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048 異形のゴーレム


◆ガーソン


「あー………久しぶりに死に戻った………。」


廃棄坑道の中で巨大なゴーレムに負けたアルマはガーソンの町へと戻ってきていた。


(半日のデスペナルティか………)


陰鬱な気分でステータスの状態の項目に映されたその文字を見ていた。

現実時間で半日の間、全てのステータスが下がる。

しかし、今のこの沈んだ気持ちはそんなステータスが反映された結果というわけではないだろう。

それでもその「デスペナルティ」という文字を見てますます気が沈むように感じる。


アルマは重い足取りでガーソンの街中を歩いていた。

町の中は活気にあふれていた。

ここ最近はプレイヤーも増えてきていることがその一助となっているのであろう。

その証拠に広場に立ち並ぶ露店の中には現地人だけではなくプレイヤーの姿も見かけるようになってきた。


(ん?あれは………)


ふとそんな露店の中に見知った顔を見つけてそちらに足を向ける。

人混みを器用によけながらアルマは目的の露店の前に来た。


「よう、ガルド、ジョン。」


「ん?アルマか。」


「これはアルマ様。いつもお世話になっております。本日はどのようなご用件でしょうか?」


アルマの顔を見て2人は対照的な対応を取ってきた。

その様子が少しおかしく不意に笑いが漏れる。


「いや、用ってわけじゃないんだ。単に顔を見かけたから挨拶でもと思ってな。」


「そうでしたか。いえ、残念と言うことはありません。こうして挨拶いただけて嬉しい限りです。」


アルマのその言葉にジョンは慇懃に返す。

その対応に暑苦しさを感じながらもアルマはそれが顔に出ないように注意した。


「ジョンは露店を開いているんだよな?ガルドは何でここにいるんだ?」


「はい。私は確かに本日はこちらで露店を開かせていただいております。ガルド様は鉄の入荷について当店まで確認しに来てくださいました。」


「そう言うことだ。」


肩をすくめながらそう言うガルドの表情からは芳しくないことが見て取れた。

やはり、予想に反して鉄の供給は少ないようだ。


「結構な数のプレイヤーが廃棄坑道に行っているはずなんだがな、それでも需要を満たすほどではない。何よりあそこのモンスターは強いらしくてそこそこのレベルが無いと厳しいときた。」


「そうですね。私共としてもほとほと困り果てています。これほどの需要があるのに手が出せないのですから。」


ガルドとジョンはしっかりと今の状況を把握しているようだ。

そのうえで打つ手なしと困り果てている。


「おまえさんはこんなところで油売っていていいのか?俺が依頼した件はどうなった?」


ガルドが不意にアルマにそう聞いてきた。


「それなら一回廃棄坑道行ったよ。そこでゴーレムにやられて今はデスペナルティ中。」


隠しても仕方がないと正直にアルマは答えた。


「おまえさんでも無理か………。」


「俺はゴーレムとの相性悪いぞ。毒は効かない。武器も短剣だしな。それでも、普通のゴーレムなら水魔法でどうにかなるんだが、あの大きなのは無理だった。」


「ちょっと待て。大きなゴーレム?そんなのまでいるのか!?」


アルマの言葉にガルドは驚いたような声を上げる。

どうやらあのゴーレムについては知らなかったようだ。


「ああ。普通のゴーレムの3倍近い大きさを誇るゴーレムだ。6本の腕に4本の足を持った………な。」


アルマのその物言いにとてつもない強敵だと思ったのだろう。

ガルドの表情はより険しいものになった。


「それでも私はアルマ様なら何とかしてくれると信じています。」


重い空気を無視してジョンがそんなことを口にした。


「何だよそれ。こっちは相性最悪で気落ちしているのに。」


「いえいえ。それでもアルマ様はあきらめないのでしょう?」


ジョンのその言葉にアルマは無言で肯定するのであった。


--


デスペナルティが明けてアルマは再び廃棄坑道へと来ていた。

巨大なゴーレムに対抗するための秘策があるわけではない。

それでも負けたあの時すべての力を出し切ったかと言うとそうではなかった。


(俺の持ち得る力は短剣、水魔法、毒………だけじゃない!)


