031 新装備に胸を躍らせる
◆王都の森
「あ、レベルアップした。」
システムメッセージが種族レベルが上昇したことを知らせる。
「おめでとさん。」
ヨルゴがアルマのその呟きに答えた。
アルマとヨルゴは喫茶店で歓談した後、2人で王都の森へ狩りへ来ていた。
アルマはガルド達からの連絡を待ち、ヨルゴも今やらなければいけないことが無い為に2人でレベル上げをしようと話になったのだ。
森の中で襲ってくるのは当初話に聞いていた通り小猿が多かった。
2人は危なげなくそれらを狩り続けていた。
何匹目になるかわからない小猿が光となって消えたとき種族レベルが8から9へ上がった。
「それにしても、おまえさん意外と普通に戦えるじゃないか?レプラコーンは筋力も知力もないと言っていた割には短剣の威力も水魔法の威力も低くはないと思うのだがな。」
辺りを警戒しながらヨルゴがそんな風に話しかけてきた。
「それは称号のおかげかな。称号効果で底上げしてようやく普通よりちょっと低いくらいの筋力と知力が手に入るからね。称号が無かったらやっぱり戦闘では心もとないよ。」
「そんなものかね………【ファイアボール】【シュート】」
そう言いながらヨルゴは目についた小猿めがけて火の玉を飛ばした。
「俺としてはヨルゴのその魔法のほうが驚きなんだけど。………何で、1回の呪文詠唱で3つの火の玉ができるわけ?それも別々の軌道で飛んでいくし。」
そうだ。
先ほどからヨルゴが見せる魔法は今までアルマが使っていた魔法とはどこか違った。
聞いている限りは1回の魔法詠唱しかしていないのに、生み出された炎は3つの分割されてそれぞれが火の玉を形成している。
そして3つの火の玉はそれぞれが異なる軌道を持ってモンスターへ向かっていった。
小猿も突然3方向から飛んでくる魔法を避けることができず、なすすべなく燃やされてしまっていた。
「これか?………これは魔法の変化段階で3つに分割するようにイメージしているからこうなるんだ。前にも説明した通り、魔法技能はイメージ次第でいろいろなことができる。これもその1つだな。」
そうアルマの疑問に返すとまたも火の玉で遠くに見える小猿を燃やした。
「それでも生成した炎の量は変わらないからあまり分割しすぎると威力が無くなってしまうし、何よりそのあとの操作がうまくいかなくなってしまう。………結構制約も多いぜ。」
「そうなの、か!!」
アルマはヨルゴの話に相槌を打ちながら木の上から飛びかかってきた小猿目掛けて空中でナイフを振るう。
ナイフは小猿の頸部に直撃し、光となって消えた。
その後もしばらくの間2人で狩りを続けていた。
普段からこの辺で狩りをしているのであろう。
ヨルゴは慣れた調子で小猿を討伐していった。
アルマも森の中は慣れたものと言わんばかりに順調に小猿の討伐数を上げていった。
乗りに乗っているそんな時だった。
アルマのもとへガルドから連絡が届いた。
メッセージを確認すると装備が完成したとのことだった。
アルマはガルドにすぐに向かうと連絡し、ヨルゴにその旨を伝えると森の中で別れ1人王都へと戻った。
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「おう、きたか。」
アルマがガルドのもとを訪れると開口一番、ガルドはそう言った。
場所は前回集まったとき同様に生産者組合の生産室で行われた。
既にてるるも来ており、その表情はいつもの笑顔を浮かべていた。
「早速だが出来上がった装備を確認してくれ。まずは俺の方から。」
ガルドはドワーフ特有の強面の顔を崩しながら机の上に1つの短剣を置いた。
その様子からは自信満々という気持ちが溢れていた。
よほどすごい装備ができたのだろうと期待しながらアルマはその短剣を手に取った。
ズシリと感じる重さは今まで使っていたナイフよりも頼もしさを醸し出していた。
「一応短剣カテゴライズだが今まで使っていたナイフより刃渡りは長い。素材に使った大牙を削れば短くもできたんだが、それはもったいない気がしてな。まあ、慣れてくれ。」
そう言うガルドの言葉に呆れながらも鞘から短剣を取り出した。
確かに今まで使っていたナイフより1周り程長く感じる。
少し黒ずんだ銅色のその刃は今まで使っていたカッパーナイフと同じ光を放っていた。
アルマは『鑑定』スキルを使ってその短剣を注視した。
恐竜牙の青銅短剣【武器】
種別 :短剣
品質 :B-
攻撃力 :228
付与効果:頑丈、HP上昇
耐久値 :2500/2500
製作者 :ガルド
恐竜種の大牙を芯に青銅で作り上げた短剣。通常の恐竜種より頑強な牙を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な短剣となっている。
圧巻の一言であった。
アルマが驚いているとその様子を見てガルドがにやにやとした表情をしながら話しかけてきた。
「すごいだろ。攻撃力228は下手なロングソードよりも高い。何より付与効果の頑丈と膨大な耐久力はダールベルクの素材があったからこそだ。」
「あ、ああ。」
アルマはただそう返すことで精いっぱいだった。
「これで驚いてもらっちゃ困るわ。次は私の方ね。」
畳みかけるように今度はてるるが机の上に出来上がった防具を取り出していった。
ジャケット、パンツ、グローブ、ブーツ。
そのどれもがダールベルクが激昂した時に見せた黒々とした色をしていた。
「動きやすさ重視という注文だったからダールベルクの大竜皮をベースに要所、要所を硬鱗で強化しているわ。だからこそ普通のレザー装備と同じ着心地を実現しているわ。」
てるるのその言葉を聞きながら恐る恐るその装備を手に取り『鑑定』していく。
岩狂暴竜のジャケット【防具】
