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043 集う18人


◆王都グレアム 生産者組合


日は変わってガーソン行き当日。

集合時間の少し前にアルマは王都の生産者組合を訪れていた。


アルマがここに来たのは他でもない。

てるるに預けていた装備の強化が完了したと連絡を受け、それを受け取りに来たのだ。


生産者組合のロビーでアルマが待っていると入口の扉が開いた。

そこからてるるが入ってきたのだ。

2人は挨拶もそこそこにいつもの如く生産室に入っていった。


(考えてみればてるると2人きりになるのは初めてか………)


だからと言って急に男女の関係を意識するほどお互いに子供ではない。

2人は淡々と、それでいて談笑を交えながら装備の受け渡しをしていった。

2人きりだからと言って空気が悪くなることは無かった。


「えっと、まずこれが預かっていた装備を強化したものね。」


そうてるるが言うとアルマのインベントリに以前まで使っていた装備の強化版が送られてきた。

アルマは期待しながらその性能を確認していく。



岩狂暴竜のジャケット+【防具】

 種別  :上半身装備

 品質  :ユニーク

 防御力 :183

 付与効果:頑丈、HP上昇、決死の覚悟ユニーク

 耐久値 :4100/4100

 製作者 :てるる

 恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザージャケット。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。暴核を使用したことでダールベルクの現身ともいうべき装備となっている。

 ベースの岩狂暴竜のジャケットが大蛇種の皮と鱗で強化されている。通常の大蛇種より頑強な皮を持つレーンクヴィストの素材を使用することでさらに頑丈な装備となっている。

 ※ユニーク装備は譲渡・売買ができません。(所有者:アルマ)



恐竜皮のパンツ+【防具】

 種別  :下半身装備

 品質  :B-

 防御力 :136

 付与効果:頑丈、MP上昇

 耐久値 :2800/2800

 製作者 :てるる

 恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーパンツ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。

 ベースの恐竜皮のパンツが大蛇種の皮と鱗で強化されている。通常の大蛇種より頑強な皮を持つレーンクヴィストの素材を使用することでさらに頑丈な装備となっている。



恐竜皮のグローブ+【防具】

 種別  :手装備

 品質  :B-

 防御力 :96

 付与効果:頑丈、器用上昇

 耐久値 :2800/2800

 製作者 :てるる

 恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーグローブ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。

 ベースの恐竜皮のグローブが大蛇種の皮と鱗で強化されている。通常の大蛇種より頑強な皮を持つレーンクヴィストの素材を使用することでさらに頑丈な装備となっている。



恐竜皮のブーツ+【防具】

 種別  :足装備

 品質  :B-

 防御力 :96

 付与効果:頑丈、器用上昇

 耐久値 :2800/2800

 製作者 :てるる

 恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーブーツ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。

 ベースの恐竜皮のブーツが大蛇種の皮と鱗で強化されている。通常の大蛇種より頑強な皮を持つレーンクヴィストの素材を使用することでさらに頑丈な装備となっている。



元々の装備が持っていた付与効果はそのままに防御力、耐久力が全体的に挙げられている。

レーンクヴィスト素材特有の付与効果が無いのはおそらくベースとなっているのはあくまでダールベルク素材の装備であることが理由だろう。


「見ているだけじゃなくて着てみてよ。」


アルマがその装備を満足そうに眺めているとてるるがそう言った。

確かにその通りだ。

装備なのだから眺めているだけではだめだと思い、アルマはウィンドウからそれぞれを装備していく。

着心地も依然と大きな変わりなく素晴らしいものであった。


「うん。いい感じだよ。ありがとう。」


アルマは素直にその気持ちをてるるに伝えた。

てるるは顔を赤くしながら照れ臭そうに視線を外した。


でも、そこは大人な女性。

すぐに気持ちを落ち着けると改めてアルマに向き直って話始めた。


「じゃあ、次は追加で作った外套………ローブだね。」


そう言うと再びてるるはウィンドウを操作してアルマに装備を受け渡した。

アルマも自分のウィンドウ画面からその装備を確認する。



大蛇皮のローブ【防具】

 種別  :外套装備

 品質  :C+

 防御力 :82

 付与効果:毒耐性、MP上昇

 耐久値 :1300/1300

 製作者 :てるる

 大蜘蛛種の強靭な意図から作られた布をベースに大蛇種の皮で強化されたローブ。通常の大蛇種より頑強な皮を持つレーンクヴィストの素材を使用することで頑丈な装備となっている。