だからこそだろうか。

アルマの心は折れてはいなかった。

今度こそすべての力を使ってあのゴーレムに勝つんだという意気込みを持って廃棄坑道の中へと進んでいった。


進む坑道の中は薄暗くその雰囲気がいっそう気分を不安にさせる。

しかし、そんな気持ちに負けるものかとアルマは地面をける足に力を入れた。

1歩1歩、しっかりと踏みしめながら前へと進む。


あれは以前と同じく崩落した坑道にいた。

その巨体では本来の坑道の中には入り込めないのであろう。

だからこそそこに誰かが迷い込むのを今か今かと待ち構えていた。


アルマはそんな巨大ゴーレムを崩落坑道の入り口から眺めていた。

通常のゴーレムの3倍近い巨体に6本の腕と4本の足を持つ異形の姿は傷一つなくその場に立ち尽くしていた。

周りに他のゴーレムがいる気配もない。


今がチャンスかと思いアルマはその場所に向けて1歩踏み出した。

アルマのことをすでに視界にとらえていたのか巨大ゴーレムはすぐさま動き出した。

自分めがけて駆けてくるその巨体に対してアルマは冷静にインベントリからアイテムを取り出した。


「………【フロート】【ボール】【シュート】」


それは薬瓶であった。

アルマはいつもやっているようにその薬瓶の蓋を開け、中身を水魔法で飛ばす。


以前までの記憶があるのかアルマの水魔法は敵でないと判断しているゴーレムはその攻撃を避けるようなことはしなかった。

ゴーレムの胴に直撃する。

その瞬間………。


―ドン


大きな音とともにその液体は衝撃を生み出した。

炸裂薬。

それは頑強なダールベルクにもダメージを与えた強力な爆弾であった。

巨大ゴーレムもこれにはたまらず姿勢を崩した。


爆炎が晴れるのを確認してアルマはゴーレムの体を観察する。

アルマが炸裂薬をぶつけた場所は大きく崩れていた。


(よし!)


確かな手ごたえを感じアルマは小さくガッツポーズをとる。

姿勢を崩したゴーレムが再びアルマに突撃の姿勢を取る前にアルマは2つ目の炸裂薬をインベントリから取り出した。


「………【フロート】【ボール】【シュート】!」


もう1度水魔法を使て放った。

炸裂薬は水球となって真っ直ぐに巨大ゴーレムに飛んでいく。

姿勢が崩れているゴーレムは避けることができずに再度胴体でそれを受ける。


―ドン


またもや轟音とともに強い衝撃がゴーレムを襲う。

ゴーレムはたまらず踏鞴を踏んで後ずさる。

その時、ゴーレムの足場が崩れた。

足を踏み外したゴーレムは仰向けに倒れてしまった。


(チャンス!)


アルマはすぐさま3個目、4個目の炸裂薬を取り出すと続けざまにゴーレム目掛けて打ち放つ。

何度も何度も炸裂薬の爆発がゴーレムを襲った。


(これなら勝てる!)


その手応えに勝利を確信したアルマの表情は明るいものであった。

それも当然であろう。

以前、相対した時は手も足も出なかったが今では無傷で一方的に攻撃できているのだ。

この状況を見れば十人中十人がアルマの勝利を確信することだろう。


その確信に間違いが無いことを証明するかのようにアルマの猛攻は止まりはしなかった。

巨大ゴーレムはなすすべなくサンドバックとなってしまっていた。

ようやく立ち上がった巨大ゴーレムの姿は満身創痍であった。


胴は大きくえぐれており、6本の腕の内3本は失われていた。

足はすべてがそろっているもののひびが入っており、ゴーレムの全体重を支えるのには心もとないように見えた。

それでも痛みを知らないゴーレムはアルマに向けて敵意を向ける。


アルマはそんなゴーレムの行動を見ながらも努めて冷静に炸裂薬を打ち続ける砲台となっていた。

もう、あと少しで勝利できる。

アルマがそう考えたその時である。


―ガラガラ、ガラガラ


坑道の天井が崩れたのである。

降り注ぐ岩々を避けながら巨大ゴーレムの動きに注意するアルマ。

そんなアルマの視界の端に映ってほしくない影が映った。


―ガタ


それは2体目の巨大ゴーレムであった。

今の崩落に巻き込まれて上から降ってきたのであろう。

体に傷一つないその姿はアルマを戦慄させるには充分であった。


(くそ!2体目かよ!!)