種別 :上半身装備
品質 :ユニーク
防御力 :122
付与効果:頑丈、HP上昇、決死の覚悟
耐久値 :3900/3900
製作者 :てるる
恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザージャケット。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。暴核を使用したことでダールベルクの現身ともいうべき装備となっている。
※ユニーク装備は譲渡・売買ができません。(所有者:アルマ)
恐竜皮のパンツ【防具】
種別 :下半身装備
品質 :C+
防御力 :89
付与効果:頑丈、MP上昇
耐久値 :2100/2100
製作者 :てるる
恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーパンツ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。
恐竜皮のグローブ【防具】
種別 :手装備
品質 :B-
防御力 :64
付与効果:頑丈、器用上昇
耐久値 :2500/2500
製作者 :てるる
恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーグローブ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。
恐竜皮のブーツ【防具】
種別 :足装備
品質 :B-
防御力 :64
付与効果:頑丈、器用上昇
耐久値 :2500/2500
製作者 :てるる
恐竜種の皮をベースに同じく恐竜種の鱗で強化されたレザーブーツ。通常の恐竜種より頑強な皮を持つダールベルクの素材を使用することで重く頑丈な装備となっている。
武器に続いて防具もまた驚きの結果であった。
ユニーク素材を使ったジャケットを抜きにしても今までの防具の10倍以上の防御力を誇っていた。
またその見た目もアルマの想像を超えて素晴らしいものが出来上がっていた。
デザインの形状はアルマがお願いした通りであるが、所々に取り付けられた竜鱗が竜皮の黒とは違った黒を持ってアクセントとなっている。
怪しく光るその黒は確かにダールベルクの素材なのだと実感させた。
「すごいでしょ。暴核を使ったジャケットはユニーク効果が発現したわ。それ以外の装備についてもその防御力は青銅の全身鎧に匹敵するわ。付与効果についても今までは1つしか付けられなかったのが2つも付けられているからね。自信作よ。」
唖然としているアルマにわが子の自慢をするようにてるるはそう言った。
「そうだな。それは武器の方も同じだ。頑丈はさっきも言ったがおそらくダールベルクの素材だったからこそ付いた付与効果だ。それを抜きに今までと同じように付与をできたのはでかい。」
ガルドもそんな風に自信満々にてるるの言葉に補足する。
「予想以上の装備だよ。2人とも、ありがとう。」
アルマは素直にその感想を口にした。
2人はどこか照れ臭そうに、どこか誇らし気にアルマの賛辞を受け取った。
「さて、1つずつ説明していくぞ。と言ってもだいたいは『鑑定』で見てると思うから付与効果の説明だけだがな。まず、全部の装備についている頑丈について。」
ガルドはアルマに向き直ると真剣な表情でそう口を開いた。
「頑丈は武器、防具の耐久値の減少を低減する付与だ。例えば今までの防具が1回の攻撃で1減少していたとする。それが頑丈が付くことで2回、3回の攻撃で1減少するようになるんだ。」
アルマは「うんうん。」とその話を静かに聞いていた。
「次に決死の覚悟ね。こっちはユニークと表示されている通り暴核の使用で付いた付与効果よ。」
ガルドの説明を受け継ぐようにてるるがアルマの目の前に来て説明をしだした。
「この効果はすごいわよ。なんと、HP残量1割未満の時、全ステータス100%増加するのよ。条件は厳しいけど倍よ!!」
「な!!」
てるるのその説明を聞いて本日何度目かになる驚愕を受けた。
思わずガルドの方に向き直り「本当!?」という目線を送る。
アルマの目を見て何が言いたいのか分かったのかガルドは頷くことでそれを肯定した。
あまりにも強力な効果に言葉が出ないアルマを見てますますガルドとてるるは満面の笑みを浮かべた。
それはどこかいたずらが成功したことを喜ぶ子供のようであった。
「さて、じゃあ早速身に着けてもらえるかしら。」
ひとしきり装備の説明をして気が済んだのかてるるがそう口を開いた。
そう言うとガルドとてるるは机の上に置いた装備をアルマに受け渡した。
「あ、これあげる。サービスね。」
てるるがさらにウィンドウを操作しアルマに何かを渡してきた。
「これは?布の肌着(上)、布の肌着(下)?」
「うん。そのまま装備すると今のボロボロの肌着の上に装備することになるからね。それだと見栄えも悪いからそっちを使ってほしいな。」
「うん。ありがとう。お金はいいの?」
「いいよ。今回は貴重な素材を分けてくれたことに対するサービス。それに肌着は装備として防御力もないし付与効果もないからね。完全にファッションアイテムだよ。」
てるるのその言葉を受けてアルマは手元のウィンドウで装備を操作した。
今貰った肌着、そして作ってもらったダールベルク装備に身を包む。
ずしりと重いそれが確かにアルマの身を守ってくれるのだという信頼感に変わる。
アルマは着替えると、軽く腕を振り回したり、胴を捻ったりして装備感を確認していく。
「問題ないか?」
「ああ、大丈夫。」
アルマの返答を聞いて2人は笑みを浮かべた。
それは大きな仕事をやり遂げたことに対する喜びだったのだろう。