その装備もアルマを満足させるには十分な性能を誇っていた。

てるるの表情からすぐに着て欲しいという意志を感じたアルマは早速ウィンドウを操作してその装備を身に着けた。


それは、一見して暗い色をしたローブで会った。

アルマの髪色に合わせたのであろう。

何処か青い色が入った黒いローブは夜空を思い立たせた。


アルマはそのローブに身を包んで軽く動きを確認した。

腕を振り上げたり、体を捻ったり、腰の短剣を抜き放ったり。


「うん。動きを阻害することもないしいい感じだ。これもとても素晴らしいよ。ありがとう。」


特に動きに問題が無いことを確認するとアルマは素直にお礼を口にした。

その感謝を受け取っててるるはやはりどこか照れ臭そうに、それでいて誇らしげに胸を張った。


--


リアルの時間で土曜日の18時半。

それはゲーム内の世界では朝の6時を示していた。

ちょうど朝日が東の地平線から登り始めた頃、王都の北門前広間に異邦人が集まっていた


アルマの姿もその集団の中にあった。

周りを見回して知り合いを探す。

多いといってもレイド………24人以下しかいないため探している人物はすぐに見つかった。


ちょうど集団の真ん中で回りにいる人たちに指示を飛ばしている人物にアルマは声をかけた。


「よう。ガルド来たよ。」


ガルドもこっちを確認して近寄ってきた。


「悪い。おくれたか?」


「いや、他のやつらが待ちきれなくて早めに集まっていただけだ。」


「それなら良かった。」


ガルドもこのガーソンへの移動に力を入れているのだろう。

彼の顔つきはいつになく真剣なものであった。


それもそうだろう。

ガーソンは鉱山都市。

鍛冶師であるガルド自身がここにいる誰よりもその町に行くことを望んでいるのだ。


そんなガルドの横顔を見ながらアルマは自身もこの旅でレイドに貢献しようと意気込むのであった。


「そう言えば………」


不意にガルドの顔を見てアルマはあることを思い出し、そう口を開いた。


「ん?」


「以前、相談されたレーンクヴィストの毒腺と蛇眼を『錬金術』で加工するって話。あれ、一応やってみたよ。こんなのができた。」


アルマはそう言うとインベントリを操作して「大蛇の致死毒源」と「大蛇の麻痺毒源」を取り出しガルドに手渡した。


「それ以外にも毒自体の粉末もあるけど、武器に使えそうなのはそっちかなと思ったんだが………」


ガルドは無言でその2つの素材をじっくりと観察している。

満足したのか2つの素材をアルマに返しながらガルドが口を開いた。


「うむ。それなら確かに武器の素材として使えるだろう。次に武器を強化するときに使用したいんだがいいか?」


「ああ。よろしく頼む。」


2人がそんな会話をしている間にもどんどん人が集まってきた。

不意にガルドが口を開く。


「そう言えば、おまえさん今回のメンバー殆ど知らんだろ?」


「ん?ああ。ガルドとてるるくらいしか知らないな。他に誰がいるんだ?」


「うむ。紹介がてら顔つなぎに行くか。」


そう言うとガルドは手近なプレイヤーのもとに近づいた。

アルマもそれについていく。


「おう、ディートヘルムちょっといいか?」


「ん?ガルドかなんだ?」


「ちょっとレイドメンバーの顔つなぎにな。アルマ、こいつはディートヘルム。紅蓮の剣って言うパーティのリーダーで今回生産職を護衛する戦闘職の一人だ。」


ガルドはその大柄の男性を指してそうアルマに紹介した。

アルマもつられて男性の方に向き直った。


「えっと、初めまして。アルマと言います。ルサールカの薬師です。」


「うむ。ガルドに紹介してもらった通り、ディートヘルムだ。パーティ紅蓮の剣でリーダーをしている。戦闘での役割はアタッカーで魔法剣士だ。」


2人はお互いに「よろしく。」と言いながら握手を交わした。

その後、ディートヘルムはアルマの顔をじっくりと見て何やら考えているようであった。


「えっと、なんか変なところでもあった?」


「いや。失礼、アルマというとあのアルマか?ユニークを2体倒した。」


「あ、はい。そのアルマです。」


そう答えるとディートヘルムは驚いたような顔をした。

その時の気持ちはどんなだったのだろう。

ユニークを倒したのにアルマが頼りなく見えたことに驚いたのか、それとも単純にユニークを2体も倒したアルマにこんなところで出会えたことに驚いたのか。

アルマには彼の胸中を知ることは無かった。

2人がそんな話をしているとガルドが横から口を出してきた。


「ディートヘルム、済まんがパーティメンバーの紹介は旅の途中にでもしてくれ。他にもこいつと顔つなぎしておいたほうがいいのがいるからな。」


「ああ。心得た。」


ガルドはそう言うと別のプレイヤーのもとに向かって歩いて行った。

アルマもそれについていく。

次にガルドが向かったのはアルマが以前にもあったことのある人物だった。


「おい、ジョン。シードルのやつを知らんか?さっきまでおまえさんと話していたろ?」


「はい?ああ、ガルド様。いつもお世話になっております。ええ、シードル様ですか。ゲオルクさんを迎えに行ってくると言っていましたよ。すぐに戻ると思います。」


「そうか、なら少し待つか。その間に………アルマ、以前にも紹介したが商人のジョン・ドゥだ。こいつは馬車と馬を所持していてな、道中それも護衛対象となる。覚えておけ。」