心の中で毒づきながらもアルマは冷静にインベントリから炸裂薬を取り出してボロボロのゴーレム目掛けて放った。

ボロボロとなってしまってすでに避けるだけの余力もなかったのであろうその炸裂薬は巨大ゴーレムの足1本を奪うことに成功した。


しかし、アルマがボロボロのゴーレムを相手取っている隙をついて新手の方が動き出した。

それは巨大な岩を持ち上げての投擲攻撃であった。

アルマはその攻撃をギリギリで避けるも、投げつけられた巨大な岩は周囲の岩や小石を飛ばし予想以上の破壊を生んだ。


とっさのことでギリギリでしか避けられなかったアルマは当然その後に飛んできた小石を避けることはできなかった。

体中に小さな傷がつく感覚がする。

痛みにこらえながらも追撃を警戒して大きな岩の陰に隠れる。


HPローポーションで回復しながら2体のゴーレムの様子を伺うと、2体ともに大岩を投擲しようと持ち上げているではないか。

アルマはその様子を見て今隠れているここも安全ではないと感じ、すぐさま走り出す。

直後、アルマが隠れていた大岩はゴーレムの投げた大岩で破壊された。

飛び散る岩や小石から逃れながらも、炸裂薬で反撃を続ける。


しかし、その攻撃は目に見えて頻度が減っていた。

ゴーレムが2体に増えたことで反撃できる隙が減り、その結果アルマは少しずつ追い詰められていたのだ。


それでも負けてたまるかと諦めずに反撃し続けるアルマに奇跡が起こった。


その攻撃は先ほどまでと同様に炸裂薬を水魔法で飛ばしたものであった。

それがボロボロのゴーレムの残った腕に当たったのだ。


その攻撃によって腕を吹き飛ばされた巨大ゴーレムはちょうど持ち上げていた大岩を支えきれずに自分の頭上から落としてしまった。

大岩に潰されたゴーレムは痙攣するようにピクリピクリと動いたかと思うと光となって消えた。


倒したのだ。

1体でではあるが確かに巨大ゴーレムを倒すことができた。


(よし!!)


これにより余裕ができたからか一転して攻勢に出ることができたアルマはもう1体の巨大ゴーレム目掛けて炸裂薬を打ち続けた。

先ほどまでは2体で休みなく攻撃を行うことができていた巨大ゴーレムであったが1体が倒れ残り1体となっては、分が悪く次第に体に傷が目立つようになっていく。

そしてついにはそのHPすべてを無くしてしまい、光となって散って消えていった。


「はぁ、はぁ。」


アルマはその光景を肩で息をしながら眺めていた。

そして、光がすべて消える頃にはその表情は笑顔に変わっていた。


「よっしゃ!!」


大きくガッツポーズをする。

勝った。

確かに巨大ゴーレムを倒しきることができたのだ。


アルマはインベントリを確認する。



ギガントロックゴーレムのコア【素材】

 ギガントロックゴーレムを動かしている心臓部。



そこにはあの巨大ゴーレム………ギガントロックゴーレムを倒したと証明するアイテムが確かに2つ入っていた。

それを見てますます顔を綻ばせるアルマ。

激戦を制した達成感とともにしばしその充実感を堪能するのであった。


本日18時に新作小説を投稿予定です

タイトルは「異世界で魔王を押し付けられた~俺以外の転移者がみんな敵ってマジ?~」

異世界転移もののハイファンタジー小説となります

もしよろしければこちらも見ていただけると幸いです<(_ _)>

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