を行う。

アルマの振るった短剣をその喉に受けた剣士は先に逝った剣士の後追うように光となって消えていった。


「よし。………っつ!」


今の戦闘音を聞いてきたのであろう。

狭い路地を行った先に魔術師風の男の影が見えた。


(狭い路地………魔術師………まずい!!)


アルマは先ほど自分がしたことを思い出す。

今自分のいるこの場所に魔法を撃ち込まれたら避けられないと考えたのだ。


「【ウィンドランス】【シュート】」

「【ウォータランス】【シュート】」


魔術師の男が放った風の槍に合わせてアルマは水の槍を放つ。

アルマの目論見通り、2つの魔法はきれいにぶつかり合い相殺した。

飛び散る水しぶきに視界が覆われる。

その隙にアルマは魔術師の男に肉薄するように地面を蹴った。


「【ウィンドランス】【シュート】」


水しぶきの向こう側から男の声がした。

それは先ほどと同じように風の槍を生み出す魔法だった。


アルマはとっさに路地の壁際によった。

狭い路地のため回避しきることはできないまでも直撃は免れた。

HPが多少減ったことを確認しつつ再度男に向かって駆け出す。


3度目の魔法詠唱は無かった。

それを行う前にアルマが接近することができたためだ。

アルマは右手に持った短剣を振るう。


魔術師の男も『棍術』スキルを持っているのか手に持った杖で対応してきた。

右に左に動きながら魔術師の男を追い詰めていくアルマ。

接近戦ではどうやらアルマの方に分があるようだった。


遂にいなしきれなくなり、その体に短剣の攻撃を受けてしまう。

途端に動きが悪くなる。

その隙をついて2回目、3回目の攻撃を当て続ける。

魔術師の男は最後まで諦めずに粘ったが遂にはHPは0となり消えていった。


「ふぅ。」


アルマの息遣いだけがその路地に響いた。


--


ある広い路地の一角。

そこにいるのは鉄製の全身鎧に身を包み巨大なハンマーを掲げた重戦士のドワーフだった。

アルマはその男の顔を真正面からとらえる。


向こうもこちらをとらえているだろうに動く気配はない。

鈍重なドワーフでは距離を詰めようにも逃げられてしまうと考えてカウンターを取るつもりのようだ。

だからこそアルマはそんなドワーフの男と距離を取って冷静に手立てを考えた。


(あれだけの重装甲だと短剣や水魔法は効果がうすよな。毒で弱らせるでもいいが、てっとり早く済ませるならば………)


アルマはインベントリから1つの薬瓶を取り出した。

炸裂薬だ。


「………【フロート】【ボール】【シュート】」


アルマはそれを水魔法でドワーフの男めがけて打ち出した。

防御に格別の自身があるのかドワーフの男はそれを避けようとはしなかった。


―ドン


アイアンヘルムに直撃した炸裂薬は大きな爆発音とともに強烈な衝撃をドワーフの男に与えた。

アルマはその効果を確認する前にすでに2発目の炸裂薬を水魔法で打ち出している。

その攻撃もドワーフの男自慢の鎧に当たった。


―ドン


再び大きな爆発音が路地に響く。

この攻撃にはたまらずといったふうにドワーフの男は突然アルマめがけて駆けてきた。

しかし、悲しいかな鈍重なドワーフの足ではその距離を詰めるのには時間がかかりすぎた。


その間も攻撃の手を緩めることは無く何度も何度も炸裂薬を打ち続けるアルマ。

遂にはドワーフの男のHPを0にしてしまったのだ。


緊張感などなくただ淡々と作業のように繰り返していたその行動に一応の達成感を感じながらもアルマはすぐさまそこを立ち去るのであった。


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