ガルドはそう言うとジョンのすぐ後ろにある馬車を指さした。

その馬車は所謂、幌馬車と呼ばれるものであった。

真っ白なほろに覆われた車内には多くの木箱が摘まれていた。


「馬車なんてあるんだ。でも、異邦人ならインベントリで十分じゃないの?」


「いえいえ、そんなことありません。確かに戦闘を生業とされる方は戦闘を行うためのアイテムと狩場で入手した素材だけ、生産を生業とされる方も自身が作る装備の素材と作り出した装備だけ持てればいいためインベントリで十分でしょう。しかし、商人はそうはいきません。商人はいわば戦闘職が持つアイテム、生産職が持つアイテムその両方を大量に持つ必要があります。そうするとどうしてもインベントリだけでは足りなくなってしまいます。そこで必要となるのがこの馬車のように大量の荷物を運べる手段というわけです。」


アルマの素朴な疑問にジョンは一気にまくしたてるように返答した。

そんな勢いに若干押されながらもアルマはその話を理解した。


「特にですね………」


「おっと、シードルのやつが戻ってきた。ジョン、その話はまたの機会にな。」


話し続けるジョンの言葉を遮りガルドがそう言うとジョンは「仕方がありません。」と言って素直に引き下がった。

それを見てガルドは再び他のプレイヤーのもとに歩いて行った。

アルマもそれについていく。


「おう。シードル………それとゲオルク。こいつにおまえたちの紹介をしておきたいんだが今時間大丈夫か?」


「ん?あー、ガルドだ。だいじょーぶだよー。」


緩い空気をまといながらそう気の抜けそうな口調で話しかけてきたのは犬であった。

いや、2足歩行の犬と言うべきか………

その横には何やら真っ黒なローブで全身を覆い、顔もそのフードで隠した人物がいた。

アルマがそんな2人?にあっけに取られているとガルドが口を開いた。


「こいつはアルマだ。アルマ、こっちはシードルでこっちがゲオルクだ。」


ガルドは2人にアルマのことを紹介すると、2足歩行の犬を先に示し次に黒ローブの人物を示してそう言った。

アルマは動揺を隠せないまでもどうにか自己紹介をしようと口を開いた。


「どうも。アルマです。種族はルサールカで薬師をやっています。」


「うんうん。僕はシードルなんだよー。種族はエルダーコボルトでー、彫金師をやってるんだー。いわゆるアクセサリー屋、みたいなー。」


先ほどまでの印象そのままにひどく緩い口調で2足歩行の犬………コボルトがそう自己紹介をしていた。

その光景はどこか少しシュールに映った。


シードルの紹介が終わると黒フードの人物がすー、とアルマの目の前に現れて、ばっ、とそのフードを取り払った。

そのフードの下は骸骨だった。


「ひ!!」


目の前に突然現れた骸骨に驚き、声を上げてのけぞってしまう。

アルマのその様子を見て何が楽しかったのかその骸骨はケタケタと笑いを上げていた。


「ハハハハ、失礼失礼。僕はねゲオルクさ。見ての通りスケルトン種で木工職人さ。」


骸骨………ゲオルクはそう言うと「よろしく。」と右手を差し出してきた。

アルマも恐る恐る右手を差し出し握手をする。

その感触は普段握手をする感触とは全く違うものであった。


「ゲオルク。おまえさんはいつもそうやって人を脅かして………飽きないのか?」


「飽きる?とんでもない!これはモンスター種をやっている僕にとって趣味のようなものさ。これほど楽しいことは無いね。」


そう言うとゲオルクは再びケタケタと笑い出した。

ガルドはそんなゲオルクの反応に呆れながらアルマの方に向き直り口を開いた。


「ゲオルクはともかく。シードルはこいつが言った通りアクセサリー職人だからな。おまえさん確かアクセサリーを検討していたろ?だから一応顔を繋いでおこうと思ってな。」


「んー。アルマはー、アクセサリーを装備していないのー?それはもったいないなー。」


「まあ、その辺の話もおいおいな。そろそろ人が集まってきたから出発するぞ。」


ガルドはそう言うと、集まってきた人の真ん中に歩いて行った。

集まった人数は18人。

ガルドが皆の中心に移動するとそこに注目が集まった。

ガルドもそれを知ってかその場で回りを一瞥すると口を開いた。


「おし、皆あつまってくれ!」


それを聞いてガルドを中心に円を囲うように17人のプレイヤーが集まる。

如何にも歴戦の戦士といった風貌の人もいれば、職人といった雰囲気を漂わせる人もいる。

中には所謂モンスター系と言われるプレイヤーもいた。

知っている顔も、知らない顔も皆一様にガルドの方を向いていた。


「今回はここに集まった18人でガーソンに向かう!予定では3日間!………で、いいんだなディートヘルム?」


ガルドに話を振られたディートヘルムが首を縦に振ってそれを肯定した。


「うむ!それじゃあ出発するぞ!!」


その号令を皮切りに18人は王都の北門から外に向けて歩みだした。


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